広島の知られざる名所 東城町・帝釈峡を走る

関西地方を中心に活動している温玉ねぎとろです。とにかく走るのが好きで地元ライドから四国一周、日本縦走ブルベまで縦横無尽に走った結果、「道あるところに絶景あり」を噛み締める今日この頃。今回は数多ある日本のライドコースの中でもニッチかつ自然豊かで歴史探索も堪能できるコースをライドしてみました。建築好きな方もぜひ。

広島県東部庄原市東城町へ!

目次

1. 交易路のなごり
2. 江戸から継がれた饅頭の味
3. 国登録文化財の近代和風建築「三楽荘」
4. カルスト大地が織りなす名勝の数々へ



1. 交易路のなごり

広島県東部庄原市東城町はカルスト台地にダイナミックな自然が広がる帝釈峡があり、かつての山陽、山陰を結ぶ交易路として栄えた軌跡が残る町。鳥取県と岡山県に面する中国山地の中央、険しい山中にあります。

車やレンタカーの場合は中国道東城ICへ。岡山IC、広島ICからは約90分。福山西ICからは約80分。
鉄道では芸備線東城駅を下車。岡山駅から2時間30分・広島駅から3時間で到着します。

東城川を望む。左側が東岸・右側が西岸

かつて東城町は戦国時代である1500年代の前半に築城された五品嶽城(ごほんだけじょう)を中心に、城下町として、また山陽と山陰を結ぶ「たたら製鉄」の交易路として栄えました。

現在は東城川を中央に東岸は幅員の広い道とショッピングセンターが建ち、西岸はかつての城下町の面影を残す中心街です。今回は西岸の中心街をゆっくりとサイクリング。

日曜日の昼下がりでも人影はまばら。趣ある商店街を友人と二人占めです。
今回、この商店街を訪れたのには理由があります。


2. 江戸から継がれた饅頭の味

竹屋饅頭店。
ここが以前から気になっていました。
というのも、庄原側から来る際には大きな看板が見えるからです。

「竹屋饅頭の看板」

これを見ながら立ち寄らないのは無作法というもの。
せっかくなので今回はお邪魔することに。

竹屋饅頭は1861年創業というかなりの老舗。
酒饅頭は160年も前からこの街に訪れる人を出迎えたそうです。
江戸時代ですよ。日本でもかなり長寿のお店になるのではないでしょうか。

早速ほおばってみる

パクリ。
もっちりとした食感と甘すぎないあんこがちょうどいい。
ほんのりお酒の香りがしたので、最初はアルコールが入っているのかと驚きました。
どうやらアルコールは製造の過程で全て飛んでしまい、ほのかな香りだけが残るようです。
日本酒好きの方にはきっと堪らないでしょう。

広島市内でも不定期で販売をすることがあるようなので、ぜひ立ち寄られる際はチェックしてみてください。

饅頭を食べていると何やら歴史を感じる建物を発見。


3. 国登録文化財の近代和風建築「三楽荘」

中を覗くと、管理人の方が出迎えてくださり、せっかくなので見学をしてみることに。

お話を伺うと「三楽荘」(さんらくそう)という1891年、明治時代からの町屋とのことでした。
この街の商人が東城の名匠と言われた横山林太郎という棟梁に依頼し建立、代々受け継がれ現代に残っている貴重な建物だそう。

伝統的な入母屋造桟瓦葺の屋根
母屋から覗く庭園
離れの大広間から庭園を望む

解説をしてくださった方曰く、大広間では近隣の方の催しや披露宴なども昔は行われていたとのこと。この庭園の方角にある山の麓から水を引き、庭園内に池と川を再現していたそうです。
この景色を見ながらの生活。贅沢すぎませんか…
スケールが違います。

こんなところにコウモリが

よく見ると柱や装飾の細部までが非常に凝った作りとなっており、この町屋の主人はかなりの趣味人だったことが伺えます。

現代では入手困難な屋久杉や、重厚な檜や欅などを惜しげもなく使用。一見質素に見える建物も目を凝らしてみると豪快さがひしひし伝わってきます。

花形の窓

光の加減と窓の開閉で紋様の変化を楽しむ「花形の窓」はなんとも風流で、1日を通して眺めたくなる贅沢な仕掛けでした。

この館は現在では国登録有形文化財として庄原市が管理を行なっていますが、昔は本館の2階を宿として使用していたそうです。
ここに宿泊できる時代に生まれたかった…

神楽で使用される龍。かつての客室に静かに佇む

見学をするだけでもあっという間に時間が過ぎました。
日本にはまだまだ素晴らしい建物が残っています。
旅をする中で色々な建物を見学する機会がありますが、ここまで細部まで見学をさせていただける建築は珍しいと思います。
庄原市に来られた際はぜひお立ち寄りを。

三楽荘
https://www.shobara-info.com/spot/232


4. カルスト大地が織りなす名勝の数々へ

続いては日本百景の一つである「帝釈峡」(たいしゃくきょう)へ。
東城町から帝釈峡へは約13kmの道のりです。

この街を中心としたカルスト台地は四方に山が位置しているため、残念なことにどこへ抜けるにも急な坂道を上る必要があります。
ゆっくりと九十九折りの坂道を上りきり、カーブのきつい下り坂を下ると、すぐに帝釈峡の近くにある帝釈天永明寺と賽の河原が見えてきます。

賽の河原
道路に紅葉のマークも

道路に紅葉のマークが描かれているのを見つけると帝釈峡の入り口までもうすぐです。

「雄橋」

帝釈峡といえば「雄橋」が有名です。
渓水の侵食でできた天然橋。天然の橋など滅多に出会うことがなく貴重な上に、雄橋は国内のみならず、世界三代天然橋にも選ばれているそう。
あまりの大きさに遠くから見えた際は「おお!」と声が出ました。
帝釈峡の入り口から雄橋までは自転車で15分程度。
また、未舗装路となっているため、タイヤが細いロードバイクの場合は手前の駐車場に停めて、歩いた方がいいかもしれません。歩行者も多いため注意が必要です。

白雲洞の入り口。一見の価値あり

帝釈峡へ来た際には白雲洞に立ち寄ることも忘れずに。
中国山地には秋芳洞など多くの鍾乳洞がありますが、白雲洞は規模も大きく幻想的です。

白雲洞内部

狭い洞窟かと思いきや、洞内はかなり広い世界が広がっています。
洞内は年間を通して11℃程度と安定しており、外の春の気温と比べるとひんやり涼しく感じました。
夏に来ると気持ちいいでしょうね〜。

神龍湖の入り口で観光客を待ち構える龍 

帝釈峡を楽しんだ後は神龍湖を通って東城へ戻ります。
以前は帝釈峡の渓谷をたどり湖まで下れたようですが、現在は崩落のため通行止めに。
迂回路としてトレッキングコースもありますが、自転車では難しいので県道に迂回します。

神龍湖

神龍湖は大正時代に完成した湖で、遊覧船にも乗ることができます。

名前の由来は上から見た形が龍に似ているからだそうです。
てっきり中国山地ということと、名前からヤマタノオロチ伝説があるのかと勘繰ってしまいました笑

また、毎年4月末には湖水開きというイベントが開催されるので要チェックです。

神龍湖のお土産屋さん

最後に神龍湖のほとりでお土産を買ったら後は東城町までのダウンヒル!!
9km程度の道のりです。

いかがでしたか?
知られざる中国山地の奥部で歴史の名勝を有する東城町を自転車で体感してみるのはいかがでしょうか。

本日のルート



Text_Ontama Negitoro

参考文献

庄原観光ナビ(東城町、帝釈峡、白雲洞)
https://www.shobara-info.com/spot/4027
https://www.shobara-info.com/4255
https://www.shobara-info.com/spot/846

竹屋饅頭本舗
http://ta-ke-ya.com/

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Profile

温玉ねぎとろ
大阪府堺市出身。会社員・ライター・ブログ「自転車旅行研究会」管理人。幼少期から自転車に旅の荷物を載せたキャンプツーリングを行っており、国内のほとんどの都道府県を走破。また、大学在学中は自転車サークルに所属しており、ソロで10カ国以上を自転車で来訪。輪行経験豊富。2023年には厳冬期北海道を自転車で縦走するなど、エクストリームなキャンプツーリングを行う。近年はロングライドにも力を入れており、2023年にはブルベでSRを取得。2024年のGWには1900kmのブルベも完走している。今後はPBPやLELの完走を目指しつつ、海外キャンプツーリングも積極的に行っていく予定。