急がない100マイル。
違う景色が見えてきた
2回目のホノルルセンチュリーライド

あの三人組が今年もホノルルセンチュリーライド(以下、HCR)に参戦!
日本のサイクリングメディア&ライドコミュニティ『LOVE CYCLIST(ラブサイクリスト)』からゲストライダーとして参加した編集長・Tatsさん、Annaさん、Saadさんによる人生2度目のHCR走行記をお届けします。
最前列のVIPスタートから白戸太朗さんの爆速にペースを飲まれすぎた昨年の反省?を生かし、今年はどう100マイルを楽しんだのでしょうか。ハワイの風と光を写真とともにお届けします。

目次
2回目の100マイル
爆風のスタートライン
我々が足を止めた場所
 ハナウマ・ベイ/Hanauma Bay
 カメハメハ・ハイウェイ/Kamehameha Highway
 街にいくつもあるハワイらしさ
20kmおきのエイドと運営の細やかさ
残り15kmで座れなくなる
ハワイを自転車で走るということ

チーム「LOVE CYCLIST」のAnna、Tats、Saad。今年も去年と同じ3人チームで参加。フォトグラファーのTats、音楽と走ることが大好きなAnna、飛ばしがちなバングラデシュ出身のSaad。9月のホノルルは25℃前後で快適なので、朝は少しだけ冷えるけれど服装は半袖ジャージとビブショーツだけでOK。

2回目の100マイル

速い集団に混ざって飛ばしすぎた去年

昨年はじめてホノルルセンチュリーライドを走ったときの反省は、前半に飛ばしすぎたことだった。異国の道を自転車で駆け抜ける体験があまりに楽しくて、気づけばトレインの中で踏んでいた。あれはあれで最高だったし、楽しくなって踏んでしまうのもライドの醍醐味だと思うが、帰国して写真を見返したときに「ここ、もっと長くいればよかったな」と思う場所がいくつも残ってしまった。

だから今年は「景色のいい場所を味わい尽くす」というテーマを決めて会場に向かった。コースは昨年とほぼ同じで、距離は160kmあるが、獲得標高は1084mなのでそれほど無理なコースはない。どこに何があるかはもう覚えているので、急いで消費するよりも良い場所で長く止まるほうがお得だ。2回目の参加には1回目には選べない走り方があるので、今年はそれを試すことにした。

爆風のスタートライン

ところが当日は朝から爆風だった。会場へ向かう道中ですでに横から煽られ続けていて、スタートラインに並ぶ前から「これは無事に完走できるのだろうか」という空気が3人の間に漂っていた。

実際に前半は厳しかった。向かい風の区間ではペダルを回しているのに進まず、かと思えば横から殴るように吹かれてよろける。落車はしなかったけれど、風が落ち着くまでに脚も集中力も削られた。

それでも、たくさんの参加者が険しい風をかき分けながら進んでいく光景は壮観だった。これだけ荒れた日でも誰も引き返そうとしないので、穏やかで優しいハワイしか知らなかった昨年の自分には見えていなかったものが見えた。

我々が足を止めた場所

ハナウマ・ベイ

風はすごいけれど、ハナウマ・ベイはやはり圧巻だった。火口と海がせめぎ合うような地形で、上から見下ろすと湾の内側で波が荒々しく打ち上げられている。早朝という時間帯も良くて、太陽の角度が低いおかげで海の青が深く沈み、背後の山の稜線が浮かび上がる。海と山のコントラストが一日のうちで最も強く出る時間だったのだと思う。

ここで我々はいちばん長く足を止めた。先を行く参加者たちが横を通り過ぎていくのを見ながら、しばらく湾を眺めていた。序盤で時間を使うことに迷いはなかった。
*取材クルーとして撮影を行っています。規定によりイベント中にライダーが停止・撮影できる箇所は限られていますのでご注意ください

カメハメハ・ハイウェイ

コース後半の目玉は、海のすぐ横を走り抜けるカメハメハ・ハイウェイだ。昨年もここで息を呑んだのだけれど、2回目でも海の色には驚かされた。知っているのに、見た瞬間にまた「これぞハワイ!」と思う。この色をどう持ち帰るか、カメラを構える手が止まらなくなる区間だ。

街にいくつもあるハワイらしさ

景色の良さは絶景ポイントだけにあるわけではない。コース上の横断歩道が「ALOHA」の文字にペイントされていたり、(ちょっとコースから外れるけれど)まっすぐな激坂が住宅街に平然と伸びていたりする。走っていなければ気づかないディテールがこの島にはいくつもある。

20kmおきのエイドと運営の細やかさ

HCRのエイドステーションは20kmおきに設置されている。この間隔は本当にありがたくて、補給計画をほとんど考えなくても走り切れる。

いいなと思ったのは、今年は終盤のエイドに昨年より塩気の多い補給食が用意されていたことだ。参加者が後半に何を欲しがるのかを運営がきちんと拾い上げていて反映されているようだ。こういう細かな配慮が、イベントの心地よさをつくっているのだと思う。

なお塩分やタンパク質は自分で持ち込めるし、コース上のコンビニでも調達できる。僕はサラミを持参していて、これが後半の塩分補給に最適だった。

残り15kmで座れなくなる

サドルの角度がおかしい。かなり参っている表情…

残り15kmの地点で、僕のサドルが急に傾いた。座面が後ろ下がりになったまま、どれだけ力を加えても元に戻らない。座ろうとすると変なところにサドルが刺さってくるので、結局そこから先はずっとダンシングで進むしかなくなった。

心折れる

145km走ったあと、15kmを一度も座らずに走る。これは正直に言って泣きそうだった。脚は終わりかけているのにシッティングして休むことができず、残り距離の表示がまったく減っていかないように感じた。AnnaとSaadにはペースを落としてもらい、風を受ける位置まで気を遣ってもらって、なんとかゴールまで運んでもらったという感覚が近い。2人には感謝しかない。

ふたりに待ってもらいながら進む

良い場所で止まるために走ってきた一日だったのに、最後の15kmだけは一度も座れなかった。ちなみに帰国後にシートポストをショップへ持ち込んだところ、こんな現象は初めて見ると言われてしまったので、現在は代理店に問い合わせてもらっているところだ。

ハワイを自転車で走るということ

走り終えて改めて思うのは、ホノルルは自転車に対してとても優しい街だということだ。交通量そのものは決して少なくないのに、車は自転車を無理に追い越そうとしないし、進路を変えたいときは待ってくれる。日本の二段階右折にあたる二段階左折も必要なく、交差点では車列に混ざって堂々と曲がっていける。
自転車レーンも整備されているので、走る場所に迷うことがほとんどない。

 「自転車はここ走ってね」のサイン

ホノルルセンチュリーライドは2回目だったが、今年は昨年とまったく違う旅になった。変えたのは走り方だけで、タイムを追わず良い場所で止まると決めただけで同じ160kmがまるで別のコースのように見えた。1回目は距離を走り切ることそのものが目的になるけれど、2回目は景色を選べるし、このコースには選ぶ価値のある景色がいくつもあった。
来年もまた、チームでこの島に戻ってこられたらいいなと思う(次は風が穏やかだともっと嬉しいな)。

Profile

Tats Shimizu
フォト&ビデオグラファー、自転車メディア『LOVE CYCLIST』編集長。スポーツバイク歴12年。ロードバイクを中心としたスポーツバイク業界を、マーケティング視点を絡めながら紐解くことを好む。国内外の自転車にかかわるブランドの撮影を多数手掛け、幅広い交友関係を持ち、メディアを通じてさまざまなスタイルの提案を行っている。メインバイクはStandert(ロード)とFactor(グラベル)。