Tour de Natural Wine
#01 Programma Agricolo Dinamo “NUCLEO 1 Rosso”

最近気になる、ナチュラルワイン*。実は自転車とも縁があり、エチケット(ラベル)に見て取れることもしばしば。本コラムでは自転車にまつわるナチュラルワインのあれこれをさまざまなバイヤーやインポーターさんに寄せていただきます。初回は東京・中目黒にある「WINES&THINGS」の河村瑞英さんよりお届けします。入荷に合わせた不定期連載、どうぞお楽しみに!

「ナチュラルワインとはなんぞや?」という質問にはざっくりと「人の都合でつくらないワイン」と答えております。
個性豊かなナチュラルワイン生産者たちに共通している哲学は「自然に任せる」ということ。自然に寄り添い葡萄の持つポテンシャルを最低限の人的介入で最大限に昇華させているのがナチュラルワインです。
そしてその楽しみの一つがそれぞれの世界観を表す独創的なエチケット。キュヴェ*に込められた生産者の想いが伝わって、ついつい延々と眺めてしまいます。

今回ご紹介するワインはイタリア ウンブリアの銘柄、ディナモ農業プログラムという生産者の”ニュークレオ 1 ロッソ” ’20(Programma Agricolo Dinamo “NUCLEO 1 Rosso” )。
ガメイ・デ・トラシメーノというマイナー地元品種とイタリアで最もポピュラーな黒葡萄品種のサンジョヴェーゼを半分ずつ使った、色味も味わいもとっても濃厚でジューシーな赤ワイン。ボリューム感を感じるたっぷりの果実味がありながら口当たりはとてもしなやかで気づけば1ℓは空けてしまいそうなくらいスルスルと飲めます。

40年続く葡萄農家のノフリーニ家がイタリアナチュラル界の第一人者 ダニーロ・マルクッチとのコラボレーションで造る「ディナモ農業プログラム」。マルクッチが表現したかったのは自らが初めて祖父とワイン造りをしたときの衝動で、それは彼が長年ワイン醸造に携わってきた間、ずっと大切にしていたものだそうです。

エチケットの自転車は、昔のワイン造りへのオマージュ。収穫した葡萄や出来上がったワインなどを倉庫やお店に運ぶ手段として、自転車は造り手と買い手の間を繋ぐ欠かせない道具でした。また、「ディナモ農業プログラム」は当時のワインが農作業時のエネルギー源として人々に消費されていたことに基づき、現代においても飲み手の発電機になるようにとの願いが込められています。

『イル・ポスティーノ』や『ニュー・シネマ・パラダイス』など、イタリアの古き良き映画の重要なワンシーンにはいつも自転車があります。
郵便物を運んだり、仕事に出かけたり。人と人との物理的な繋がりの象徴のような自転車。昔の景色を思い浮かべながらゆらゆらとクラスを傾ければ、映画の世界にトリップできそうです。

本日のナチュラルワイン

ディナモ農業プログラム “ニュークレオ 1 ロッソ” ’20
Programma Agricolo Dinamo “NUCLEO 1 Rosso”
【内容量 Net】1000ml
【産地 vineyard】イタリア Italy / ウンブリア Umbria
【品種 variety】ガメイ・デ・トラシメーノ Gamey del Trasimeno 50%、サンジョヴェーゼ Sangiovese 50%
【タイプ type】赤 Red
【製法 process】 天然酵母での発酵、6日間マセラシオン ファイバータンクで熟成 SO2無添加、ノンフィルター、ノンコラージュ

*ナチュラルワイン_オーガニックなどと異なり、認証機関が存在せず造り手各々の定義や思想に委ねられてはいますが、一般的には、無農薬有機栽培のぶどうを使用し、醸造に関しては人工酵母も含めた一切の添加をせずに醸造しているワインを指す。畑と蔵の両面から自然に向き合う造り手のワイン。

*キュヴェ(Cuvée)_収穫後のブドウをアルコールに変える「発酵槽(Cuve)」がルーツと言われている。発酵層の中のワインを指す言葉として用いられていたが、最近は少数生産や特別なお酒に対して用いられ得ることもしばしば。

Profile

河村瑞英/Mizue Kawamura
ワインショップ WINES&THINGS 店主
東京都出身。音楽~映像業界での勤務を経て、2021年にかねてより愛好していたナチュラルワインの仕事を始める。約2年間のオンラインショップ運営ののち2023年11月、念願の初店舗を地元中目黒でオープン。趣味の料理を通してフードマッチやワインコーディネイトなども手掛けている。

CULTURE
CYCLE CINEMA⑪
『ガチ星』
もがいてもがいて、もがき続ける

人生で没頭できることを見つけられたら、その人生は成功ではないだろうか。もちろん、その没頭できる(つまり好きなこと)ことで生活できればなお良い。さらに、その世界でトップに立ったら最高だ。しかし、世の中は厳しい。子どもの頃から努力して、プロになっても、その世界で活躍できる人は稀だ。 『ガチ星』(2017年)は、元プロ野球選手であった濱島(安部賢一)が主人公の物語。彼は野球選手ではあったが、その心まではプロフェッショナルではなかった。煙草を吸い、酒を飲み、やさぐれていた。ある日、戦力外通告を受け、さらに自堕落な生活に陥る。パチンコや酒に溺れ、さらには親友の妻にまで手を出してしまう。絵に描いたような負け犬だ。 このままでは地の底に落ちる。最後の悪あがきで挑んだのが競輪だった。39歳で競輪学校に入るが、20歳以上も年の離れた若者たちと厳しい訓練の日々が続く。元プロ野球選手といっても、酒や煙草に浸っていたため持久力はなく、教官や他の生徒たちから馬鹿にされる。そんな中、濱島は同郷の同級生である久松に出会う。なぜそれほど打ち込めるのかと濱島が尋ねると、久松は「これしかねえっちゃ」と言う。久松にはプロにならなくてはならない理由があった。久松の魂に触発された濱島は、失った自分を取り戻すために力強く自転車を漕ぎ始め、なんとかプロになることができた。 しかし、プロになってもうだつの上がらない濱島であった。人はすぐには変わらない。クズはいつまでたってもクズであることを証明するかのような男であったが、大事故をきっかけに濱島はある種の悟りの境地にたどり着く。道路で立ち止まり、自問し、自責し、今の自分にできる […]

#Gachi-Boshi
CULTURE
輪行プロフェッショナルがお届けする
輪行ガイド(国内編 #02)

こんにちは、温玉ねぎとろです。輪行ガイド(国内編 #01)に続き、本記事では主にバスを利用する際の注意点と宿泊施設について解説します。*2024年8月現時点での調べ 目次 2. 国内輪行のルールと状況 2-6 バス(高速バス・空港連絡バス) 2-7 バス(路線バス) 2-8 飛行機3. 輪行の受け入れ態勢/宿泊施設4. まとめ 2-6 大型バス(高速バス/空港リムジンバス/共同運行バス) 高速バス<専用の輪行袋の使用規定>・輪行袋に収納している・混雑時は使用できない可能性がある 基本的には電車と同じ場合が多いです。輪行袋に収納しているということを条件に許可をしている場合もありますので、使用される予定のバス会社の規定を確認しましょう。 <バスでの輪行について>現在の日本国内ではバスで輪行する長距離移動は少し難しい状況にあります。というのも、以前までは数社の高速バス会社で輪行の受け入れを行っていたのですが、現在はサービスが終了している場合が多いです。そのため、バスで輪行する場合はしっかりと該当路線の規定を確認し、必要であればバス会社に電話をして確認をしましょう。2024年現在、高速バス・都市間バスなどの長距離移動をするバスでは輪行を受け付けていない場合が多いです。 また、規定としては以下のような場合が多いです。 ・輪行袋に収納している・混雑時は使用できない可能性がある バスの場合はトランクルームのサイズに限りがあるので、なるべくコンパクトに収まるように工夫をしましょう。基本的にはトランクがあるバスの一部で輪行可能な場合があるという認識です。都市間バスに関しては、鉄道在来線が衰退もし […]

#How to #Bus
CULTURE
CYCLE MUSIC⑨
Dominic Miller
「Bicycle」

毎回ちょっとした自転車と音楽にまつわるエッセイを綴っているマンスリー・コラム「CYCLE MUSIC」。今回は名ギタリストDominic Millerによる、その名も「Bicycle」という曲を紹介しましょう。 アメリカ人の父とアイルランド人の母のもとアルゼンチンで生まれ、長らくロンドンを拠点に活躍して、今は南フランスに住んでいるというDominic Millerは、「偉大で穏やかなストーリーテラー」などと多くのメディアで絶賛されてきましたが、何と言っても輝かしいStingの右腕としてのキャリアで名高いですね。Stingは彼のことを「色彩豊かな音の建築家」と称賛し、やはり共演歴のあるPaul Simonはその詩情がこぼれ落ちるようなギター・プレイを「ジャズとイングリッシュ・フォークの香りがする美しい音色」と讃えている、テクニカルかつメロディアスなセンスの持ち主です。 現在は“静寂の次に美しい音”を標榜するドイツの名門ジャズ・レーベルECMから自身名義のリーダー・アルバムをリリースしていて、この「Bicycle」はECMでの2作目として2019年に発表された『Absinthe』に収録されています。そう、“アブサン”という薬草系の強いリキュールのように甘く危険で美しい、彼が魅了された20世紀フランスの印象派アーティストたちへのオマージュとなっている作品集で、僕はこのアルバムのリリースに合わせて丸の内COTTON CLUBで行われた来日公演も観に行きました。 瑞々しいギターのリフレインに、ノスタルジックな哀愁を帯びたバンドネオンや、タイトで空間性に富んだドラミングも印象的な「Bicy […]

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