1500kmの旅路
ロングライドイベント「London–Edinburgh–London」参戦記

2025年8月3日、世界50カ国から脚に覚えのある自転車乗りがロンドンからスコットランドのエディンバラに向けてペダルを回し始めた。

ロンドンからエディンバラまでの往路、約820km

London–Edinburgh–London(略称はLEL)。
これはロンドンからグレートブリテン島を北上し、スコットランドの首都エディンバラで折り返す約1500kmのロングライドイベント。5日半で走行することが求められます。
大枠では日本でも人気が上昇しているブルベと言われるロングライドイベントにカテゴライズされます。
LELは4年に一度の開催。Audux UKという団体が主催し、Paris Brest Paris(PBP・フランス)・1001 Miglia Italia(イタリア)・Madrid-Gijon-Madrid(MGM・スペイン)と併せてヨーロッパ4大ロングライドイベントして並べられます。

2025年の今年、私は記念すべき10回目のLELに参加することができたのでその様子をお届けします。

Text&Photo_Negitoro Ontama

ロンドン郊外のAPUライトル大学で大会受付

2025年8月2日
大会前日。
ロンドンから電車とバスで1時間20分ほどかけて受付があるARU Writtle Collegeへ。
ちなみに今大会ではロンドン市内のGuildfordという街、ARU Writtle Collegeの2会場に分かれてスタートします。ゴールはここ、Writtle Collegeです。
私はロンドン・ギルドフォードからスタート。
受付で自身の登録番号を伝えて、ボトル、Route Card、ナンバープレートを受け取り、準備完了!!他の参加者とも挨拶をして再びロンドンに戻ります。

受付で配布されたナンバープレート・ボトル・Route Card。帽子は迷わず購入

LELではチェックポイントでRoute Cardにスタンプを押してもらい、通過登録をしてもらうことで、通過証明となります。 Route Cardは無くしたり、汚したりしないようにしっかりと保管を。

途中のチェックポイントまで荷物の配送も可能。ポイント毎で異なるバッグが使用される
前日受付はブースも出展されており、ちょっとしたお祭りもよう
スタート前の記念撮影

2025年8月3日
朝4:30 、ロンドン市内の ギルドフォードにて。
8月でも長袖でちょうどいい気温。
早朝にも関わらず、多くのサイクリストが続々と集まってきます。
出発前の手続きも手短に済ませ、記念撮影。
無事にロンドンまで戻ってこられるのでしょうか。緊張と不安が入り混じります。
「忘れ物はないか?」「タイヤに空気は入っているか?」「充電は大丈夫か?」「天気は?風は?」スタート直前に不安になりながらも、ボランティアの方の大きな声が聞こえ、スタート地点へ。
1500kmの長い旅路が始まります。

朝5:00
大きな歓声と拍手と共にロンドンをスタート!!
夜明けのロンドンを無数の赤いLEDが点滅しながら奥へ奥へと伸びていきます。

スタート時の高揚感に釣られて、速い集団についていきそうになりますが、ここはグッと我慢。自分のペースで走ることに集中。
まずは最初のチェックポイントを目指します。

要所要所で小さな目印を辿りながら北上
ロンドンの郊外に出ると小刻みなアップダウンで丘を越える

これがイングランドを走るということ。

急な土砂降り、運よく茂みでレインウェアに着替える

「イギリスでは1日の間に四季がある。」と言われるほど天候・気温はコロコロと変わります。
ちょっと前まで晴れていても、1時間後には急な土砂降り。と思ったら10分後には雨が上がる。
目まぐるしく変わる天候に翻弄されながらも、少しずつ、でも確実に北上していきます。

チェックポイントに到着!!

何よりも先に通過チェックとスタンプ!
どれだけお腹が空いていても、トイレに行きたくても、これだけは絶対に忘れずに。

チェックポイントでは食事の提供も。しっかり食べて体力回復!

今回のLELでは食事代や仮眠ベッドの使用もエントリーフィーに含まれています。
ボランティアの方々が休みなく、料理を作り続けてくれたおかげで、しっかりとお腹を満たすことができました。
「食うものだけが救われる!!」

耳栓やアイマスクは忘れずに

チェックポイントは公民館や学校がベースとなっています。
大きな体育館にエアベッドがたくさん並ぶ様子はさながら野戦病院。
満身創痍のライダーはシャワーを浴び、体を休めて次のライドに備えます。

まだ眠い?
目を擦りながら身体を叩き起こして前へ進みましょう。

雨にも負けず。風邪にも負けず。前に進むライダー
田舎道を走る。立派な教会も
廊下に横たわる戦士たち。眠っているとボランティアの方が毛布をかけてくれた

初日はロンドンから320kmほど走行。予定よりもかなり早く目的のチェックポイントにつくことができました。
しかし、仮眠所はタイミング悪くFull。仕方ないので、チェックポイントで眠れそうな所を見つけて仮眠をとります。


8月4日

Maltonのチェックポイントではかわいい看板猫がお出迎え

二日目は体調が芳しくなく、雨の中、身体に負荷を掛けないよう休み休みペダルを踏み、約400km地点のMaltonの街に午前中に到着。
しかしここで事件が。

なんと、季節外れのStormがイングランド北部・スコットランド南部を直撃。
ここでイベントが一旦STOP。安全が確保されるまでは各自チェックポイントで待機をすることに。

幾度の延期が繰り返され、9:00にはチェックポイントについていたものの、気がつけば19:30まで待機をしていた

19:30。
Stormに対する最終判断が通知されることに。

ーー大会中止ーー
重い決断が全てのチェックポイントで言い渡されました。
しかし、Maltonの会場ではねぎらいの大きな拍手が。
それは重い判断を下した主催者、非常事態にも関わらず休みなく我々を受け入れてくれているボランティアの皆さんに向けて贈られたものでした。
私も思わず拍手。

Stormが嘘のような晴天。Daltonへ

私の初めての海外自転車イベントはまさかの中止となってしまいましたが、復路についてはStormの影響が少ないため、ゴールのライトルまではルートを辿って戻ることが可能に。
切り替えてイギリスライドを楽しみました。

復路のケンブリッジでは街中も通ります。歩行者に気をつけながら慎重に
ゴール!!

往復800kmの道のりを2日ほどかけてライトルに戻り、しっかりと完走?メダルを首にかけてもらうことに。

完走メダルとLondon Froris Londonシール。 早くも今回のStormの名前「FLORIS」
をもじってシール作成がされていた。ブリティッシュジョーク?

イベント中のStormと中止になった事態も今回が初めて。ある意味でとても貴重な経験となりました。

中止になったルート上ではトラックが横転するほどの強風が吹き荒れたとのこと。
お金や時間は帰ってはきませんが、時には撤退・切り替えることも必要です。身体は無事なので次回また挑戦をすることはできます。
まさに命あっての物種です。

海外のイベントでは予想外の出来事も起きることが多々ありますが、振り返るといい思い出になります。受け入れて前に進みましょう(自戒)。

次回は4年後にしっかりとロンドンでリベンジを果たしたいと思います!!

それではまた!

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Profile

温玉ねぎとろ
大阪府堺市出身。会社員・ライター・ブログ「自転車旅行研究会」管理人。幼少期から自転車に旅の荷物を載せたキャンプツーリングを行っており、国内のほとんどの都道府県を走破。また、大学在学中は自転車サークルに所属しており、ソロで10カ国以上を自転車で来訪。輪行経験豊富。2023年には厳冬期北海道を自転車で縦走するなど、エクストリームなキャンプツーリングを行う。近年はロングライドにも力を入れており、2023年にはブルベでSRを取得。2024年のGWには1900kmのブルベも完走している。今後はPBPやLELの完走を目指しつつ、海外キャンプツーリングも積極的に行っていく予定。

FEATURE TRIP&TRAVEL EVENT
Australia / Queensland Information

世界遺産に登録された100万年の熱帯雨林も見られる、豊かな自然を持つオーストラリア、クイーンズランド州。日本からの時差わずか1時間のこの地域は、地球上の他の場所では決して味わえない体験ができる場所。自然、自分自身、そして大切な人との絆を再発見することができます。もちろん、大自然を駆けるライドイベントも充実しています。 Podcastも放送中のクイーンズランド州政府観光局公式サイトはこちら:https://www.qeensland.com/jp/ja/home 1. ライドイベント2. ツアー3. レンタサイクル 1. ライドイベント Port Douglus Glan Fondo世界自然遺産に認定された「グレートバリアリーフ」と「クイーンズランドの湿潤熱帯地域 」(世界最古の熱帯雨林)を通るコースを、風を切りながら爽快に走るオーストラリアのライドイベント。2025年は9月14日(日)開催。https://portdouglasgranfondo.com.au/japanese/ 2. ツアー 2つの世界遺産をもつケアンズのツアーを提供HIS 3. レンタサイクル クイーンズランドでのレンタサイクルレンタサイクル Port Douglas Bike Shop & Hire

#Ride Event
FEATURE TRIP&TRAVEL
オーストラリア大陸、ケアンズへ100kmを走りに行く
〜自転車で楽しむクイーンズランド州の旅【前編】〜

*本ページはジェットスター航空のプロモーションを含みます 2025年9月、編集部はクイーンズランド州のケアンズへ。目的は、ライド&ランイベント「Port Douglas Gran Fondo(https://portdouglasgranfondo.com.au/)」に参加するため。今年で4回目となったこの大会のポイントは、なんといっても世界最大の珊瑚礁・グレートバリアリーフを有する太平洋海岸沿いのハイウェイコース! この連載ではイベントのために貸し切りされたハイウェイライドやクイーンズランド州の広大な自然、新鮮でおいしい食事や歴史遺産などを含め、ケアンズのライド旅前中後編でお届けします。今年の冬休みは、ジェットスターの直行便で行く南半球の大自然を自転車と共に堪能してみませんか? Text&Photo_Mayumi Kamura / Global Ride 1、オーストラリア、ケアンズって? ケアンズ市はオーストラリア北東部クイーンズランド州に位置する人口約15万人の熱帯都市。赤道に近く年間を通して温暖で、平均気温は25℃前後。世界遺産のグレートバリアリーフや世界最古の熱帯雨林への玄関口として知られています。リゾートホテルやマリンアクティビティが充実し、観光拠点としても人気。都市機能と自然探訪が両立する街は、自転車旅の拠点にも最適です。 大自然の中にあるケアンズ市は観光都市として賑わう一方、市街地を抜ければ本格的なライド環境が広がります。北へはノーザンビーチズ沿いの海岸線ルートが伸び、青い珊瑚海を横目に快走可能。内陸へ足を延ばせば、標高400m超のキュランダ高原へ続くヒルクライ […]

#Queensland
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*本ページはジェットスター航空のプロモーションを含みます 2025年9月、Global Ride編集部がライド&ランイベント「Port Douglas Gran Fondo」の参加取材で向かったのは、クイーンズランド州にあるケアンズ国際空港。現地時間で朝5時前、入国ゲートをくぐると、世界自然遺産の珊瑚礁や熱帯雨林を見るため日本からのツアーでいらしたお客様で大賑わい!機内で寝て、早朝に到着するジェットスターの直行便は大人気。到着後はバスやレンタカーで目的地へ向かい、ゆったりと初日を楽しむことができます。時差もたったの1時間。スポーツイベントに参加される方はなおさらストレスフリーで体調を整えられます。 ケアンズ国際空港到着後、私たち編集部は、同じく「Port Douglas Gran Fondo」に参加されるAyanoさん、Yoheiさんとポートダグラスのエントリー会場で待ち合わせることに。ブリスベン在住で建築事務所を主宰するお二人は、ライダーでもあり、自転車から都市や自然を観察されています。イベントとこの土地の見どころ紹介はお二人にお任せすることにしましょう。中編はイベント初参加のAyanoさんによる、ケアンズと「Port Douglas Gran Fondo」のレポートをお楽しみください。 Text_Mayumi Kamura / Global Ride 1、ポートダグラスに至る二つのルート ブリスベン在住の私たちは、ブリスベン国際空港から大会前日の早朝にケアンズ国際空港へ到着。ケアンズからポートダグラスまでは約70㎞。当初は、自転車で移動できないかとルートを模索していましたが […]

#Australia