ホノルルセンチュリーライド2025
5組のライダーが描くトリップノート #05-2
4泊6日/南の島のカメハメハ・ロード、王道は想像以上に王道だった
シリーズでお届けする「5組のライダーが描くトリップノート」の最終回、第五回の後半をお届けします。ホノルルセンチュリーライドってどんなイベント?を紐解く160kmの疾走ダイアリーはフォトグラファーでライダーの下城英悟氏より。ロコムード満載の写真と共にぜひご堪能ください。
4泊6日/南の島のカメハメハ・ロード、王道は想像以上に王道だった
Note by_Eigo Shimojo
DAY_4/9月28日(日)
早朝5:00、夜明け前の空が濃い紫色に色づくカピオラニ公園に、出走者が続々と集まってくる。待ちに待ったHCR当日。ファンライドイベントとはいえ、スタート前の緊張感で、会場は高揚している。薄暗がりでも色鮮やかなサイクルジャージと自転車が映えている。人種も国籍も様々な表情、笑顔があり、撮るべき瞬間が溢れている。カメラを持ってしばし歩き回るが、僕とて出走者なので油断はできない。時計と睨めっこして、撮影は早めに切り上げ、スタートグリッド前方へ陣取った。ローディーガチ勢に混じり、我がGR編集長Iさんとコミュニケーションディレクターの河瀬大作さんが、ブロンプトンにまたがり仁王立ちしていた。小径車を携えるその勇ましい姿をパシャリ。グリッドにはいろいろな自転車が列に並んでいる。Eバイク、シティバイク、マウンテンバイク、カーゴバイクさえある。年齢も人種も多様な参加者と同じく、自転車も装備もバリエーション豊かなのが象徴的だ。日本のイベントにはなかなかない、この自由で”FUN”な雰囲気は、ここがアメリカだからにほかならない。
時刻は6:00を過ぎ、ナショナルアンセム、”星条旗よ永遠なれ”の斉唱が終わると、張り詰めた緊張を解き放つスターターの合図が響いた。
カラフルで巨大なプロトンが、大蛇のようにうねって進みはじめた。カピオラニ公園を抜け、ダイヤモンドヘッドへ向かうショートクライムで、大蛇は伸びきって早くもちぎれ、それぞれ足の合う小集団を作って加速していく。そのうち1つのローディートレインに飛び乗り、相乗りさせていただく。崖下の海には今日もサーファーの影、見上げたダイヤモンドヘッドには、日の出を待つたくさんのトレッカーの影が、辛うじて見えた。








坂で上がった息と心拍を整えながら、高級住宅地のカハラ地区を高速で巡航していく。途中、こんなに速く走るつもりじゃないことに気づいて、集団から離れ、ソロライドに切り替えた。スタート当初は高揚して、ついついレースモードを発動しがちだ。100mile分もっと楽しんで、苦しまなくては、笑。が、反省も束の間、ハイウェイ72号にジョイントした。ここはイヤでも高速セクションだ。車両に気を遣いつつ高速巡行すると、ときどきの車から応援のハンドサインがあり、元気をもらう。やがて東の雲間を割って、太陽が顔を出した。道の先には、逆光を受けた黒い山影が近づいてくる。あの独特な台形は、コーコーヘッド・クレーターに違いない。あの素晴らしい海岸線も近い!


オアフ島を象徴するようなコーコーヘッドの海岸線をコースに組み込んだのは、長いHCRの歴史で初のこと。車両規制は、さらに贅沢だ。コーコーヘッドの山影を左に見て、長い一本坂を登り切ると、朝日を受けるまばゆい海岸線が視界に飛び込んでくる。逆光を照り返す、光の筋のようなカーレーンが伸びる。海と陸の端境に滑りこんでいくようなライドは、不思議な感覚をともなう。太平洋の真ん中にいることを強く感じる。この感覚を写真に残そうと足掻くが、それが撮れたのかはわからない。気づけば瞬く間に走り切ってしまった。夢見心地で最初のエイド、サンディービーチパークに滑り込んだ。





軽くスナックを齧って、いま来し方を振り返る。まだ20kmだけど、もうライドの余韻にひたることができる。波打ち際の潮風が、暖まった体に心地よい。陽を浴びてこちらを見下ろすコーコーヘッドの山容は、実にクールでカッコイイ。
エイドを出ても、しばらく夢の海岸線が続くが、締めにはしっかり足に来るマカプーの高台へヒルクライム。素晴らかったルートに敬意を表して、心してハッスルする。たどり着いた展望台からは東海岸が一望だ。楽しくも、苦しくもある道は、まだまだ北へとのびている。







マカプーからダウンヒルして、いよいよ東海岸へ突入。海沿いを離れ、内陸に切り込んで向かったのは、丘陵地帯ワイマナロ地区(約35km地点 )。光あふれる海岸線から一転して、樹林帯の山村を縫う田舎道の風情がある素敵な道だ。晴れているが、いつの間にか湿気を帯びた雲が山に厚くのしかかっている。オアフの中でも雨の多い地域なのだという。緑濃い丘をめぐると、バナナ畑や色鮮やかな花々が目に楽しい。同時に、切り立つ山肌とジャングルが、ルートのすぐ目前に迫ってくる。ひだのように連なる急峻な山陵は、とても独特だ。この島の成り立ちに関わる太古の火山活動に由来するという。周りを走る人たちも、景色とこのムードを噛み締めるようにゆっくり走っているから面白い。坂道のせいだけではないだろう。ワイマナロのシンボル、オロマナピークが、麓を過ぎ去る私たちを見下ろして聳えている。日本ではまず見ない山景に、悠久の時の厚みを感じながら、山に別れを告げた。






再び72号線を北上し、モカプ半島の付け根のカイルア地区へと進む。閑静な住宅街でサーフボードを抱えビーチに向かう人々とすれ違う。ワイキキのホノルルのベッドタウンでもあるこの地域で、ハワイアンロコの生活が垣間見れる。2つ目となるエイドも、ローカルなカイルア中学校にあり、ロコ中学生もお手伝いするシェイブアイスを頬張る参加者たちの楽しそうなこと。午前中だが、気温の上昇は早い。水分と補給を摂り再出発して、半島の反対側のカネオヘ湾に向かう。ここは米国有数のビーチリゾートで、かのパイレーツ・オブ・カリビアンの撮影が行われるほどの風光明媚な名所。ビーチサイドから伸びるカネオヘ・ベイ・ドライブをクルーズ。






市街地を抜けると、ここからは83号線沿いに一路折り返し地点を目指す。余計なことは考えずペダルを踏むことに集中できるシンプルなルートだが、細かいアップダウンと、風との戦いはあるだろう。市街地近くは交通量の多い幹線道路なので、ラインキープに集中する。ライドの安全と気分転換を兼ねて、時々出会うチームトレインに相乗りさせてもらいながら走る。簡単な英語だけどコミュニケーションをとるのも楽しい。総距離50kmを超えているので、誰しも楽ではないだろうが、皆笑顔でそれぞれに格闘している。笑顔は力になる。スマイルは、パワーのおすそわけ。その表情を、またパシャリ。





83号線、通称カメハメハロードを北上するに従い車両は減り、ワイカネに至る頃には緑の濃いローカルロードとなり、農地や牧場の広がる長閑な風景が続く。少し緊張がゆるみ、同時に実際の距離以上にワイキキの喧騒から遠くまで走ってきたことを実感する。
ジュラシックパークのロケ地の自然豊かなクアロア牧場に沿う上り坂を登り切ると、久しぶりの海岸通り。しかも文字通り波打ち際を走るビーチサイドロードが、折り返し地点のスワンジービーチパークまで続くのだ。最高に気持ちの良い道は、しかし予想通り風が強い。ときおり打ち寄せる波しぶきを受け、低い姿勢で踏んでいく。誰に頼まれたでもないが、折り返しまでキッチリ追い込んで、50mileの折り返し、スワンジー・ビーチパークのエイドに到着した。





時刻は11:30前。後半に少し飛ばしたので、ちょっと早めのランチタイムとなった。笑顔が眩しいロコガールズが、パイナップルやスイーツをサーブしてくれる。ロコママが手渡してくれた梅干しおにぎりは、日本人に嬉しいサプライズだ。スイーツもおにぎりも構わず口に放り込み、リカバリーに努めつつ、ここまで到達した多国籍な面々のスマイルをカメラで収集していく。みんないい顔してる、まだ半分あるけどな!
日はいよいよ高くのぼり、気温もぐんぐん上昇している。
ハワイアン・ライドをイージーだと思ったら、それは甘い判断だ。ファンライドといっても100mile(160km)ライドはアドベンチャーで、試練もたくさんある。特に日中は、気温も上がるし、道の荒さもある。油断禁物と肝に銘じて、復路に取り掛かる。









基本的には同じ道を戻ることになる往復路だが、ネガティブな繰り返しの印象はまったくないルートだった。往路で見過ごした発見ももちろん多いが、光も、地形も来た道と別物に感じる。同じ道には、まったく違う楽しみが待っている。
往路でルートのことはずいぶん書いたので、復路で好きなポイントを、以下にあげてみることにする。
①折り返し直後のカメハメハロードから見る東海岸遠景と、チャイナマンズハット
②カイルア&カネオヘ周辺の住宅街を抜けるタウンライドのロコ感
③ワイマナロの山沿いルート!往路も復路も、個人的にベストルート。
④マカプーの復路クライム&ダウンヒル。東海岸から南海岸線への分岐点で、ゴールが近づく安堵感がむくむくと。
⑤心と体を試される終盤最大の山場、ハートブレイクヒル&カメハメハ・ヒルクライムチャレンジ(オプションルート)。
⑥最終砦ダイヤモンドヘッドロード
⑦カピオラニ公園のゴールゲート!















最終盤、ここまでトラブルもなく安全だったことに感謝して最後のペダルを踏んでいく。少し傾いて色づく陽を受け、朝と全く違う表情を見せているダイヤモンドヘッド。見下ろせば、サーファーは懲りずに波を踏んでいる。ゴールも間近だが、最後に止まって深呼吸し、愛車と、海の遠景を撮影した。朝登った坂道を、味わってダウンヒルすると、もうカピオラニ公園だった。まわりの同じペースの数名が、競うでもなく、芝生のゴールゲートに吸い込まれていく。思えば、要所でカメラを構えてくれていたオフィシャル撮影隊が隊列し、シャッター音でゴールを祝福してくれた。
たまたまともにゴールした方とひとしきり労いあってから、芝生にバイクを倒し、大の字に横になると、空は夕景に色づき始めている。頭の中、今日のハイライトがフラッシュバックする。ファインダー越しに見た笑顔が、脳裏に浮かぶ。良い写真、たくさん撮れただろうか。確信は十分だ。南の島のカメハメハ・ロード。王道は、考えていた以上に王道だった。つまらないセリフは承知としても、また来年も、この道を走りたい。











🚴♂️ホノルルセンチュリーライド2025 5組のライダーが描くトリップノート
01 5泊7日/50年来の旧友と
02 5泊7日/小学生の娘2人とペダルを踏む!ホノルル80kmの旅
03 2泊4日/仲間と紡ぐ、優しく美しいライド体験
04 5泊7日/人生を変える絶景…ハワイを堪能するなら80kmがおすすめな理由〜3度目のホノルル旅〜
05-1 4泊6日/南の島のカメハメハ・ロード、王道は想像以上に王道だった
05-2 4泊6日/南の島のカメハメハ・ロード、王道は想像以上に王道だった
Profile

下城 英悟
1974年長野県生まれ
IPU日本写真家ユニオン所属
2000年フリーランスとして独立、幅広く写真・映像制作を扱うグリーンハウススタジオ設立
ライフワークとしてアンダーグラウンドHIPHOP、世界の自転車文化を追いかける