なぜ自転車で宗谷岬へ?
日本最北端で迎えるそれぞれの新年

そろそろ1月も終わりそうな今日この頃、年末年始の話を蒸し返すのもなんですが…みなさんはどのような年越しをされていましたか?
大掃除をしながら新年を迎える準備をしている人。ライド納めをされて一息つかれた方。年末だって人の数だけ過ごし方が溢れています。
そんな時、日本最北の地、北海道の宗谷岬では。
日本全国から車、バイク、自転車、徒歩の旅人が集まり、寒さに耐え忍び身を寄せながら年越しを今かと待ち望んでいました。
凍えそう…

今回はそんな日本最北の地で過ごす少し変わった年越しの様子について、自転車での参加者にスポットを当てご紹介します。レポートはGlobal Rideの輪行や四国一周の記事でもお馴染みの温玉ねぎとろ氏。もちろん、温玉さんも極寒ライドで参加された年越し宗谷岬です。

温玉ねぎとろ@negitrobicycle

目次

1. 年越し宗谷岬とは
2. クレイジーな参加者たち
 No.1 ほこからさん from 宮崎県
 No.2 ふじさん from 埼玉県
 No.3 いぶきさん from 群馬県

3. 年が明けて朝が来る

1. 年越し宗谷岬とは

年越し宗谷岬とはその名の通り、年越しを日本最北の地、宗谷岬で行うことです。1月1日・元旦に稚内市が宗谷岬で「初日の出 in てっぺん」と名打ったイベントを開催しており、日本全国から初日の出参拝を目的とした旅人たちが集結します。
年末年始の宗谷岬は風雪も強く、気温も-10℃前後まで落ち込むため、しっかりとした事前準備と知識が必要な過酷なイベントとなっています。

岬の周辺で雪上テント設営

参加者の割合としてはバイクでの参加者が最も多く、次に車、そして自転車、徒歩と続きます。バイクや自転車、徒歩での参加者は基本的に岬周辺にテントを張り、じっと新年を待ちます。マイナス10℃、遮るものなく吹き付ける北風はどうしようもなく過酷ですが、どこからともなく溢れ出るお祭りムードが旅人たちを暖かく迎え入れます。

2. クレイジーな参加者たち

今回は北海道の豪雪をかき分け、ときにはマイナス20℃の超低温に晒されながら自転車で宗谷岬にやってきたクレイジーな参加者にお話を聞くことができました。それぞれの一風変わった年越しについてご紹介します。

No.1 ほこからさん from 宮崎県

苫小牧から冬期北海道の縦断に成功したほこからさん

Q. どこから来ましたか?旅のルートは?

宮崎から来ました。旅のルートは苫小牧から札幌、旭川を経由し国道40号を経由して稚内へ。稚内に到達したのはクリスマスイブで1週間ほど稚内で停泊後、宗谷岬に辿り着きました。

Q.なぜ厳寒の北海道を走るのですか?

2年前に自転車で日本一周を成し遂げたのですが、そのときの夏の北海道の景色がとても美しく忘れられなかったです。自分の中で夏の北海道の景色しか知らないことがどこか引っかかり、コンプレックスに感じていたので冬の北海道を走る決意をしました。

Q.積雪期のライドでは宗谷岬以外にどんな場所へ行ったことがある?

全くないです笑。登山もしているため、寒さや積雪へのイメージはできていました。宮崎から来ているということもあり、自転車で雪の上を走るという非日常にはワクワクが止まりませんでした。

Q.極寒・積雪期にライドをする上で気をつけることは?

雪の中でテントを張るときです。睡眠中に雪でテントが埋まってしまうと窒息してしまう可能性があるため、数時間おきに除雪をしながら野宿をするのはとても大変でしたが、良い思い出です。

NO.2 ふじさん from 埼玉県

70年代を彷彿とさせるクラシカルなスポルティーフ。「本物」の風格を感じる

Q.どこから来ましたか?旅のルートは?

埼玉県から来ました。今回の旅は北海道の幌延町(ほろのべちょう)からスタートして、豊富温泉を経由しながら稚内、宗谷岬へやって来ました。

Q.なぜ厳寒の北海道を走るのですか?

なぜでしょう。「自分を認めるため」でしょうか。今まで自転車に乗る中で、年越し宗谷岬には常に憧れがありました。いつかはやりたかった。それを今回実現することができて自分の自信へと繋げることができた気がします。

Q.積雪期のライドでは宗谷岬以外にどんな場所へ行ったことがある?

今回が初めてです。冬の北海道を走るにあたり過去の旅人の記録を参考にし、可能な限りクラシカルスタイルで挑むことに挑戦しました。

Q.極寒・積雪期にライドをする上で気をつけることは?

クラシカルなバイク(スポルティーフ)に跨がるにあたり、メカのケアはしっかりと行いました。グリスをスプロケットのフリーに塗っておくことでフリーの空転対策を。各部へのグリスアップは特に入念に行ったと思います。
また、実際に走り、積雪ライドの際はタイヤの十分なエアボリュームが必要と気づかされました。細いタイヤ(35c)では空気圧を落とすことができず、雪上での荷物を積んだ走行は不安定なものとなりました。次回冬の北海道を走行する際はもう少しだけタイヤを太くして挑みたいと考えています。太いタイヤの方が安心かもしれませんが、スタイルにこだわりたいのでそこはギリギリを攻めたいです。

NO.3 いぶきさん from 群馬

青いアウターがいぶきさん。赤いアウターが筆者です

Q.どこから来ましたか?旅のルートは?

群馬県から参戦しました。
スタートは温玉ねぎとろさんと道東の生田原温泉で合流し、オホーツク側の内陸を縫うようにして宗谷岬まで来ました。

Q.なぜ厳寒の北海道で走るのですか?

「強い奴に出会うため」といえばわかりやすいでしょうか。
冬の北海道は5回以上走っています。宗谷岬はその時々に多くの旅の経験を積んだ猛者が集結します。普段会うことができないような、自分と同等、自分よりもすごい経験を持った旅人と交流を持つことができるのは年越し宗谷岬の醍醐味です。
*筆者とは昨年の年越し宗谷岬でお会いし、この旅で共に走っています

Q.積雪期のライドでは宗谷岬以外にどんな場所へ行ったことがある?

積雪期に長野県の美ヶ原を走破しています。過酷さが時折見せる美しさにやみつきになってしまいました。

Q.極寒・積雪期にライドをする上で気をつけることは?

特に車でしょうか。私たちはあくまで北海道に受け入れていただいているゲストに過ぎません。厳しい環境で生活をされている北海道の方々の迷惑にならないような走行、ルート選定を心がけています。過酷な環境なのでしっかりと事前リサーチをしたうえで、挑んでください。決して無理はせずに。

いかがでしたでしょうか。
今回は上記の3名以外にも多くの方にお話を伺うことができました。
皆それぞれの目的を持って。
自分と向き合うために。
新しい仲間を見つけるために。
それぞれの新しい旅の交差を祝福するかのように、午前6時、日の出と祝うように花火が上がりました。

3. 年が明けて朝が来る

早朝6時に打ち上げられた花火をテントから覗く

新しい年の幕開けです。
初日の出をみんなで拝みます。

早朝。氷点下の中多くの旅人が初日の出を待ち望む

皆さん、またどこかでお会いしましょう。ご安全に!

それぞれの旅路へ
今年の初日の出は拝めず。また来年に!

Text_Negitoro Ontama

参考文献
https://www.north-hokkaido.com/feature/detail_32.html

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輪行プロフェッショナルがお届けする輪行ガイドシリーズ
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● 国内編01
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● 紀伊山地、熊野古道、オフロード
● 熊野三山詣、極上のマグロ、サイクルトレイン

四国一周1000kmをライドする
● 〜グラベルオタクが行くウルトラディスタンス〜

なぜ自転車で宗谷岬へ?
● 日本最北端で迎えるそれぞれの新年

Profile

温玉ねぎとろ@negitrobicycle
大阪府堺市出身。会社員・ライター・ブログ「自転車旅行研究会」管理人。幼少期から自転車に旅の荷物を載せたキャンプツーリングを行っており、国内のほとんどの都道府県を走破。また、大学在学中は自転車サークルに所属しており、ソロで10カ国以上を自転車で来訪。輪行経験豊富。2023年には厳冬期北海道を自転車で縦走するなど、エクストリームなキャンプツーリングを行う。近年はロングライドにも力を入れており、2023年にはブルベでSRを取得。2024年のGWには1900kmのブルベも完走している。今後はPBPやLELの完走を目指しつつ、海外キャンプツーリングも積極的に行っていく予定。