CULTURE

CULTURE
CYCLE CINEMA⑮
『アンゼルム』
巨大「工場」を自転車で行くアーティスト

画家、アーティストのスタジオと聞き、想像するイメージがあると思う。混沌としたデスクには絵筆や絵の具が乱雑に並ぶ。日差しが降り注ぐ大きな窓。その先には美しい庭があるかもしれない。ドイツの現代美術の巨匠アンゼルム・キーファーを描いた映画『アンゼルム』(2023年)はドキュメンタリー作品のスタイルを取る。しかし、監督はヴィム・ベンダース。『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『PERFECT DAYS』などで知られる名匠だ。彼の手にかかると、単なる記録映像ではなく、事実とフィクションが絶妙に混じり合う詩的な映像体験へと昇華される。 キーファーはドイツを代表する芸術家だ。彼の扱うテーマもドイツの歴史、ナチス、戦争、ワーグナー、ギリシャ神話、聖書などをテーマに、砂や薬、鉛などを用いた作品が特徴的だ。フライブルク大学で法律を学ぶが、美術に転じ、1969年にカールスルー工芸術アカデミーに入学。1970年にはデュッセルドルフ芸術アカデミーで絵画を学び、ヨーゼフ・ボイスらに師事した。現在では、現代美術における最重要作家の一人として数えられている。 映画冒頭、キーファーのスタジオが登場する。フランス南部の町・バルジャックにあるスタジオで元は繊維工場だったそうだ。このスケールが大きい。制作で使う素材や道具は専用棚に収納されており、作品を運ぶフォークリフトが走り回る。もはや「工場」と呼ぶにふさわしい広大な空間だ。彼の作品は巨大であり、その制作環境もまた圧倒的なスケールを持つ。そんな広大なスタジオの中を彼は自転車で巡る。作品から作品へ。まるで自らの創造の森を探検するかのように、軽やかに移動する姿が印象 […]

#Hideki Inoue
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Circle of Cycling Friends りんとも!
#08 平塚吉光さん

ライドを楽しむ人を繋げる「りんとも!」連載、2025年もどうぞ宜しくお願いいたします。スポーツジャーナリストの山口和幸さんがご紹介くださった今回の「りんとも」は、元自転車競技者の平塚吉光さん。競技生活を引退後にライダーのためのホテルで勤務中、プレスツアーで宿泊された山口さんと知り合ったそうです。 ロードバイク歴は小学生時代から。プロカメラマンのお父様が自転車好きであったことから、自然とバイクに触れる日々を過ごしていたそう。8歳で初めて買ったマウンテンバイクで地元(伊豆)の大会に出場し、そこから毎週末レースに出る日々を過ごしていた筋金入りのレーサーです。現在とプライベートも含めた、ライドにまつわるお話を伺いました。 目次  Profile 1. 愛車を教えてください 2. お気に入りのサイクリングコースは? 3. 直近で出場したライドイベントとその感想 4. 次に参加してみたいライドイベントとその理由 5. 過去のライド人生における最も印象的な思い出 6. ライド関係のお気に入りグッズとその理由 7. あなたにとってライドとは? 次回ゲストのご紹介 Profile 名前 平塚吉光/Yoshimitsu Hiratsuka職業 サイクルコーディネーター趣味 自転車とマッサージ自転車歴 24年SNS Instagram @Yoshimitsu_Hiratsuka 1. 愛車を教えてください クロモリのロードママチャリ風父親から譲り受けたものです。パーツを変えたり、メンテナンスしながら22年くらい愛用しています。 2. お気に入りのサイクリングコースは? 地元でもある伊豆半島の狩野川周 […]

#RingTomo
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CYCLE MUSIC⑮
Norah Jones
「Christmas Calling (Jolly Jones)」

自転車と僕の好きな音楽にまつわるちょっとしたコラムをお届けしてきました「CYCLE MUSIC」も、連載15回目を迎える今回でひと区切り。次回からは自転車と共に音楽で世界を走ろうというイメージで、“都市の音楽”をテーマに「Music Cycles Around The World」と題して生まれ変わりますので、本来であれば12月に推薦したかったところですが、書きそびれてしまっていた“自転車と音楽の蜜月”を象徴するような名作を、最後にご紹介しましょう。 それはNorah Jonesの「Christmas Calling (Jolly Jones)」。これまでもグラミー賞の常連だったNorah Jonesは、つい先日、昨年リリースした最新アルバム『Visions』が、第67回グラミー賞“Best Traditional Pop Vocal Album”を受賞したという、吉報がとびこんできたばかりですね。「Christmas Calling」は2021年に発表されたその前作で初のクリスマス・アルバム『I Dream Of Christmas』のリード・シングルで、寂しそうに街をひとり自転車でさまよう可憐な彼女のもとに、たくさんのサンタクロースが自転車に乗ってだんだんと集まってきて、やがて夢のような楽しいクリスマス・パーティーが始まるMVもハートウォームな名曲です。 コロナ禍で人が集まることが困難だった当時の、「大切な人と少しでもつながっていたい」という切実な思いが反映されていて、クリスマスに離れてすごす大切な人に電話越しで歌う心温まるストーリーが綴られていますが、その優しい歌とメロデ […]

#Column #Music
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河瀬大作の Riding Journey (25/2/7更新)

フリーTVプロデューサーでGlobal Rideコミュニケーションディレクターの河瀬大作が、さまざまな自転車好きを招いて、自転車で旅をする魅力をお伝えする番組です。今回のゲストはスタートアップファクトリー代表の鈴木おさむさん。一挙前後編を公開します。 SpotifyチャンネルはこちらApple Podcastチャンネルはこちら 第1回 前編『実は自転車エリート家系!?放送作家引退後にE-Bikeを楽しむ鈴木おさむさん』(2025.2.7) ゲスト:鈴木おさむさん(スタートアップファクトリー代表) ↓ このページでフルに聞く方はこちらから 第2回 後編『自転車であの頃を思い出す懐メロライド。鈴木おさむさんにとって自転車とは?』(2025.2.7) ゲスト:鈴木おさむさん(スタートアップファクトリー代表) ↓ このページでフルに聞く方はこちらから 【2月11日(火)16:00放送 「シン・ラジオ」も合わせてチェック!】 BAY-FMのラジオ番組「シン・ラジオ」(月〜金16:00-)で鈴木おさむさんは火曜日をご担当されています。そして、「Riding Journey」ナビゲーターの河瀬大作さんは、毎月その番組に出演中。次回の出演は2月11日(火)16:00-。そこでもお二人の自転車トークに花が咲くかもしれません。「Riding Journey」とともに、鈴木おさむさんの「シン・ラジオ」もぜひチェックしてみてください シン・ラジオ ゲスト:鈴木おさむ(スタートアップファクトリー代表) 1972年4月25日生まれ 千葉県千倉町(現 南房総市)出身19歳の時に放送作家になり、それから32年 […]

#Osamu Suzuki
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CYCLE CINEMA⑭
『関心領域』
地獄と天国を自転車が繋ぐ

アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所(以下、アウシュヴィッツ)を題材にした『関心領域』(2024年)は、美しく明るい場面が続く。ご存じのように、ナチス体制のもとで管理・運営されていたアウシュヴィッツは「人類最大の過ちのひとつ」「人類史上最悪の犯罪現場」として悪名高い施設だ。ドイツが占領下に置いた現在のポーランド南部、オシフィエンチム市郊外に建設された。司令官ルドルフ・ヘスの指揮のもと、1940年から1945年にかけて多くのユダヤ人が殺害された。あまりにも多くの人が犠牲となったため、現在でも正確な総数は不明とされ、100万から250万人という説がある。 映画の舞台はルドルフ・ヘスの邸宅。そこには家族が暮らしている。戦時下であっても家の中には家庭の日常があり、子育てや夫婦の会話が交わされる。その日常は淡々と続く。しかし、観客は次第に不思議な違和感を覚える。この家は何かがおかしい。空気のように扱われる使用人たちだろうか。誰かから奪った衣服を嬉しそうに着る夫人だろうか。吠えまくる犬だろうか。おかしな行動をする子どもたちだろうか。違う。「音」だ。音によって、家の「外」で何かが起きていることに気づく。 そう、ヘスの家の隣にはアウシュヴィッツがあるのだ。何かを燃やすボイラーの音、乾いた銃声、命令口調のドイツ語、叫び声、人々が運び込まれる機関車の音。その「音」に囲まれて、ヘスの家族は暮らしている。まともな感覚を持っていれば、音の元を想像する。そんな場所で暮らすことに耐えられないだろう(事実、逃げ出す人もいた)。塀を一枚隔てた場所は地獄なのだから。しかし、すぐ側では普通の暮らしがあり、庭の花を […]

#Cinema
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CYCLE MUSIC⑭
RM
「Bicycle」

毎回ちょっとした自転車にまつわる音楽紹介をお届けしている連載コラム「CYCLE MUSIC」。今回は僕より詳しい方もたくさんいらっしゃると思いますが、韓国の大人気グループBTSのリーダーであり、ヒップホップMC/シンガー・ソングライター/プロデューサーRMのソロ曲、その名も「Bicycle」について綴ってみようと思います。 というか正直なところ、僕はBTSのことをほとんど知らなくて、申し訳ないことこの上ないのですが、「2021 BTS FESTA」の一環として発表された作品だというこの曲には、とても感銘を受けました。Free Soulファンにも薦めたいような、ゆったりとしたグルーヴを紡ぐギター・カッティングに導かれる、少し寂しげな感傷的なメロディー。「悲しいときは自転車に乗ろう」というサビのリフレインが胸に沁みる、大スターでありながら私小説的な魅力にあふれた、自転車ソング屈指の名曲ですね。 自転車に乗るといつもときめき、最も自由を感じられる時間だと語るRMは、ずっと自転車にまつわる曲を作りたいと思っていたそうですが、実際にこの「Bicycle」は、夢中で自転車に乗ってあちこちを動きまわりながら、メロディーと歌詞を完成させたといいます。とりわけ、週末に自転車に乗りながら鼻歌をくちずさみ作ったというリリックは、歌もラップも心打たれずにはいられません。シンプルな自転車のドローイングをあしらったジャケットも、味があって素敵だと思います。皆さんも、悲しいときは、自転車に乗りましょう。僕はもう、そうしています。 RM 「Bicycle」https://www.youtube.com/wat […]

#Bicycle #RM #Column
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CYCLE CINEMA⑬
『少女は自転車にのって』
女性が自転車に乗れない世界の物語

映画のおもしろいところは、多様な世界を見せてくれることだろう。マフィアの血の歴史を。遠い星で起こった戦争を。殺し屋と少女の出会いを。幕末の侍の生涯を。絶体絶命の兵士を。湖畔で襲いかかる殺戮者との戦いを。国境や時代、時空を越えて、私たちに驚きと感動を与えてくれる。 『少女は自転車にのって』(2012年)はアカデミー賞外国語映画賞やヴェネツィア国際映画祭国際映画祭にノミネートされたサウジアラビア映画(ドイツ共同制作)。監督と脚本を担当したハイファ・アル=マンスールはサウジアラビア初の女性映画監督だ。 物語はサウジアラビアの首都リヤドで始まる。主人公は10歳の少女ワジダだ。頭の回転が速く、小銭を貯める能力に長けている。その彼女の夢は自転車に乗ること。お金を貯めて自転車を買い、男友だちと自転車競走がしたいのだ。これを聞いた人は「はいはい、途上国の貧困映画ね」と思われるかもしれない。違うのだ。彼女の家はおそらく中流家庭より上。素敵なリビングには大型テレビやゲーム機がある。母の仕事の送り迎えにはドライバーがいる(乗り合いだけど)。基本的に生活には困りごとはない。両親は真面目に働き、彼女に愛情を注いでくれる。お金に困っていないのに、なぜ自転車を買えないのか。それは、女の子が自転車に乗ってはいけないから。 私たちの常識から考えると驚きの女性差別が劇中に登場する。学校でも大きな声で話してはいけない(男性に聞かれてはいけない)。顔や体のラインがわからないようヒジャブなどで覆わなくてはならない。婚姻前の年頃の男女が外で会ってはならない。ラジオでロックを聴いてはいけない(これは女性だからというわけでは […]

#Cinema
TRIP&TRAVEL CULTURE EVENT
Travis Counsell氏インタビュー
誰もが自転車ライフを楽しめるハワイへ

9月の最終日曜にあたる29日。今年で41回目を迎えた「ホノルルセンチュリーライド(以下、HCR)」が終了しました。 GR編集部スタッフがたくさんの参加ライダーと言葉を交わした中で、数名の方から頂戴した質問がこちら。「こんな最高なライドイベントは、そもそもどのような団体が主催しているのか?」 ということで、本大会を主催する団体・Hawaii Bicycling Leagueのエグゼクティブディレクターを務め、自身も自転車を愛してやまないトラヴィス・カウンセル(Travis Counsell)氏に、インタビューを行いました。最後に参加者の方へのメッセージも頂戴しましたのでどうぞご覧ください。 _Global Ride編集部(以下GR)大会概要を改めて。 _Travis氏(以下敬称略、Travis)本大会はハワイで最大規模のロングライドイベントです。1981年に初開催し、41 年にわたる歴史があります。イベントの主催は私たち「Hawaii Bicycling League(以下HBL)」で、非営利団体です。2003年より日本での受付を開設し、HCR ジャパンオフィスであるHM-Aと協力し、大会を運営しています。主要なスポンサーにJALが入っているので日本からの参加ライダーも多いです*1。 *注1_ホノルルセンチュリーライドと日本の深い関係は別記事でお届けします。お楽しみに! _GR  HBLの活動理念は? _Travis 「Share the Road (道路の共有)」。 Health、Recreation、Transportの3つをキーワードに、ホノルル及びハワイが自転車と歩行者に […]

#Hawaii #Interview
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