TVプロデューサー・河瀬大作のライドノート
沖縄編 #02
那覇の街をサイクリングするのは、想像以上に楽しいって話。
目次
1. 店長はYouTuber
2. レンタルE-BIKEで沖縄古今ライドへ
3. 定食屋で地元の味を噛み締める
4.祈りの聖地・波上宮を見た
5.那覇観光を凝縮、ぶらぶらポタリング
1. 店長はYouTuber
旅に出ようと思い立った。
どこかの街でのんびりと過ごしたいと最初はシンプルに考えていた。しかし次第に欲望がむくむくと大きくなる。美味しいものをいっぱい食べたいし、東京での生活とのギャップがあったほうがいいし、なにより過ごしやすい場所がいい。
で、選んだのが沖縄の那覇だった。
そしてもうひとつ、大きな欲望があった。
サイクリングだ。
首里城や牧志公設市場、県立博物館などが点在する那覇の街。ずっと歩いて回るのは億劫だし、そのたびにタクシーにのるのはお金がかかりすぎる。自転車があったらなぁと、以前訪れたときに何度も考えた。そこで今回はロードバイクを持って沖縄入りした。
初日、足ならしにと市内をポタリングしてみたのだが、那覇の街中を走るにはビンディングシューズでがっちり足元を固めていては、ストップアンドゴーが多くてあまりにも不便だ。
そんな折、たまたま通りがかったレンタサイクルのお店で空気入れをお借りしたのだが、めっちゃ親切で、かつメンテの行き届いたバイクがずらりと並んでいた。小径車のEバイクもある。しかも1日2800円から借りられる。
というわけで借りてみることにした。
国際通りにある、「イーチャリティ」というお店だ。
https://e-charity.jp/pages/naha#cont4
あとから調べてみたら、このお店、中古の電動自転車を手広く販売していて、スタッフさんはYouTuberもしている。どうりでノリがいいと思った笑。こういう偶然の出会いも旅の醍醐味。ちなみにお借りしたE-BIKEはしっかり整備されていて快適そのものだった。
2. レンタルE-BIKEで沖縄古今ライドへ
イーチャリティ那覇のある国際通りを出発して最初に向かったのは、沖縄県立博物館。ガイドブックをみて、建物の美しさに惹かれた。調べると沖縄のグスク(城)をイメージして設計がされたらしい。入り口からして、すでにワクワクさせる。
博物館では沖縄の歴史や文化が網羅されていて、その展示ひとつひとつが興味深い。美術館も併設していて、訪れたときには、美術家・照屋勇賢の個展「OKINAWA HEAVY POP」が開催されていて、これが思いがけず素晴らしかった。内地で暮らす自分にとっては、見過ごしてしまいがちな沖縄の現実を、文字通りヘビィに、そしてポップに見せてくれる。
ぼくは旅先でできるだけ美術館や博物館に行くようにしている。その場所ならではの展示は、新しい視点をもらえることが多く、旅をより深みのあるものにしてくれる。おすすめ。
3. 定食屋で地元の味を噛み締める
美術館と博物館を堪能したら、今度はお腹が空いてきた。そこで「定食」というキーワードでGoogleマップを検索。自分のいる場所の近くでお店を探すにはこれが一番だ。マルミヤ食堂というお店が4.3の評価をつけていて、なかなか良さげ。
自転車で10分ほど走り、お店に到着。数組でいっぱいになってしまうようなこじんまりとした食堂で、地元のタクシーの運転手さんとかが次々に入ってくる。中に入った瞬間、すでに名店だと確信する。
Googleで評判だった煮付けが食べたくて、でも沖縄のいわゆる味噌汁も食べたくて、味噌汁定食に、煮付けをトッピングしてもらう。それでも1000円もしなかった。そして、抜群にうまかった。厨房では、近所の女性たちが手際よく調理をしていた。とても丁寧に作られた料理で、おじさんたちがここに集まるのも納得。
もし沖縄にまた行くことがあれば、絶対に再訪する。
4.祈りの聖地・波上宮を見た
お腹もいっぱいになったところで、今回の沖縄ぶらぶらサイクリングのハイライトのひとつ、波上宮へ。ビーチに隣接した崖の上に立っているのだが、まずは対岸にある道路へ向かった。実はそこから眺めるのが最も美しいのだ。
その荘厳な姿をしっかりとカメラで押さえた後に、波上宮の本殿へ。
そして波上宮に隣接するビーチへ。市街地からめっちゃ近いのに、めっちゃちゃんとしたビーチで、ゆんたくする地元っぽい人、写真を撮る観光客、みんなが笑顔になれる場所だ。
海は青くて、砂浜は白くて、すごく綺麗だ。近くにもカフェがあったり、公園があったりして、のんびりと過ごすにはうってつけ。国際通りからは少し距離があるので、意外に観光客が少なく、サイクリストならではの穴場だ。
今回レンタルしたのは、パナソニックの小径車のE-BIKE。アシストもしっかり効いて、ストップアンドゴーも楽々だ。ちょっとした坂ならグイグイと登ってくれる。それにしても旅と自転車はとても相性がいい。行きたい時に、行きたい場所へ、さくっと足を伸ばすことができる。E-BIKEの需要はますます伸びるだろう。こんな性能のよいバイクが借りられるなんていい時代だ。
5.那覇観光を凝縮、ぶらぶらポタリング
次に目指したのは、やちむん通り。牧志公設市場から近いところにあり、車が1台通れるぐらいの石畳の道がつづく。400メートルほどの距離なので、ここは自転車を降りてぶらぶら歩いてもいいだろう。どの店にも必ずシーサーはいる。おおぶりのお皿とか、マグカップとか、いろんなものが売っていて、ウインドウショッピングするのも楽しい。
そして、今回のクライマックスに選んだのは、首里城ヒルクライムだ。那覇の街を見下ろす高台にあり、どこからアクセスしてもしっかりとした登りがある。近づくにつれて、だんだんと坂道が増えてくる。しかし今回はE-bikeだ。ふつうならしんどい坂でもサクサクと登っていく。
最後の登りは、ファミリーマート寒川店からのおよそ2キロ。寒川緑地公園をなめながらグイッと高度を稼ぐ道だ。平均斜度は5%弱。ロードバイクに乗り慣れている人なら、それほど苦労せずに登れるだろう。眼下に広がる那覇の街が美しい。
登り切ったその先が、お目当ての首里城だ。2019年に火災に見合われ焼失したのを覚えている人も多いだろう。現在は再建工事が行われ、その様子を間近で見ることができる。ここは本当に気持ちの良い場所なので、何は無くとも那覇に来たら必ず訪れるべしだ。
レンタサイクル屋さんに戻る道すがら、国際通りの近くで美味しそうなピザ屋さんを見つけた。聞けば、別のお店で修行し、独立したのだという。店はもうPIZZAへの愛が溢れまくっている。おすすめを聞くとペペロニだというので、それを注文。自転車に乗っているのだから、どれだけ食べてもカロリーはゼロだ。生地はサクサクで、チーズもたっぷり、気にせずぺろっといただいた。美味なり。こんなふうに、ふっとアメリカを感じることが出てくるのも沖縄の面白さだ。
今回の那覇ぷらぷらライドは、およそ20kmの距離。しっかりと那覇を堪能できるよいコースだと自負している。しかも半日もあれば回れる。タクシーやレンタカーで回るのもいいけれど、自転車で巡ると、より生活の息遣いのようなものも感じられる。
そして、ロードバイクでガシガシ走るのももちろん楽しいんだけど、街をぶらぶらしながらのライドは、また違った楽しみがある。
もし機会があれば、那覇の街をポタリングしてみて欲しい。これまでとは違った那覇に出会えること請け合いだ。
Text & Photo_Daisaku Kawase
Profile
河瀬大作/Daisaku Kawase
フリープロデューサー、(株)Days 代表
愛知県生まれ。ロードバイク歴16年、絶景ライド好き。仕事の合間を縫い、自転車担いで全国へ出かける。愛車はトレック。NHKでプロデューサーとして「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「おやすみ日本 眠いいね」「あさイチ」などを手がけたのち2022年に独立。番組制作の傍ら、行政や企業のプロジェクトのプロデュースを行う。