北海道・オロロンラインをライドする
利尻山を望む絶景ロードガイド

北海道北部、日本海沿いを走る絶景ルート「オロロンライン」。小樽から稚内までをつなぐ長大な道で、核心部は天塩稚内間の道道106号でしょう。左手には海に浮かぶ利尻山、右手にはどこまでも続くサロベツ原野。大きく蛇行することも少なく、地平線を目指すように進む爽快な道が続きます。今回は、その核心部を自転車で走り抜けます。

Text&Photo_Hokokara

オロロンラインの道上に並ぶオトンルイ風車群

目次

1. JR旭川駅から向かう宗谷本線・幌延駅
2. サイクリングロードの始まり、天塩町
3. 北緯45度のモニュメント
4. 雪国を知るパーキングシェルター
5. 北国の岬町、ノシャップ岬
6. オロロンラインの終着、稚内へ

1. 旭川駅からJR幌延駅

今回の舞台は北海道・道北エリア。スタート地点は日本のほぼ北端に位置する幌延町(ほろのべちょう)にあるJR幌延駅です。宗谷本線が通っており、旭川駅から電車一本でアクセスできます。時間こそかかりますが乗り換えの手間は少なく、東京や札幌からの行程も意外とシンプル。飛行機なら稚内空港を利用し、稚内駅経由で幌延へ向かうルートも選べます。



セイコーマートは北海道に拠点を置くコンビニエンスストアチェーン

まずは幌延駅最寄りのセイコーマートほろのべ店にて朝食を。ここからオロロンラインに合流するために天塩まで20㎞ほど走りますが、道中にお店がないので食事はここで済ませておくが吉です。

天塩町までの20㎞はオロロンライン本番に備えたウォーミングアップ、くらいの気持ちでいたのですが既に北海道の雄大さを感じられる景色で気持ちも昂ってきます。


2. サイクリングロードの始まり、天塩町

天塩大橋からの天塩川

幌延駅から5kmほど走り、天塩大橋を渡ると天塩町(てしおちょう)に入ります。町名はアイヌ語で「テシュ」から転訛したものと言われ、ヤナ(水中や木・竹・杭等を並べ水流を堰塞して、魚を捕獲する仕掛け)の意を含んでいるといわれています(天塩町Webサイトより抜粋)。

橋の先で出迎えてくれるのは、牛が大きなしじみをすくい上げるユニークなカントリーサイン。天塩町ではしじみ漁と酪農が盛んです。天塩川は北海道で二番目に長い川で、その豊かな流れがしじみ漁を支えてきました。ちなみに北海道で最も長いのは石狩川です。

セイコーマート天塩川口店に着くとともに市街地入りです。オロロンライン本番に備えて再度食料を補給します。またセイコーマートかという気持ちにもなりそうですが、ここから約60㎞の間はレストランやコンビニ等の補給点が存在しません。行動不能にならないように飲み物、食料はしっかり用意していきましょう。

ほど近くの道の駅「てしお」でしじみラーメンを。出汁の効いたスープが絶品でぺろりと完食
西に進み道道106号、オロロンラインに合流すると天塩川を挟んで海が顔を出す

北西には利尻島にそびえる利尻山が。日本百名山にも選ばれている名峰です。夏は日が高くなるにつれて山頂に雲がかかりやすいため、全貌を見るのは少し難しいこともあります。それだけに、朝のうちなどに姿を捉えられたときの感動は格別です。

天塩河口大橋を渡ると、いよいよオロロンラインの核心部へ。どこまでも続く雄大なサロベツ原野と、一直線に並んだ巨大なオトンルイ風車群が、絶景のサイクリングロードの始まりを出迎えてくれます。

オロロンラインの景観をより一層魅力的にしている要素の一つが、一直線に並ぶオトンルイ風車群です。建て替えのため、2023年3月末で運転を停止する予定でしたが、スケジュールが変更となり、現在は2027年3月まで稼働が続けられることになっています。つまり、この風車群の姿は「いましか見られない景色」。存在しているうちに、ぜひこの道を走って体感してほしいと思います。


3. 北緯45度のモニュメント

オロロンラインを北上していくと、傾いた「N」の形が印象的な記念碑、北緯45度モニュメントが現れます。北緯45度は赤道と北極点のおよそ中間に位置する緯度で、このライン上にはフランス(ボルドー周辺)、イタリア北部、モンゴル、中国の黒竜江省、アメリカのオレゴン州からミシガン州にかけてなど、世界のさまざまな地域が並んでいます。

この緯度では、夏は日が暮れるのが遅く、冬はその逆で昼が短くなるのが特徴。それゆえに季節のコントラストがよりくっきりと感じられます。宮崎出身の私からすると、信州あたりからすでに「冬は厳しいな」と思ってしまいますが、北緯45度を超える地域は、世界的に見ても本格的に冬が厳しい土地として認識されるのでしょう。

そんな北緯45度モニュメントは、まるで「真なる北の大地」への玄関口のような存在に思えます。


4. 雪国を知るパーキングシェルター

次の見どころは北緯45度モニュメントのすぐ近く。一見トンネルのような浜里パーキングシェルターです。
これは雪国特有の施設で、特にサロベツ原野では冬の地吹雪から車を避難させるために設けられたものです。この一帯の積雪量はそれほど多くありませんが、遮るものの少ない広大な平野を強風が駆け抜けることで、積もった雪が一気に舞い上がり、晴れていても視界を奪う「地吹雪」が頻発します。そんな環境でドライバーが無理をせず車を停め、天候が回復するのを待つための退避所がパーキングシェルターです。
夏に訪れると無機質な建物に見えるかもしれませんが、その背後には厳しい自然と向き合いながら暮らす人々の知恵があります。オロロンラインでこの施設を目にするとき、絶景の裏に潜む厳しさと、それを克服する工夫の両方を感じ取ることができるでしょう。

豊富町へ入ると天塩と同じくこちらも牛のカントリーサイン。オロロンライン上の街は酪農が盛んで、カントリーサインにはたびたび牛が登場する
北海道の牧草地でたびたび目にするのがこの点々と並ぶ黒い円筒形の物体。
これは「ロールベールサイレージ」と呼ばれる牧草の保存方法です。刈り取った牧草を円筒状に丸め、ビニールフィルムで密封して発酵させることで、牛の飼料となる良質なサイレージ(発酵飼料)ができます。黒いラップは発酵を助けるために日光の熱を吸収しやすく、雪国の冬でも安定した保存を可能にします。
信号も電柱もないひたすらまっすぐな気持ち良い道。車やバイクにもゆとりをもって追い抜いてもらいやすくハラハラすることもない

海に草原にと前景を多彩に変化させる利尻山を眺めながらのサイクリングは眼福そのものです。

北上を続けていくとついに日本最北の市「稚内」のカントリーサインが現れました。しかし市街地まではまだ30km。ここから先を「まだ絶景を楽しめる」と感じるか、「早くゴールしたい」と思うかは人それぞれでしょう。絶景に目が慣れる頃には、そろそろ疲れが勝ってくるかもしれません。とはいえ、そんな気持ちの揺らぎも、この道だからこそ味わえる特別な体験だと思います。

次第に平坦だった道は起伏を増し、体力を削られる区間に入っていく

稚内のカントリーサインを過ぎてからは、それまで続いていた海岸線や原野の風景が少しずつ変わってきます。視界に入るのは、川とともに広がる湿地の景色。水面には水草が浮かび、これまでの乾いた原野の風景とは違う趣を感じさせます。「湿地」という第三の景観が現れることで、ゴールに近づいている旅のシーンに新しい変化を与えてくれます。

民家も見え始めオロロンラインの終わりが近づく

道道106号と254号の分かれ道に差しかかります。右に進めば丘をひとつ越えてすぐに稚内市街地へ入ることができますが、左に進めば平坦な道がしばらく続き、少し遠回りになります。今回は日暮れまでまだ余裕があるので、あえて左の254号を選びました。こちらを通ればノシャップ岬を経由できるため、岬からの展望をこのサイクリングの締めくくりとしたいと思います。


5. 北国の岬町、ノシャップ岬

稚内の市街地から自転車で向かったノシャップ岬。岬の広場にはイルカのモニュメントと時計塔があり、観光客が集っていました。海沿いの開けた場所で、晴天時には空と海の広がりを感じられる気持ちのいいスポットです。そこかしこにウミネコが飛び交い、北国の港町らしい光景が広がっていました。

岬の先からも当然、利尻島を望むことができます。この日は山頂が雲に隠れていて、利尻山の全体像を見ることはできませんでしたが、その山体の大きさは十分伝わってきて存在感は強く残りました。

利尻島で撮影した利尻山 (2022年7月、著者)

実際の利尻山は「利尻富士」と呼ばれるほどきれいな独立峰で、その姿は圧巻の一言。過去に利尻島で撮った写真を振り返ってみると、その迫力は稚内から見たとき以上。山好きでなくても、近くで一度は眺めてみたくなる景観です。

稚内まで訪れたなら、そこから利尻島に渡るのも良いプランでしょう。オロロンラインを走るあいだ常に視界にあった利尻山は、旅人にとってすっかり親しい存在になったはず。フェリーに乗れば、その利尻山のお膝元を一周するサイクリングを楽しむことができます。道中で寄り添ってきた山にさらに近づき、より大きな姿を体感しながらの充実感のあるサイクリングとなるでしょう。


6. オロロンラインの終着、稚内駅へ

長い道のりを走り抜け、ついに稚内駅に到着しました。日本最北の鉄道駅を示す看板の前に立つと、ここまでたどり着いた達成感がじわりと湧いてきます。オロロンラインの絶景に導かれて進んできた旅も、ここでひと区切りです。

汗を流すなら駅からほど近いヤムワッカナイ温泉「港のゆ」がおすすめです。広々とした湯船に浸かり疲れた体をリフレッシュ。ゴール後のご褒美として、最北の地の温泉を味わうのは格別です。

ラーメン「広宣」のチャーメン

そして、稚内では街のソウルフード「チャーメン」をぜひ。チャーメンは茹でた中華麺を油で炒め、たっぷりの具材入りあんをかけた料理で、もちもちとカリカリの食感を同時に楽しめるのが特徴です。本当に絶品で、私も稚内に来たら必ず食べる料理のひとつです。

今回は日本海沿いを走る絶景の道、オロロンラインを稚内までたどりました。広大な原野や海、そして利尻岳を望む風景は、ここならではの魅力にあふれています。北海道を旅する際には、ぜひ一度オロロンラインの景色を楽しんでみてください。


🚲参考Webサイト
オロロンラインについて_天塩町観光協会
https://www.teshio-tourism.com/%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3稚内・利尻・礼文 観光WEBサイト https://www.north-hokkaido.com/feature/detail_40.html
ヤムワッカナイ温泉「港のゆ」https://minatonoyu.fill-sapporo.com/

Profile

Hokokara
宮崎県出身。山と神社をテーマに全国を巡る旅を続けるブロガー。過去には自転車で日本一周を達成し、現在は「ひのもと行脚」にて登山や歴史、風景にまつわる記事を発信している。今後は海外にも取材のフィールドを広げ、日本と世界の魅力を発信していく予定。
ブログ「ひのもと行脚」 https://fawtblog.com/