Travis Counsell氏インタビュー
誰もが自転車ライフを楽しめるハワイへ

9月の最終日曜にあたる29日。今年で41回目を迎えた「ホノルルセンチュリーライド(以下、HCR)」が終了しました。

GR編集部スタッフがたくさんの参加ライダーと言葉を交わした中で、数名の方から頂戴した質問がこちら。「こんな最高なライドイベントは、そもそもどのような団体が主催しているのか?」

ということで、本大会を主催する団体・Hawaii Bicycling Leagueのエグゼクティブディレクターを務め、自身も自転車を愛してやまないトラヴィス・カウンセル(Travis Counsell)氏に、インタビューを行いました。最後に参加者の方へのメッセージも頂戴しましたのでどうぞご覧ください。


_Global Ride編集部(以下GR)大会概要を改めて。

_Travis氏(以下敬称略、Travis)本大会はハワイで最大規模のロングライドイベントです。1981年に初開催し、41 年にわたる歴史があります。イベントの主催は私たち「Hawaii Bicycling League(以下HBL)」で、非営利団体です。2003年より日本での受付を開設し、HCR ジャパンオフィスであるHM-Aと協力し、大会を運営しています。主要なスポンサーにJALが入っているので日本からの参加ライダーも多いです*1。

*注1_ホノルルセンチュリーライドと日本の深い関係は別記事でお届けします。お楽しみに!

_GR  HBLの活動理念は?

_Travis 「Share the Road (道路の共有)」。 Health、Recreation、Transportの3つをキーワードに、ホノルル及びハワイが自転車と歩行者にとってより優しい場所になるように活動を続けています。

HCR大会当日は、可能な限り車道も広く使いライドできる工夫がされている

地元の住民の方々と観光者へ向けて/For Residents and Tourists

_GR それは地元の住民の方々に向けての活動でしょうか。

_Travis ローカルの住民と観光客の両方にとって、です。ホノルルは世界有数の観光都市。とはいえ、居住者もたくさんいますので、両者が快適に移動し利用できる道路環境づくりを目指しています。特にここ(ホノルル)はリタイアした高齢者が多く住んでいます。観光客が行き交う街中であっても自転車に乗って外出できるようなポジティブな活動環境を少しでも実現し、長く健康であって欲しいと願っています。

_GR そういう意味では、大会へ参加した日本人ライダーから「ホノルル(ハワイ)は自動車の運転手がみな優しい」と感激の声をよく耳にします。

_Travis そうかもしれません。HBLはイベントや地道な活動を通して、市民へ安全な自転車通行に関する啓蒙を続けています。例えば、擁護団体と共に行政へ働きかけてハワイ州に法律を作りました。「自転車を追い越す際は、車は自転車から3feet(約90cm)離れなければいけない」というものです*2。公共の安全を保つことで自転車の利用者が増え、利用者は身体を動かすことで健康促進となり、さらに自動車公害も減る。良い循環と言えるでしょう。

*注2_アメリカの他のいくつかの州ではすでに制定されている法律でハワイ州は遅め(Travis談)

ライダーから距離を保ち走行する車両は大会だけではなく日常的な風景

輪行せずに楽しめるホノルル/Honolulu, where you can enjoy biking

_GR 昨年よりもシェアサイクルの「biki」ステーションが広がっているようです。HBLとの関係は?

_Travis bikiはBikeshare Hawaiiという非営利団体が立ち上げたシステム。ハワイの住民と観光客を対象に健康的な交通手段を提供することが目的で、HBLと似ています。そのため、一緒に何か活動できないか模索しています。ロードバイクで通勤、マウンテンバイクでレジャー、bikiで市内観光など、自転車でできる選択肢が増えるのは良いことです。

_GR あなたも使いますか?

_Travis もちろん。移動したい距離が1マイル(約1.6km)圏内であれば、徒歩やUberよりも圧倒的に便利です。システムが日本語対応していることもあり、Kaka‘akoなどで日本人観光客が利用しているのをよく見かけます。ウォールアートで有名なエリアですね。もちろん、地元の人も利用しています。

HBLでは自転車で回る観光コースを創案して案内しており、サイトからダウンロードできます。
リンク: Oahu Bike Map

日米の交通ルールでは、走行方向が左右逆など大きく違うので、その内容に関しては日本語セーフティガイドもご用意しています。
リンク: Visitor Safety Guide

*ホノルルの道路がライダーにとっても優しいことについて
リンク: https://globalride.jp/trip-travel/kawase_hawaii24_01_jp/

_GR それは知りませんでした!もっと宣伝しないと。宣伝といえば、HCR以外にもホノルルにはライドイベントがありますね?

_Travis いくつかありますが、Northshoreで4月に行われる「ハレイワ・メトリック・センチュリーライド(Haleiwa Metric Century Ride)」などでしょうか。参加者はほぼ地元民、かなりローカルな大会で、観光客のニーズに対応する予定はあまりありません。でも、どなたでもウェルカムですよ。
リンク: Haleiwa Metric Century Ride

自転車で喜びを!/Joy by Bicycle !

_GR あなたは以前にはバイクショップを経営し、交通や道路に関するボランティア団体活動も続けてこられて、自転車が大好きと伺いました。本大会の運営に関わりどのようなことが喜びですか?

_Travis 初めてのHCRへの参加はJALパックの仕事、ツアーメンテナンスでした。大変なことはたくさんありましたがとても有意義な経験でした。多くのライダーが自転車に乗って楽しそうに、エキサイティングしている様子を見るのが嬉しいです。それはNPO団体や大会の運営側となった今でも変わりません。自転車が好きな身としてはこのような仕事に関われて本当にラッキーだと思っています。

_GR 9年後の2033年、HCRは開催50回を迎えます。抱負はいかがですか?

_Travis そうですね! 5000人規模の大会を目指したい。アメリカ、ハワイ州、日本、世界が協力しあって自転車を通してハワイを楽しみ、ハワイを祝うライドイベントを目指します。そのためにショートコースなどもたくさん作り、スキルやレベルに関係なくさまざまな人が参加できる企画も考えています。

スタート直後を見守るTravis氏

_GR それは楽しみです。最後に、日本からHCR2024へ参加したライダーへ向けてメッセージを。

_Travis 日本のライダーの方々からすると、とてもチャレンジングな時期と環境だったと思います。そんなことがありながら強いスピリットを持ち、初めて、または何回目かの参加をしてくれたことに心の底から感謝しています! 来年、また必ずお会いましょう。


Text_Global Ride Editorial Team

🚲ホノルルセンチュリーライドに関する記事
https://globalride.jp/category/event/world/hcr/

EVENT
ホノルルセンチュリーライド2024 ライダーインタビュー企画 ハワイで感じる風、そして… 〜なぜ、ハワイで自転車に? 中級者(出走2回目以上)編~

ホノルルセンチュリーライド(以下HCR)は、ハワイで最大の自転車イベント。そしてそれは、ライドをはじめ、フルマラソン、トライアスロンなどさまざまなイベントに参加してきた人たちが「人生に一度は参加したい」と思わせる終着点のようなイベント。HCRライダー企画の第3回では、今回で2回目以上の出走となる方々にインタビュー。「1回では足りない」、「好きな人たちとも共有したい」……。HCRに何度も来たくなるその魅力を聞きました。「あなたはなぜ、ハワイで自転車に?」 目次 1 とにかくボランティアスタッフのムードが最高/Yoshiさん、Junkoさん2 自転車部の仲間とホノルルを駆ける/小阪修さん、高芝恵理子さん、植田久美子さん3 いつも笑顔で、いつも二人で/遠藤貴博さん、研谷美月さん4 3回目だからこその風景を楽しみたい/原田真さん 1 とにかくボランティアスタッフのムードが最高/Yoshiさん、Junkoさん 「ホノルルセンチュリーライドの魅力は、参加者もスタッフも一体感があり、参加者のマナーが良いところ」と話してくれたYoshiさんとJunkoさん。 ほかの大会とも比較できるということは相当いろいろな場所で走られているとお見受けし尋ねたところ、お二人ともトライアスロンの常連者=トライアスリートだった。日本の大会だけでなく、ハワイでもここ10年ほど毎年参加しているという。そして、今年は5月のホノルルトライアスロンから間を置かず、9月開催のこの大会も参加を決めてしまった。1年に2回もハワイへ(贅沢すぎる?)…と逡巡しながら締め切りのギリギリまで考えた末に、ライドの爽快感を振り切れず申し込ん […]

#Interview
EVENT
ハワイ、この世で最もライドすべき場所

今回、僕は確信した。ホノルルセンリュリーライド(以下、HCR)は、地球上で最も最高のライドだ。 ハワイを走るのは去年に続き、今年で2度目となる。Global Ride(以下GR)のコミュニケーションディレクターとしてどう関わるべきか、ずっと考えあぐねていた。去年は、160キロを完走しようと夢中で走った。そもそも海外でロードバイクに乗るのは初めてだったし、すべてにワクワクした。 しかし今年は2度目。あの感動は味わえないだろうと思っていた。だからあえてライダー目線ではなく、GR編集チームの車に乗ってフォトグラファーとしてHCRの様子やライド中に見える絶景などを写真で切り取ることに専念しようと思っていた。 ところが本番当日。気がつけば、どしゃ降りの雨のなかペダルをこぎながら、身体中の全細胞がザワザワするほどの喜びを味わっている自分がいた。 いや、すごすぎるよ。ハワイ。2度目にして、これほどまでの感動を味わえるとは思ってもみなかった。 火山が生み出した雄大な景色、ハワイ特有の気候、心優しき人々、そのすべてが、他では得難いライド体験を生み出す。 そのワクワクはスタート前から始まる。本番当日の朝5時すぎ。カピオラニ公園に、世界各地からライダーたちが集まってくる。その顔にはこれから始まるライドへの期待がみなぎっている。ワイキキ特有の乾いた風がさあーっと吹く。なんという幸せな光景なのか。今回は走らないと決めていた自分も、ワクワクしてきて、身体がむずむずする。 昇る朝日が、海を、山を、ライダーたちを黄金色に染め上げていく。そんな中、ペダルを漕ぐ音、タイヤがアスファルトを滑る音だけが響く。日の出と […]

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