噂のThe Japanese Odysseyとは?#02
2015年、7月18日を目指す

日本で開催される超長距離、超絶コアなライドイベント「The Japanese Odyssey」を追いかけ続ける写真家・下城英悟氏による連載エッセイ。第二弾はウルトラロングディスタンスを支える自助の精神と、初めての参加…?に至るまでの道のりについてお届けする。

目次

1 ウルトラディスタンス(超長距離)とセルフサポーテッド(自助)
2 さきがけの「The Transcontinental Race」

1 ウルトラディスタンス(超長距離)とセルフサポーテッド(自助)

あらためて「The Japanese Odyssey(以下TJO)」の特徴を端的に表すキーワードは2つ。

文字通りの”ウルトラディスタンス”(超長距離)、そして、”セルフサポーテッド”(自助)の精神だろう。 レースの多くは数百〜数千キロの設定ルートを、1~2週間の制限時間内での自力完走を目指す。

いわゆる耐久レースとはいえ、TJOは距離と所要時間がアマチュアレースの常軌を逸していた。

完走を目指せば、昼夜なく走ること必至という「ウルトラディスタンス」な事実が出走者に迫り、同時にセルフサポーテッドの難易度も距離に比例して高くなる。 およそ一般化しそうもない様式が、しかし瞬く間に世界中で受け入れられ、広まっていった。

のみならず、ややもすれば閉塞がちな業界に力強いトレンドさえ生み出しかねない勢いがあった。

競技団体やメーカー主導のスポンサードレースでは決してないにもかかわらず。 アマチュアサイクリストたちの想いを繋いで生まれ出たカルチャーである、と声高に言いたい。

サイクリングのエッセンシャルな魅力であるロングライドの範疇を、少し押し広げた「ウルトラディスタンス」と「セルフサポーテッド」のメッセージが、ここまでの可能性を秘めているとは。

僕はムネアツだった。

アマチュアサイクリストの、アマチュアサイクリストによる、アマチュアサイクリストのための超エクストリームな草レースじゃないか!と。

2 さきがけの「The Transcontinental Race」

2013年にロンドン発イスタンブール行、片道4200kmの旅としてスタートした「The Transcontinental Race(以下TCR)」は、ウルトラディスタンスの先駆けとして世界中のアマチュアサイクリストのハートに火をつけたと言って過言はなかろう。

極東の自転車オタク末席の僕も、見事に着火された一人だ。
TCRが、その後勃興する数多のイベントに影響を与え、雛形となった。
TCRについては、あらためてお伝えする。

話を戻そう。

ともかくTJOなるイベントの開催告知は、僕が待ちわびた生の「ウルトラディスタンス」そのものだった。
あらためて告知を確認すると、webサイトには出走日2015年7月18日、札幌出発とある。
具体的で理解可能な日本語の固有名詞、札幌、に現実感が帯びてくる。

これは見逃すわけにはいかない。

2015年の告知 The Japanese Odyssey Instagramより

そこから数ヶ月、続報を期待し公式サイトとSNSをアツく注視した。
しかし、待てど暮らせど情報更新がないまま、開催日に至っていた。
無情に過ぎゆく時間。
レースの経過も参加者についても何もわからぬまま、モヤモヤわだかまりを残し、無常に年は暮れてしまった。

結局、取材はかなわなかった。

随分とあと、ようやく主催者にインタビューした際にわかったことだが、第一回TJOの参加者総数は、主催者2名を含む6名。完走者は2名だった、と。日本初の”ウルトラディスタンス”レースの、いかにミニマムだったことか。

*2015年のコースは札幌から鹿児島まで3,200km、獲得標高25000m(編集部調べ)

2015年のコース The Japanese Odyssey official webサイトより

<続く>

次回
僕の「The Japanese Odyssey」元年へ

🚴‍♂️The Japanese Odyssey 公式webサイト
https://www.japanese-odyssey.com/

🚴‍♂️噂のThe Japanese Odysseyとは?
#01 ウルトラディスタンスという世界へ
#02 2015年、7月18日を目指す
#03 僕の「The Japanese Odyssey」元年へ
#04 クレイジーな設定

Text&Photo_ Eigo Shimojo

Profile

下城 英悟
1974年長野県生まれ
IPU日本写真家ユニオン所属
2000年フリーランスとして独立、幅広く写真・映像制作を扱うグリーンハウススタジオ設立
ライフワークとしてアンダーグラウンドHIPHOP、世界の自転車文化を追いかける