グラベルマニアが古代の旅路に乗る #02
〜熊野三山詣、極上のマグロ、サイクルトレイン〜

こんにちは、温玉ネギトロです。熊野古道・紀伊半島ライドの後半をお届けします。二泊三日のライドトリップを予定していた私たちは、すでに神々しく感じられる山々を眺め一日目を終えることができました。二日目は、いよいよ熊野本宮大社へ。熊野三山詣を目前にワクワクが止まりません。

目次

3. 山間を辿る
4. 紅い鳥居と赤身のマグロ

3. 山間を辿る

山道に突如現れた吊り橋

一日目は無料のキャンプ場で宿泊し、二日目は中辺路に沿うように走る林道を通って夕方には熊野本宮大社へ到着するように計画。ルート設計や補給の計画を考えるのも旅の醍醐味です。オフロードを含むルートではメカトラブルや通行止めに阻まれるリスクがオンロードと比べて非常に高いです。ルート設計のコツとしては自分の体力や脚力×0.5位の距離や時間で考えるのが良いでしょう。

木陰で一休み
手彫りの隧道

手掘りの隧道を通って山を越えることもしばしば。隧道がなければ山を迂回するか登る必要があるため、こんな険しい山中に穴を掘ってくださった先人に感謝をしながら進みます。

熊野本宮大社大斎原

熊野本宮大社へは暗くなる少し前に到達しました。

前傾姿勢で一気にラストスパート

本宮町を出る頃にはすっかり暗くなってしまったので、急いで目的地のキャンプ場まで移動します。8月中旬ということもあり、夜間も30℃を切らない熱帯夜です。本宮まで来るとかなり標高も低くなっており、アップダウンはないもののベタつく暑さが不快感を誘います。

4. 紅い鳥居と赤身のマグロ

清流熊野川

最終日は本宮と新宮の間にある小舟キャンプ場で星空を眺めながらキャンプを。そして熊野川を横目に新宮市まで南下します。壮大な山と山の間を通る熊野川の雄大な流れに心を奪われ、何度も立ち止まりました。川の恵みが険しい紀伊半島の命の源になっていると考えると畏敬の念を感じずにはいられません。

熊野速玉大社

熊野川を左手に見ながら30kmほど下ると、熊野三山の一社熊野速玉大社にたどり着きます。旅の安全を祈願して最後の一社、熊野那智大社を目指します。
久しぶりに海が見えるほど標高の低い場所まで下ってきたので、太陽からの照りつける暑さとコンクリートからの照り返しに苦しみました。キャンプ道具の荷物が重たく、またオフロードを想定して太いタイヤを選択しているので、バテないように休憩をしながら走ります。自転車をオンロードの装備に寄せるか、オフロードに寄せるかによっても走り心地や走破性も大きく異なってきます。いろいろ試してみることで自然と自分のライドスタイルや趣向も見えてくると思いますよ。

新宮市から国道42号を西へ進み、那智大社がある那智勝浦町へはひたすら海沿いを進みます。ゆっくりと進んでも余裕をもって那智勝浦町に到着。定食屋さんは連休ということもあり混雑で入れなかったので北郡商店さんでマグロを購入してお昼ご飯に することにしました。
せっかくだからと値段は見ずに豪快に中トロを選択。隣のスーパーでご飯だけ購入して自作マグロ丼の完成です。

自作マグロ丼&ハマチ丼

旅先で食べる旬の魚は思い出に残ります。トロトロの身と特製の醤油が絶妙に絡んで口の中で溶けていく。「美味い。」と言わずにはいられませんでした。5分もしないうちに完食。この瞬間に私の好きな港町ランキングの上位に那智勝浦が躍り出ました(他には氷見・根室などがランクイン)。マグロを目的としたグルメライドを企画して紀伊半島を回っても良いかも!?

八咫烏の灯籠が出迎える

海鮮丼をお腹の中で踊らせながら最後の目的地へヒルクライム。熊野那智大社は那智勝浦の町中から登った山の中腹にあります。車が非常に多く、気を遣いながら走らなければならず、暑さとお腹の海鮮丼も相まって景色を楽しむ余裕はあまりありませんでした。

那智の滝

八咫烏の灯籠に導かれながら九十九折りを少しずつ上っていきます。那智の滝が右手に見えればゴールももうすぐそこ。熊野那智大社の入り口が見えてきます。やったー!ようやくゴールです!

最後の階段

と思いきや、自転車を止めてからは長い階段が待ち受けています。斜面も急でけっこうしんどいです。ゆっくりと旅路を振り返りながら旅の終わりが近づいていることを受け入れる心の準備をします。

熊野那智大社へゴール!

15分から20分ほど階段を上り、ようやくゴール! 疲れのあまり座り込みそうになりますが、ぐっと膝に力を入れて堪えます。最後の階段がキツかったですが、これにて目的の熊野三山詣を達成です。後はゆっくりとお参りと胎内くぐりをして駅まで安全運転で降りましょう。

那智勝浦駅からサイクルトレインに乗車

熊野那智大社を出てからはゆっくりと帰路につきます。
今回は那智勝浦から和歌山駅まではサイクルトレインに乗って移動します。自転車をそのまま乗せられるのは非常に便利。輪行をする時間が短縮できるため、ぎりぎりまで那智勝浦の商店街を散策し、そのまま電車に乗せました。
公共交通機関と自転車を組み合わせることで旅の自由度が格段に向上します。
皆さんも是非試してみてください。

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輪行プロフェッショナルがお届けする輪行ガイド(国内編 #01)

🚲本日のコース



🚲温玉ねぎとろの記事

輪行プロフェッショナルがお届けする輪行ガイドシリーズ
● 海外編
● 国内編01
● 国内編02

グラベルマニアが古代の旅路に乗る
● 紀伊山地、熊野古道、オフロード
● 熊野三山詣、極上のマグロ、サイクルトレイン


Text_Negitoro Ontama

Profile

温玉ねぎとろ
大阪府堺市出身。会社員・ライター・ブログ「自転車旅行研究会」管理人。幼少期から自転車に旅の荷物を載せたキャンプツーリングを行っており、国内のほとんどの都道府県を走破。また、大学在学中は自転車サークルに所属しており、ソロで10カ国以上を自転車で来訪。輪行経験豊富。2023年には厳冬期北海道を自転車で縦走するなど、エクストリームなキャンプツーリングを行う。近年はロングライドにも力を入れており、2023年にはブルベでSRを取得。2024年のGWには1900kmのブルベも完走している。今後はPBPやLELの完走を目指しつつ、海外キャンプツーリングも積極的に行っていく予定。

TRIP&TRAVEL CULTURE
下町自転車散歩 #02
江戸・下町のレジェンド 北斎の名残をさがして(その1)

1856年。フランスの若き版画家ブラックモンは知人のコレクションの陶磁器を見せてもらう。陶磁器は当時海外との国交を禁じていた日本から輸入されたもので、おそらく西欧では希少なものであっただろう。しかし彼の目を惹きつけて離さなかったのは器ではなく、その包装紙だった。それは、葛飾北斎の『北斎漫画』の1ページ。絵に感銘を受けたブラックモンは、その後苦労して入手した『北斎漫画』をパリの画家仲間たちに広め、やがて北斎はフランスからヨーロッパで広く知られるようになる。 …という話は残念ながら創作といわれていますが、北斎が当時のヨーロッパ、とりわけクロード・モネやフィンセント・ファン・ゴッホといった若き印象派の画家たちに強い衝撃を与えたことは広く知られています。 海外では「The Great Wave」と呼ばれる富嶽三十六景の「神奈川沖浪裏」など、だれもが一度は目にしたことのある北斎の絵。日本が初めて芸術デザインを取り入れた現行のパスポートには富嶽三十六景から16~24作品が掲載され、神奈川沖浪裏は2024年秋からの1000円札の新札の図案となるなど、今や日本を代表する画家である葛飾北斎。そして何より本コラム「下町自転車散歩」的には、彼は生涯町絵師として地元を愛したお江戸下町っ子の大先輩でもあります。 本日は下町っ子の不肖の後輩が、北斎が生まれ暮らした墨田区を中心に、その人生の足跡を自転車で訪ねていきたいと思います。 目次  1. やがて葛飾北斎となる者、川の町に誕生(1歳~) 2. ティーンエイジャー(10歳~) 1、 やがて葛飾北斎となる者、川の町に誕生(1歳~) 誕生江戸と下総の国をつな […]

#Tokyo #Hokusai
TRIP&TRAVEL CULTURE
下町自転車散歩 #02
江戸・下町のレジェンド
北斎の名残をさがして(その3)

北斎の全盛期である後半生を自転車でたどる、北斎自転車散歩最終回。漫画、アートパフォーマンス、富岳三十六景、富士山への憧憬。本所地域から浅草地域を巡り、北斎の名残を探します。 目次  1. 「漫画」の生まれた日(50代) 2. その男、変わり者につき(60代) 3. The Great Wave(70代) 4. 絵と旅する男(80代) 5. 忘れられた巨人(90代) 『ドラゴンボール』、『Drスランプ』などを生み出した漫画家、鳥山明氏が2024年に亡くなり、世界中でその別れが惜しまれました。「漫画(Manga)」は世界でも共通語となった日本発のカルチャーですが、その言葉を生み出した人物をご存じでしょうか。 1、 「漫画」の生まれた日(50代) 55歳。依頼されて書き溜めたスケッチ集、『北斎漫画(海外では北斎スケッチ)』シリーズを刊行すると、これが予想外の大ヒットします。版元からどんなタイトルが良いかと問われた北斎は、「漫ろに(=自由に)書いた画なので、漫画がよい。」と名付けたそうです。「漫画」という言葉はこの時初めて誕生したそうなので、北斎はいわば漫画の名付け親ですね。 北斎の伝記を著した19世紀フランスの作家エドモン・ド・ゴンクールは北斎漫画を、「魔法じみたスナップショット」と評しています。 パフォーマー北斎なお、北斎は絵を公開制作するという現代アート的なパフォーマンスも行っていました。名古屋逗留の際には、本願寺名古屋別院にて、120畳(約186㎡)もの大きさの絵を描いたそうです。地面から見ている人々には何が描かれているかわからず、高い場所から見下ろしてようやく達磨の絵だと分か […]

#Tokyo #Hokusai
CULTURE
Circle of Cycling Friends
りんとも!
#05 山下晃和さん

ライドを楽しむ人を繋げます。CYCLING JAPAN創設者の河村健一さんからご紹介いただいた今回の「りんとも」は山下晃和さん。アウトドア系の雑誌やCMのモデルをされている傍ら、自転車好きが高じご自身でBike & Campというイベントを主催されています。仕事場への移動もほぼ自転車という山下さんに、ライドにまつわるお話を伺いました。

#RingTomo