TVプロデューサー河瀬大作 Bike New York参戦記!
恋するニューヨーク vol.2
まるで魔術のように、それはスーツケースにおさまった。
ブロンプトンでマンハッタンを疾走する。そんな想像するだけでついつい顔がゆるみがち。
だって、自分のブロンプトンで、SOHOとか、セントラルパークとか走っちゃうんだから、まさに薔薇色のマンハッタンなわけですよ。「ことりっぷ」とか「マンハッタンでしたい100のこと」とか、ガイドブックも数冊買ったし、デニムジャケットも新調した。飛行機のなかで見るNetflixもiPadにダウンロードした。もう準備万端だ。
そんなある日、はたとあることに気づく。ところでこのブロンプトンをどのように海外に運ぶのだろうか。
国内であれば、輪行袋にいれてさえいれば、安全に運んでもらえる。しかし「ブロンプトン 海外輪行」とググってみると、みなしっかりとしたハードケースで運んでいる。輪行袋で運んだ猛者もいたけれど、クランプがまがっちゃったりしている人もちらほら。
続けてググると、専用のスーツケースというのがあるらしい。ブロンプトンの専門店でみたことあったことを思い出す。値段は4万円をこえる。かなりの出費だ。使うのは年に1度ぐらいだろうし、なかなか踏ん切りがつかない。
すると、ブロンプトンの女神がほほえんだ。
なんとレンタルがあったのだ。
「アイエルレンタル」という、主にスーツケースをレンタルしているショップらしい。在庫もあるし、値段も1週間借りても、数千円とリーズナブルだ。
早速申し込む。すると担当の方からメールが届く。
お世話になっております。アイエルレンタルでございます。
この度、ご注文いただきましたバイクケースB&W 折り畳み自転車(ブロンプトン)用ハードケースですが、カスタマイズされています自転車ですと入らない場合もございますので、お客様ご自身で今一度サイズのご確認をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
確かにスーツケースが届いたあとに、ブロンプトンが収まらないなんてことになったら、そこから次の一手を考えなければならないし、そうなったら日数的にニューヨークに間に合わない可能性もでてくる。早速、メージャーを持ってブロンプトンのサイズを測って、返信する。
私のは、フルノーマルです。特にカスタマイズはしていないです。
一応、ざっくりと測ってみたら、
585mm×575mm×270mm
これだと入りますでしょうか。
するとほどなく返信が届く。
河瀬様
当店のバイクケースの内寸を測ってみました。
約 625mm×610mm×280mm(スポンジ含む)でしたので、おそらく大丈夫かと思います。ご検討の程、よろしくお願いいたします。
「アイエルレンタル」
なんという心配り。松下幸之助は「商売とは、感動を与えることである」といったけれど、猛烈に感動した。商いは人である、と格言めいたことをいいたくなる。
そんなわけで、出発の前々日、スーツケースが届く。
ブロンプトンがピッタリおさまる。まさにジャストサイズだ。
こうなればなんの心配はない。
出発当日。車に旅行用のスーツケースとブロンプトン用のスーツケースを積んで空港へ。キャスターもついているので移動も楽々だ。
カウンターでチェックイン。スーツケースの中身が自転車であることを伝えると、一応中身を確認したりはするが、拍子抜けするぐらい簡単に預けることができた。丁寧に扱って欲しい旨を伝えると、ニューヨークでもラウンドテーブルではなく手渡しで対応してくれるという。
かくして、ぼくは人生初のブロンプトンとの海外旅へとでかけるわけだが、この直後、驚天動地のできことに見舞われることになるのを、ぼくはまだ知らない。
次回に続く。
Text & Photo_Daisaku Kawase
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Profile
河瀬大作/Daisaku Kawase
フリープロデューサー、(株)Days 代表、GlobalRide コミュニケーションディレクター
愛知県生まれ。ロードバイク歴16年、絶景ライド好き。仕事の合間を縫い、自転車担いで全国へ出かける。愛車はトレック。NHKでプロデューサーとして「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「おやすみ日本 眠いいね」「あさイチ」などを手がけたのち2022年に独立。番組制作の傍ら、行政や企業のプロジェクトのプロデュースを行う。