日本最高峰の神社、伊勢神宮。
神々の山を巡る。

日本には数多くの神社仏閣があります。その中でも三重県にある伊勢神宮はとても大切な存在です。今回は歴史と文化に深い結びつきのある伊勢神宮をめぐる約20キロのルートをご紹介します。スタートは国際空港であるセントレア(中部国際空港)。船で三重県に渡り、伊勢神宮を経由してゴールの鳥羽駅へと至ります。

伊勢は神々の国とも言われます。途中、いくつもの鳥居に出合うでしょう。鳥居は神仏と人間の世界との結界を示すもの。鳥居をくぐる際は一歩手前で立ち止まり、一礼して参拝しましょう。それでは日本の文化を堪能する伊勢神宮ライドへ出発です。
*神社の境内は自転車を降りての参拝がマナーです

目次

 1. セントレアから港まで
 2. 高速船でなぎさまち(津)へ
 3. 自転車旅の始まりは津駅
 4.やっぱり名物の伊勢うどんを!
 5.伊勢神宮外宮へ参拝
 6. 伊勢神宮内宮で神秘に触れる
 7. 伊勢の門前町で遊ぶ
 8. 300年の歴史を戴きます
 9.ゴールの鳥羽駅へ

上空から見える中部国際空港。伊勢湾を中心に愛知県から三重県が見渡せる

1. セントレアから港まで

旅のはじまりは愛知県のセントレア空港。荷をほどきたいのはぐっと我慢し、このまま陸路ではなく高速船を使って三重県の津市の港、「津なぎさまち」を目指しましょう。ところで「津」は「船着き場」という意味なのだとか。津が着く地域を思い浮かべると水辺が多いですね。さて、セントレアと津を結ぶのは片道45分の「津エアポートライン」。荷物をピックアップしたら公共の交通機関の乗り場があるアクセスプラザに向かいましょう。そこから「高速船のりば」の表示に沿って進んでいけば10分ほどで到着します。

津エアポートライン

2. 高速船でなぎさまち(津)へ

「津エアポートライン」のターミナルでチケットを買い、上船します。定員約100名の安定感のある船はゆっくりと港を離れます。コンテナを積み下ろしする大きなクレーンを眺めながら短い船旅へ。快適な船内で休息をするのも良いですが、30ノット(時速56km)で進む高速船での船旅はあっという間に終わってしまいます。

細長い三重県のほぼ中央に位置する津市「津なぎさまち」に到着

3. 自転車旅の始まりは津駅

なぎさまちから津駅へはタクシーかバスで向かいましょう。日本で一番短い駅名の津駅から伊勢市駅は近鉄特急ビスタカーを利用し乗車時間は約30分です。さあ、ようやく今回の自転車旅のスタート地点に到着です。伊勢市駅から伊勢神宮の外宮(げくう)、内宮(ないくう)を経て、ゴールの鳥羽駅へと向かいます。
伊勢市駅のJR側出口には伊勢市観光案内所があります。また、手荷物預かり所も近くにありますので伊勢志摩駅に戻ってくる旅程の方はこちらで荷物を預かってもらいましょう。この手荷物預かり所ではシティサイクル、電動アシスト自転車のレンタルも行っています。

写真提供 (公社)伊勢市観光協会

4. やっぱり名物の伊勢うどんを!

もしお腹が空いていたら伊勢うどんがおすすめです。伊勢うどんは普通のうどんの2~3倍の超極太麺。腹持ちが良いことから、江戸時代から旅人に愛されてきたそうです。駅近くの『名代伊勢うどん山口屋』は昭和初期創業。地元や旅人に愛され続けている名店です。たまり醤油の黒い濃厚なタレと太くて柔らかいうどんをお腹に入れたら出発です。

巡礼者は長旅で疲れているため胃に優しいやわらかいうどんができたと言われている

5. 伊勢神宮外宮へ参拝

駅に戻ったら、まずは伊勢神宮外宮(げくう)を目指しましょう。神宮のお祭りは「外宮先祭」と言い、まず外宮から行われます。お祭りの順序にならい、まずは外宮から内宮の順にお参りするのが昔からの慣わしです。伊勢市駅のJR側出口から県道201号でまずは足慣らし。

しばらくすると右手に森のようなものが見えてきます。こちらが伊勢神宮の外宮です。正面入り口奥に駐輪場があります。ここからは歩いて参拝しましょう。参拝は朝5時から可能ですが、参拝停止時間は季節によって異なります。代表的な見どころを回ると外宮は約30分、内宮は約60分かかりますので、時間配分に注意してください。

神域の入口には防火のために作られた堀川が流れ、火除橋がかけられています。⼿⽔舎(てみずしゃ)で参拝の前にお清めをしましょう。奥に進むと衣食住を始め産業の守り神である豊受大神宮(とようけだいじんぐう)をお祀りする正宮。その手前には前回の遷宮まで御殿が立っていた古殿地(こでんち)があります。古殿地は次の遷宮まで静かにその時を待つ、とても神秘的な場所です。

伊勢神宮外宮の豊受⼤神宮奉納舞台

参拝後、左側に見える銅板葺(どうばんぶき)の建物は外宮神楽殿。こちらではご祈祷や、お神札(ふだ)・お守り・御朱印などを受けることが可能です。

6. 伊勢神宮内宮で神秘に触れる

では、次の目的地である内宮(皇大神宮)を目指しましょう。距離はおおよそ4kmです。道路はきれいに整備されているのですが片側二車線の道は自転車専用通路がないため気をつけて走りましょう。伊勢自動車道の高架下を通り、伊勢道路(国道32号)に差し掛かる前、左手に立派な神社見えてきます。こちらは万事最も良い方へ“おみちびき”になる猿田彦大神を祀る猿田彦神社です。

さらに進み、御幸道路とぶつかる宇治浦田町の交差点を右折します。この御幸道路は明冶43年に明治天皇の伊勢神宮への行幸のために整備された道路で、伊勢市では最も歴史のある舗装道路だとか。内宮へ行く途中には神宮徴古館や倭姫宮などの観光スポットのほか、カフェなどが点在しています。週末や休日は車で参拝に向かう方が多く道路は一部で渋滞が起こることがあります。自転車の通行には十分気をつけてください。

伊勢神宮の別宮である倭姫宮

御幸道路をしばらく進むと両側が豊かな緑に覆われた伊勢神宮周辺の森が見てきます。内宮で自転車が置けるのは五十鈴川に架かる宇治橋近くの駐輪場です。

宇治橋から眺める伊勢神宮と五十鈴川

宇治橋は内宮への入口であり、この世の日常と神聖な世界を結ぶ架け橋です。宇治橋の鳥居は外側と内側にあります。この鳥居に見覚えのある方は多いはず。鳥居は内宮の旧正殿の棟持柱が用いられており、伊勢神宮を紹介する際には欠かすことのできない象徴的で美しい鳥居です(TOPの写真)。2つの鳥居をくぐり、いよいよ内宮への参拝です。五十鈴川と平行に進むと右手に手水舎が見えてきます。外宮と同じく身も心も清めてからお参りしましょう。左へ折れ、進んでいくとる天照大御神をお祀りしている正宮 皇大神宮が見えてきます。風が吹くと正宮の白い御幌(みとばり)が揺れ、まるで神様が静かに通ったように思えます。

ここから先は撮影禁止の神聖な領域。荘厳な雰囲気が漂います

7. 伊勢の門前町で遊ぶ

参拝を終えたら鳥羽駅へ向かいましょう。先ほど通ってきた御幸道路ではなく、五十鈴川近くの伊勢街道を行きます。この伊勢街道は江戸時代のはやり歌『伊勢音頭』で「伊勢に行きたい伊勢路が見たい」と唄われた道。特に内宮付近は歴史のある建物や店が軒を連ねています。観光客の多い門前町ですので気を付けて行きましょう。300年の歴史を誇る赤福の金色で書かれた看板が見えたら、辺りを散策してみましょう。お土産物屋や飲食店が軒を連ねるおかげ横町があります。この横町は50余りの店が軒を連ねる一つの町。江戸時代末期から明治時代初期の鳥居前町の町並みを再現した観光地で、まるでタイムスリップしたような情景が広がります。

伊勢名物「赤福」本店

8. 300年の歴史を戴きます

さて、先ほどの赤福本店を素通りするわけにはいきませんね。伊勢の名物のひとつである赤福餅は、お餅の上にこし餡(あん)をのせた餅菓子。その形は五十鈴川のせせらぎをかたどり、餡につけた三筋の形は清流、白いお餅は川底の小石を表しているそうです。腹ごしらえがすんだら、五十鈴川に架かる新橋を渡り、今度こそ鳥羽駅に向かいましょう。

9. ゴールの鳥羽駅へ

橋を渡る際、左手に見えるのは伊勢道路に架かる浦田橋です。橋を渡るとすぐに左折し、左に五十鈴川を見ながら土手沿いの道を進みます。先ほど見えた浦田橋を越え、館町通線に架かる橋を渡り、本線を行きます。しばらく川沿いを走り県道37号に合流したら右折。この道を8キロほど進むと片側2車線の国道42号線にぶつかります。先ほどの県道37号とは違い交通量も増えてきますのでご安全に。右折し、国道42号線を3キロ進むと鳥羽駅に到着です。お疲れさまでした!(もし、時間に余裕があれば駅を通り越し海沿いの道を進めば日本屈指の展示生物1200種を超える鳥羽水族館がありますよ!)

鳥羽はリアス海岸で有名な景勝地。少し足を伸ばせば絶景を拝むこともできる


参考WEBサイト
セントレア https://www.centrair.jp/index.html
津エアポートライン https://www.tsu-airportline.co.jp/
伊勢市観光案内所 https://ise-kanko.jp/
名代 伊勢うどん 山口屋 http://www.iseudon.jp/
伊勢神宮 https://www.isejingu.or.jp/
猿田彦神社 https://www.sarutahikojinja.or.jp/
赤福本店 https://www.akafuku.co.jp/
鳥羽水族館 https://aquarium.co.jp/




Profile

Text_井上英樹/Hideki Inoue
兵庫県尼崎市出身。ライター、編集者。趣味は温浴とスキーと釣り。縁はないけど勝手に滋賀県研究を行っている。1カ所に留まる釣りではなく、積極的に足を使って移動する釣りのスタイル「ランガン」(RUN&GUN)が好み。このスタイルに自転車を用いようと、自転車を運搬する為に車を購入した(本末転倒)。

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