グラベルマニアが古代の旅路に乗る #01
〜紀伊山地、熊野古道、オフロード〜

こんにちは、温玉ねぎとろです。コロナ禍前にスペインのカミーノを自転車で巡礼した際に、スペイン人ハイカーから「熊野古道は行ったのかい?是非行くべきだよ!」といわれたことをふと思い出しました。海外のハイカーの間ではスペインの「カミーノ巡礼」「四国八十八カ所巡礼」「熊野古道」はとても人気があります。私は過去に前者2ヶ所については自転車で旅をしたのですが、熊野古道・紀伊半島は走ったことがありませんでした。地元の大阪から近いようで遠い、過酷な自然を育む紀伊山地。今回は古代の参詣道「小辺路」「中辺路」「大辺路」をベースとして、それに沿うように自転車でも走行可能な林道を辿り熊野三山を巡るルートをライドしました。

注)サイクリストとハイカーが共存し、持続的な観光を目指しているため、熊野古道は自転車通行ができません。本レポートでは熊野古道に沿った林道を走行しています。

目次

1. 夏ライドは高地に限る、標高500mの出発点
2. スカイラインの絶景VS過酷な小辺路

1. 夏ライドは高地に限る、標高500mの出発点

極楽橋を降り組み立てる

自転車で高野山へ行くには、南海電鉄の極楽橋駅で下車するのが便利。大阪の難波から1時間40分ほどで到着します。

今回は友人と二人で走りました。オフロードを走る際は動物や遭難の危険もあるため、なるべく仲間と一緒の走行を心がけます。8月の中旬ということもあり、暑さを警戒していましたが、極楽橋駅(標高535m)まで来ると涼しい風を感じます。

高野山入口

極楽橋駅からは旧高野街道に併走するオンロードを走行。旧高野街道などの石畳の道は自転車が禁止されている場合もあり注意が必要です。オンロードとはいっても4kmほどの距離で一気に300m以上上昇するハードな道ですが、木々の間をかき分けていくような道を通るため、直射日光を浴びることなく涼しさを感じるルートとなっています。

ざるそばは塩分もとれて夏場のライドに最適

高野山に着いてからはまずコンビニで食事と補給を 。ルートにもよりますが、今回の予定ではこれ以降、コンビニもなければ食事ができるお店もほぼないので、しっかりと買い物を済ませます。紀伊山地を旅する際は飲み物も含めた食料戦略をしっかりと練ってください。自販機もなかなか見つからないので注意が必要です。また、お店の営業時間も短い場合が多いので事前のリサーチが重要となってきます。

2. スカイラインの絶景VS過酷な小辺路

龍神スカイラインではサイクリングルートも充実

高野山を出発してからは国道371号を通り龍神スカイラインを上っていきます。標高800m付近の高野山からさらに400mほど登り、紀伊半島を一望できる尾根沿いの絶景を堪能。

標高が高く、8月の中旬ながら気温は最高でも28℃程度。尾根沿いで開けた道が多く涼しい風が通るため、夏場の登りでも暑さに苦しむことはありませんでした。

フランスから来たハイカー

龍神スカイラインは熊野古道の小辺路と併走・交差します。そのため、山の中の入り組んだ国道にも関わらず歩行者や ハイカーにも出会うことも多いです。ここでは フランスから来たハイカーと出会いました 。

ツーリングマップル・国土地理院地図は必需品

今回の私たちの旅のコンセプトはオフロードで熊野三山を目指すこと。熊野古道は自転車で走れないので、他のルートを探して 設定していきます。

紀伊山地ではたくさんの林道・オフロードが点在しているため、オフローダーは道選びに困ることはないと思います。ただ、私有林が多いため通る際には注意が必要です。通行禁止の道もありますので気をつけましょう。 一方でこれは紀伊山地に限った話ではありませんが、オフロードは年々舗装化が進んでいるため、いつまでも同じ景色を見られるというわけではありません。チャンスを逃さずに!

奈良県の野迫川村の林道を通ります。
林道を目指して龍神スカイラインから一歩外に出ると急勾配・急カーブの坂道だらけです。急峻な山に暮らしてきた人々の苦労を「道」から体感することができます。

急勾配のオフロードを進む

道中には携帯の電波も通じなければ近くに民家や建物もありません。それほどに紀伊山地は過酷で、山深い地形を形成しています。
そのため紀伊山地のオフロードを走行する際には、事前にしっかりと下調べを済ませ、スマホなどの電子機器だけではなく、紙の地図などを読み解く準備と能力も必要となってきます。

ガードレールが土で埋まっている道。ネットや地図の情報だけではなく、現地の人からも情報を集めるなども必要
開けたカーブで一休み

時折現れる湧き水で顔や体を冷やして一休み。熊鈴と砂利道を走る走行音だけが辺りに響き渡る贅沢な時間を堪能しました。世界に自分たちしかいないような感覚。都会の喧騒もオフロードは忘れさせてくれます。

紀伊山地を一望

再び山の尾根まで戻ります。傾く夕日を背にしながら、遠くまで続く紀伊山地を静かに眺めます。1200年前に高野山を開いた空海や自転車がない時代の人々が見た景色と同じ景色を見ていると思うと歴史のロマンを感じます。

<続く>

🚲本日のコース

次回
グラベルマニアが古代の旅路に乗る #02 
〜熊野三山詣、極上のマグロ、サイクルトレイン〜

🚲温玉ねぎとろの記事

輪行プロフェッショナルがお届けする輪行ガイドシリーズ
● 海外編
● 国内編01
● 国内編02

グラベルマニアが古代の旅路に乗る
● 紀伊山地、熊野古道、オフロード
● 熊野三山詣、極上のマグロ、サイクルトレイン

四国一周1000kmをライドする
● 〜グラベルオタクが行くウルトラディスタンス〜

なぜ自転車で宗谷岬へ?
● 日本最北端で迎えるそれぞれの新年

マキビシにご注意!
● 忍者の里へショートサイクリング

鯖を食しに若狭湾まで!
● 鯖街道親子ツーリング


Text_Negitoro Ontama

Profile

温玉ねぎとろ
大阪府堺市出身。会社員・ライター・ブログ「自転車旅行研究会」管理人。幼少期から自転車に旅の荷物を載せたキャンプツーリングを行っており、国内のほとんどの都道府県を走破。また、大学在学中は自転車サークルに所属しており、ソロで10カ国以上を自転車で来訪。輪行経験豊富。2023年には厳冬期北海道を自転車で縦走するなど、エクストリームなキャンプツーリングを行う。近年はロングライドにも力を入れており、2023年にはブルベでSRを取得。2024年のGWには1900kmのブルベも完走している。今後はPBPやLELの完走を目指しつつ、海外キャンプツーリングも積極的に行っていく予定。

TRIP&TRAVEL
広島の知られざる名所 東城町・帝釈峡を走る

関西地方を中心に活動している温玉ねぎとろです。とにかく走るのが好きで地元ライドから四国一周、日本縦走ブルベまで縦横無尽に走った結果、「道あるところに絶景あり」を噛み締める今日この頃。今回は数多ある日本のライドコースの中でもニッチかつ自然豊かで歴史探索も堪能できるコースをライドしてみました。建築好きな方もぜひ。 広島県東部庄原市東城町へ! 目次 1. 交易路のなごり2. 江戸から継がれた饅頭の味3. 国登録文化財の近代和風建築「三楽荘」4. カルスト大地が織りなす名勝の数々へ 1. 交易路のなごり 広島県東部庄原市東城町はカルスト台地にダイナミックな自然が広がる帝釈峡があり、かつての山陽、山陰を結ぶ交易路として栄えた軌跡が残る町。鳥取県と岡山県に面する中国山地の中央、険しい山中にあります。 車やレンタカーの場合は中国道東城ICへ。岡山IC、広島ICからは約90分。福山西ICからは約80分。鉄道では芸備線東城駅を下車。岡山駅から2時間30分・広島駅から3時間で到着します。 かつて東城町は戦国時代である1500年代の前半に築城された五品嶽城(ごほんだけじょう)を中心に、城下町として、また山陽と山陰を結ぶ「たたら製鉄」の交易路として栄えました。 現在は東城川を中央に東岸は幅員の広い道とショッピングセンターが建ち、西岸はかつての城下町の面影を残す中心街です。今回は西岸の中心街をゆっくりとサイクリング。 日曜日の昼下がりでも人影はまばら。趣ある商店街を友人と二人占めです。今回、この商店街を訪れたのには理由があります。 2. 江戸から継がれた饅頭の味 竹屋饅頭店。ここが以前から気になっていま […]

#Manju #Takeya
TRIP&TRAVEL
大阪・関西万博への隠れアクセス!?
シェアバイクでEXPO2025へライドオン!

ロングライドからオフロード、時にはポタリングも!?こんにちは、温玉ねぎとろです。普段投稿している記事ではオフロードやロングライドが多いですが、自転車と一緒に街へ溶け込むようなポタリングも大好物。 今回は私の地元で開催中の大阪・関西万博へシェアサイクルで向かいたいと思います。実は、万博会場へは自転車でもアクセスできちゃうのです!サイクリストのみなさんも、この記事を見ればバッチリOK!大阪・関西万博会場の夢洲まで自転車でライドしていきたいと思います。(マイバイクを使用される場合は前日までに駐輪場の予約が必要なため注意が必要です)https://www.transport.expo2025.or.jp/route/bicycle/ スタート地点は関西国際空港からもアクセスが容易な南海電鉄なんば駅。前関西空港から南海本線で約45分。新大阪駅から大阪メトロ御堂筋線で約19分、道頓堀やアメ村などが有名です。 今回私が使用したのはdocomoのライドシェア自転車。3段変速とバッテリーがついているため、スイスイ進みます。大阪市内では至る所に貸出・返却用のポートがあるため、どこからでも乗り始めることができて非常に便利です。https://docomo-cycle.jp/ 訪日観光客の方のレンタル方法はこちら 難波駅前には御堂筋に合わせて、サイクリングロードが整備されています。歩行者も多いのでゆっくり注意しながら進みましょう。 肥後橋交差点。いわゆる大阪のビジネス街です。大きなビルの谷間をすり抜けるように進んでいきます。 琵琶湖から流れる淀川を辿り、もう少しで長い旅路の終着点、大阪湾へ合流します。 […]

#Nanba
FEATURE TRIP&TRAVEL
日本最高峰の神社、伊勢神宮。
神々の山を巡る。

日本には数多くの神社仏閣があります。その中でも三重県にある伊勢神宮はとても大切な存在です。今回は歴史と文化に深い結びつきのある伊勢神宮をめぐる約20キロのルートをご紹介します。スタートは国際空港であるセントレア(中部国際空港)。船で三重県に渡り、伊勢神宮を経由してゴールの鳥羽駅へと至ります。 伊勢は神々の国とも言われます。途中、いくつもの鳥居に出合うでしょう。鳥居は神仏と人間の世界との結界を示すもの。鳥居をくぐる際は一歩手前で立ち止まり、一礼して参拝しましょう。それでは日本の文化を堪能する伊勢神宮ライドへ出発です。*神社の境内は自転車を降りての参拝がマナーです 目次  1. セントレアから港まで 2. 高速船でなぎさまち(津)へ 3. 自転車旅の始まりは津駅 4.やっぱり名物の伊勢うどんを! 5.伊勢神宮外宮へ参拝 6. 伊勢神宮内宮で神秘に触れる 7. 伊勢の門前町で遊ぶ 8. 300年の歴史を戴きます 9.ゴールの鳥羽駅へ 1. セントレアから港まで 旅のはじまりは愛知県のセントレア空港。荷をほどきたいのはぐっと我慢し、このまま陸路ではなく高速船を使って三重県の津市の港、「津なぎさまち」を目指しましょう。ところで「津」は「船着き場」という意味なのだとか。津が着く地域を思い浮かべると水辺が多いですね。さて、セントレアと津を結ぶのは片道45分の「津エアポートライン」。荷物をピックアップしたら公共の交通機関の乗り場があるアクセスプラザに向かいましょう。そこから「高速船のりば」の表示に沿って進んでいけば10分ほどで到着します。 2. 高速船でなぎさまち(津)へ 「津エアポートライン […]

#Mie #Gourmet