編集Mの、BIKE NEW YORKでゆるっと建築観光ライド

2024年5月5日にNew Yorkで開催された「TD FIVE BOLO BIKE TOUR(通称:BIKE NEW YORK)」に参加しました!
当日はあいにくの天気。スタート時の気温は10度、風速20km /h(寒!)、天気はどんよりとした曇り。それでも前日までは降水確率91%という予報で、朝から降らなかっただけマシという感じ。長袖のジャージーを重ねてもたまらない寒さで、レインコートを着用しても震えがくるほど。走ったら身体が温まることを祈りつつ、まずはレンタルバイクをピックアップしにマンハッタンの最南端、Battery Parkへ。日の出前の海風が吹き荒ぶ中、こんな条件の悪さで走っても楽しいのかという思いを抱きつつ、結局は得難い観光体験に心おどった4時間半…

目次

1,This is New York ! な街並み
2,The Harlem History
3,アートを感じる街、Brooklynへ

1、This is New York ! な街並み

早朝からのどんより気分を吹っ飛ばしたNYの魅力、それは建築群。著名な建築家によってデザインされた迫力ある高層ビルの数々。名を知られぬ設計者によるアパート。それら新旧の建物が至るエリア内で隣り合い、古いレンガ造りにはスタイリッシュな鉄骨の階段が備えられ、街路樹と小さな緑地、グラフィティが街を彩る。もう、これらを眺めるだけでThis is New York ! なムード。というわけで、今回はポタリング感覚でゆるゆる走りながらコース中に見つけたNYの印象的な建築をお届けします。

BIKE NEW YORKではこの日だけコース内の車道が自転車専用道路になるため、安心して走りながら街の景観を眺められる。マンハッタンを封鎖して走るのは最高、と聞いていたものの、今ひとつその魅力がわからないまま渡米、当日になってようやくこれか…!という感じになった。

全長約64kmのぐるり一周NYコース。ダウンタウン、アップタウン、ブルックリンなどエリアごとに街並みが変わり、多様な人々の生活や文化を垣間見られた
早朝5時45分。左手に見えるブロックを積み上げたような高層ビルは東京・青山のPRADAビルでお馴染みのHerzog & de Meuron(ヘルツォーク&ド・ムーロン)設計の「56 Leonard Street(56 レオナード・ストリート)」。レンタルしていた自転車をピックアップ後、スタート地点まで助走がてら移動した

ハドソン川を左手に感じながらスタート地点まで北上する。少し走ると右手にワールドトレードセンターの高層ビル群が見えてきた。

右手正面は「4 World Trade Center」、設計は槇文彦(日)、2013年完成。左奥は「3 World Trade Center」でフランスのポンピドゥー・センターの設計でも知られる故Richard George Rogers(リチャード・ロジャース/英)、2018年完成

32,000人ものライダーが走るため、出走時間は6つのグループに分けられていた。最初のスタートはVIPやメディア関係者。最終グループはその3時間後の出走となる。

スタートだけのためにこの詳細なナビゲーション!

私が所属していた第一グループのスタート地点は本サイトでもご紹介したAnish Kapoorのパブリック・アートを抱える通称「ジェンガビル」の前から。

ジェンガビルの本名は「56 Leonard Street(56 レオナード・ストリート)」。本コラム1枚目の写真左端に写っているビルの1階部分がこちらで、上部は60階建ての高層コンドミニアムとなっている
スタート地点のVIPエリアから「ジェンガビル」を見上げる
後方左側に見えるのはRobert A.M. Stern Architectsによる「30 Park Place」。82階建ての細長いタワーに189室の5つ星フォーシーズンズ・ホテルと157戸の最高級コンドミニアム・アパートメントが併設されている。マンハッタンのダウンタウンのタワー群の中でも重要なランドマーク。右側は前述の「3 World Trade Center」

2、The Harlem History

スタート後、ブロードウェイやセントラルパークを抜けて、ハーレム地区へ。この間にもエンパイア・ステート・ビルなどザ・ニューヨーク!な景観が詰まっていましたが自転車専用レーンの走行が快適すぎて写真を撮り忘れ…

ただ、そのうちにこのイベントはファンレースだったと思い直す。極寒の中でもとことん風景を楽しんで走りたいと思い、ペースダウンしダラダラ走り始めた。こんな走りも楽しめるのがファンライドの魅力だ。

セントラルパークを過ぎ、味のある雰囲気の街に差し掛かかり、ここがハーレムかと気づく。ヨーロッパからの入植者が来る前、この街は1600年代からネイティブ・アメリカンが住んでいたという。その後、アフリカ系アメリカ人の住民が増え、現在のような街になったのは1900年代に入ってからのこと。

1905年に劇場として建てられた「The Alhambra Ballroom」。ビリー・ホリデイなどのアーティストが公演を行い、スウィングダンスの大会が開催された。オリジナルの建物は、劇場建築家John Bailey McElfatrick(ジョン・ベイリー・マッケルファトリック)が設計。途中で他の大劇場やボールルームと同様に衰退期へ入ったが2003年にイベント会場として再オープンした。3階と4階にはボーリング場がある。
「Adam Clayton Powell Jr. State Office Building」/19階建のオフィスビル、州庁舎。1973年に完成。ニューヨークから選出されたアフリカ系アメリカ人初の下院議員アダム・クレイトン・パウエル・ジュニアにちなんで命名され、アフリカ系アメリカ人の建築事務所Ifill Johnson Hanchard(イフィル・ジョンソン・ハンチャード)がブルータリズム様式で設計した。ハーレムで最も高い建物と言われている。
1913年に建設された「Hotel Theresa」。洒落た内装とルイ・アームストロング、モハメド・アリを含むAリストの宿泊客で知られていた。マルコムXは1960年、キューバの指導者フィデル・カストロとここで会談している。現在はオフィスビルへと変化した

アメリカの歴史を感じる建物群を通り抜け、この後はBRONX地区へ。

この大会のためにハイウェイは片車線封鎖中。前方に見えるのはBRONX地区まで渡ったあと、折り返す途中で見えるハーレムエリア

ハーレムエリアに戻るThird Avenue Brideを渡り終わると、「Keith Haring !!!」と叫びながら道案内のジェスチャーをしている地元民らしき人に遭遇。近所のCrack Is Wack Playgroundにある現存するキース・ヘリング唯一の壁画を見せたいのだろう。ライダーたちに向かって叫んでいた。熱い。

マンハッタン島に戻った後はハーレム川沿いを南下しイースト川の上にかかる橋を渡ってブルックリン地区方面へ。

本大会のコース上では三つ目の橋Queensboro. Bridge(クイーンズボロ・ブリッジ)を渡る
橋から見える街並み。川向こうの工場は「Ravenswood Generating Station in Queens(クイーンズ区のレイベンズウッド発電所)」。周辺には集合住宅が広がる

3、アートを感じる街、Brooklynへ

ロング・アイランド・シティを走行中、そこはかとなくムードがある建物を発見。日本とアメリカを代表する彫刻家でNY在住が長かった故イサム・ノグチの庭園美術館(The Noguchi Museum)だった。急いでiPhoneを取り出し撮影するもナナメに…

60年代からノグチのアトリエとして使用されていた建物は古い工場を改築しているそう。ロング・アイランド・シティは金属工場が立ち並ぶ街だった。2019年にニューヨーク市とクィーンズ区が改装資金として450万ドルを出資し、それほどの価値があると認められたアーティスト及び建造物として現地でも話題になったという
WilliamsburgエリアのKent Avenue通りを南下。左はコンドミニアムビル。右はNYの大手建築事務所OADによる「ほとんどの住戸が角部屋」であることを意識したレジデンスタワー。市内含めデザイン性の高い数々の商用建築を手掛ける集団によるもの
ブルックリンの代表的な壁画作品の一つ「Above and Beyond」は、アーティストGera Lozano(GERALUZ)WERCのコラボ作品。財団から支援を受けての作品で、グラフィティアートが市民に受け入れられ、街を作り出している空気を感じる

ライドは残り1/4ほど。ふと見上げると、ブルックリン・ブリッジ・パーク脇のビル屋上にアーティストTom Fruin(トム・フルイン) のステンドグラス作品があった。

作者自ら集めたプレキシガラスなどのリサイクル材料で構成されたユニークなウォータータワー・シリーズの3作目。多くのビルの屋上に立つ、ニューヨークを象徴する給水塔へのオマージュとして制作されたこの彫刻は、公園内の見晴らしの良い場所で見ることができるらしい。何気ないビルの壁や屋上に力のあるアート作品を垣間見られるのはNYの醍醐味
高速道路の反対側に見えるのは1870年に設立されたSt. Michael’s Roman Catholic Church
ゴール直前の橋Verrazzano-Narrows Bridge(ヴェラザノ=ナローズ・ブリッジ)からBAY RIDGEエリアを眺める

STATEN ISLANDにゴール後は、船でマンハッタンまで移動。もちろん、自転車も持ち込める。

終始の悪天候で冴えない写真しか撮れなかったけれど、街に根づく新旧の建築デザインをライド中に堪能でき、NYのポテンシャルの高さを感じた

そして、船から降りてマンハッタン中央へ帰る途中のユニオン・スクエアにも。

中央のガラス張りの建物はもともと1870年前後にティファニーの本社として建てられた「15 Union Square West」。1950年代に大規模な改築が行われ、2000年代に再び改築され、今は高級アパートメントとして知られる。改築か新築かわからないほどの大掛かりなリノベーションぶりがすごい

私的BIKE NEW YORKの面白さは建築観光にありました。次回があるならばもっと事前リサーチして臨もうと心に決めつつ、偶然の出会いが宝の山のようにあるのはNYの為せる技とも思う。いずれにせよ、いいカメラを抱えて次はゆっくり走ってみよう。
ファンライドの楽しみがここにある。


🚲本日のライド

走行距離 約64km(40mile)
時速 約14km
*少し早めのポタリング。NYの街を俯瞰して見たい方はBIKE NEW YORKが超おすすめ!


Text_ Mayumi Kamura

*そのほか、BIKE NEW YORK 2024についての本格的なライド記事はこちらから ↓
丸山果恋:「マンハッタンブリッジを封鎖せよ!?」ニューヨーク5島を独占疾走レポート!

Profile

Mayumi Kamura
Global Ride編集者。得意分野はデザイン、アート、ファッションなどの視覚表現系。コロナ禍をきっかけに心身の健康に意識が向き、テニスをスタートしコンテンポラリーダンスのレッスンを再開した。Honolulu Century Ride 2023に参加後、ライド時のマインドフルネス感にすっかりハマり、自転車ファンとなる。

EVENT
FIVE BORO BIKE TOUR 2024
PHOTO ALBUM
Bike New York 🇺🇸

日本のGW真っ只中。今年もニューヨークの街中を駆け巡る「FIVE BORO BIKE TOUR 2024」(通称:Bike New York)が開催されました。晴天に恵まれた2023年度とはうってかわって、気温は10℃前後、早朝マンハッタンの最南端バッテーリーパーク付近のバイクレンタルエリアは海風が強く体感温度はもっと低かったように感じました。それでも午前7時30分、スタート地点に並んだ3万人のライダーの熱気が寒さを吹き飛ばしました。 BIKE NEW YORK 20245 May 2023/64km 目次 1. パケットピックアップ2. スタート地点3. ニューヨーク5つの島を巡るファンライド4. ゴール、そしてマンハッタンへ 1. パケットピックアップ 2. スタート地点 3. ニューヨーク5つの島を巡るファンライド 4. ゴール、そしてマンハッタンへ

#Photo Album
EVENT
NY自転車旅行記③
アメリカ最大の自転車エキスポ
BIKE NEW YORK EXPO

人気自転車系youtuber、けんたさんによるニューヨーク旅行記第3弾。 バイクニューヨーク2019に参加したけんたさんの、 ニューヨーク現地での動画を公開しました。 今回はイベント前日に行われるバイクニューヨークEXPOでの様子です。 JAPANブースにゼッケンを受け取りに来たけんたさん、 EXPOにはけんたさんの気になるグッズも多数販売されていました。

#Report
EVENT
2分で分かる!「バイクニューヨーク」

こんにちは。HONOLULU CENTURY RIDE 2023に続き、第二回目の「INFOGRAPHIC GUIDE*」をお届けします。*INFOGRAPHIC_視覚的にわかりやすいイラストやグラフなどを用いて情報を伝える手段 今回は今年の5/5(日)に開催予定の、通称「BIKE NEW YORK」について。このイベントはアメリカ・ニューヨーク市で開催される北半球最大のサイクリングイベントです。5つの区(BORO)を巡ることから大会の正式名称は「TD FIVE BORO BIKE TOUR」と名付けられ(TDはメインスポンサーであるTD Bankの頭文字)、全米のライダーが待ち焦がれる大イベントです。 初開催は1977年。当時は自転車の教育プログラムから端を発したイベントで、参加者は高校生と自転車クラブの会員による約200名でした。5つの区を巡り、距離は50マイルほど。それが翌年のニューヨーク市市長の交代に伴い自転車乗車が促進された影響で、走行距離は家族連れでも走りやすい40マイル(約64km/現在の距離)に制定されたそうです。「FIVE BORO BIKE TOUR」という大会名もこの年から制定されました。 2024年は第46回目の大会となります。現在の主催はニューヨーク市でサイクリングを推進する非営利団体「Bike New York」。コースの一般道や高速道路、橋をカーフリー(自動車通行止め)にするため、初心者や親子でも気軽に参加することができます。コースを見てみましょう。 出発はマンハッタンのダウンタウン、バッテリーパーク。6番街(Avenue of the Ameri […]

#New York