ローカルサイクリストAyakaのブリスベン現地レポート【後編】
New York City 自転車で巡る建築
New York Cityを楽しみませんか?
5月5日に開催される「BIKE NEW YORK 2024」の前に、ニューヨークの街を楽しむコンテンツをお届けします。ニューヨークと聞いて思い浮かぶのが、まずはマンハッタンの街並みではないでしょうか。今回は25年ほどニューヨークに在住し、自転車が欠かせない生活を送っていたアートライターの河内タカさんに自転車で巡る建築をご紹介いただきます。スケールの大きさは、さすがNYC!
ニューヨークの有名建築といえばエンパイア・ステート・ビルがすぐに頭に思い浮かぶはずだが、グランドセントラル駅近くにそびえ建つ77階建ての「クライスラー・ビル(Chrysler Building)」も個人的にはお薦めだ。 高層ビルの建設ラッシュだった1931年に完成し、洗練されたアールデコ調のデザイン、そしてステンレス製の尖塔が光を反射する美しい姿はいつ見ても惚れ惚れしてしまう。もともと自動車メーカーの社屋として建設されたため、装飾や素材には自動車の特徴が随所に組み込まれているのもこの建物の大きな特徴である。
この建物から西へ真っ直ぐ向かうとハドソンヤーズという比較的新しい商業エリアにたどり着く。ここのシンボル的な建物が「ベッセル(The Vessel)」で、設計したのが東京の麻布台ヒルズの建物を手がけ話題となっているイギリスのトーマス・ハザウィックだ。階段と踊り場のみで構成された高さ60メートルあるハチの巣のような迫力に満ちたアート建築である。
ハドソンヤーズからまっすぐ南に進むとアートのところでも触れたチェルシー地区にたどり着く。このエリアは斬新な高層ビルが建ち並んでいることで有名なのだが、中でも代表的な建物が波打つ曲線と半透明ガラスによる優美な外観が目を引くフランク・ゲーリーによるオフィスビル「IACビル(IAC Building)」あたりだろう。また、すぐ近くに23階建ての高層マンション「100 Eleventh Avenue」がある。モザイクのようなガラス窓によって複雑に覆われたこの近未来的な建築の設計はフランス人建築家のジャン・ヌーヴェルが手がけた。このように今のチェルシーは建築好きにはたまらない近代建築の宝庫となっている。
2001年米国同時多発テロで倒壊したワールド・トレード・センター跡地に建造され、2014年の開業したのが「ワン・ワールド・トレード・センター(One World Trade Center)」で、その高さはアメリカが独立した年にちなんだ1776フィート(約541メートル)で西半球で最も高いビルであるという。最上階には展望台がありそこからマンハッタンの全景だけでなく、はるか遠方まで見渡せる超人気スポットだ。
そしてこのランドマークのすぐ近くにあるのが、40億ドルを投じて建造されたショッピングセンターとRATHトレイン(鉄道)の駅としても機能する「オキュラス(Oculus)」だ。まるで鳥が翼を広げたときの骨格を想わせる造形だが、設計したのがスペインの巨匠サンディゴ・カラトラバ。もし時間とペダルを漕ぐ余力が残っていれば近接する「911メモリアルミュージアム」に立ち寄り、ニューヨークを震撼させたあのテロ事件を振り返ることもお勧めする。
🚲本日のコース
Text_ Taka Kawachi
Profile
河内タカ / Taka Kawachi
アートライター。高校卒業後、サンフランシスコのアートカレッジに留学。NYに拠点を移し展覧会のキュレーションや写真集を数多く手がけ、2011年に30年間に及んだ米国生活を終え帰国。海外での体験をもとにアートや写真のことを書き綴った著書『アートの入り口 』(太田出版)や『芸術家たち』(アカツキプレス)を刊行。ニューヨーク時代から現在にいたるまで自転車が生活の基盤となっている。
投稿日:2024.04.02