輪行プロフェッショナルがお届けする
輪行ガイド(海外編)

こんにちは、自転車関連のガジェットとツーリング記など掲載しているブログ「自転車旅行研究会」主催の温玉ねぎとろと申します。本業の傍ら、webサイト上で自転車ツーリングについての記録や考察を行っています。これまで10カ国以上で海外ライド旅行を行い、国内旅行も含めて自力での輪行経験は多数。今回は夏休みを目前に、海外の自転車イベントへ参加する際に避けては通れない、飛行機での輪行(飛行機輪行)の方法について、簡単にご紹介したいと思います。

目次

1 飛行機のチケットを予約する前に
2 航空会社の対自転車規定を知る
3 注意が必要な荷物について
 3-1 手荷物、預け入れ荷物両方で不可
 3-2 預け入れ荷物が不可
 3-3 手荷物が不可で預け入れ荷物のみがOK
4 飛行機輪行時の梱包方法
 4-1 輪行袋ごとのリスクについて
 4-2 自転車用段ボール
 4-3 飛行機用輪行袋
 4-4 布製輪行袋
 4-5 貸出輪行箱
 4-6 メリット・デメリットまとめ
 4-7 その他:スーツケース
5 空港までの運搬方法
 5-1 自転車で自走
 5-2 自家用車、タクシーなど
 5-3 電車

 5-4 空港連絡バスなど
 5-5 宅急便など

6 飛行機輪行お役立ちグッズ
7 まとめ

1 飛行機のチケットを予約する前に

まず、飛行機のチケットを予約する際には航空会社の自転車に関する規定について確認をしましょう。取り扱いは航空会社ごとに異なる可能性があります。場合により事前に連絡が必要な場合もあります。特に自転車イベントなどで輪行客が多いと予想される際には、前もって航空会社に自転車を持ち込む旨を連絡しましょう。LCCなどでは別途料金を支払うことでチケット予約時に自転車持ち込みについて予約可能な場合もあります。また、内容が更新されている場合がありますので都度、航空会社の規定を確認することをおすすめします。

例として、以下はJALの自転車持ち込み規定です。
   JAL Q&A 「自転車を預けることはできますか。」
   →リンク

   JAL Q&A 「国際線で手荷物として自転車は運べますか。」
   →リンク

2 航空会社の対自転車規定を知る

航空会社の多くでは重さ20kg以内(20kg以上でも可能な航空会社も有り)・3辺合計203cm以内であれば飛行機に自転車を持ち込むことが可能としている場合が多いです。そのため、基本的には上記の重さ・サイズに収まるように梱包しましょう。

3 注意が必要な荷物について

それでは実際に自転車を輪行する際に注意が必要な点について紹介します。今回は国内線で荷台大手のJALの規定に準拠して記載します。また、輪行時に特に注意が必要なものについては私の経験を踏まえてまとめてみます。

3-1 手荷物、預け入れ荷物両方で不可(例外規定はあり)

● チェーンルブ(量が少なければOK)
● パンク修理用のり(石油類の表記がなければOK)
● ガス缶類(CO2ボンベやバーナー用)など

どうしても持ち込みたい場合の対応としては、荷物検査の際に石油類との記載がないゴムのりとオイルを分け、係員の方に相談してみましょう。自転車と一緒に預け荷物に入れてしまうと、チェック時に荷物をひっくり返すことになる可能性があるので避けたいです。

ゴム糊は特に注意が必要。成分をしっかりと確認しましょう


3-2 預け入れ荷物が不可(輪行時に自転車から取り外し、機内手荷物にしなければならない)

● サイコン
● ライト
● テールライト
● GoPro等(GoProをつけたまま輪行を行う猛者などいないと思うが)
● Di2など電動変速機材
代表的なDi2のバッテリーは3.7/Whです。一般的なモバイルバッテリーよりも容量が小さいため、外して機内手荷物として持ち込む必要があります。
*リチウムイオンバッテリーを使用する製品については注意が必要です。
*詳細については今後の別記事で紹介予定

参考_シマノwebサイト
https://bike.shimano.com/ja-JP/information/customer-services/corrective-actions/sm-btr.html

3-3 手荷物が不可で預け入れ荷物のみがOK

● 工具類(工具類は基本的に輪行する自転車と一緒に梱包を行う)

   JAL「制限のあるお手荷物」
   →リンク

   国土交通省「航空機への危険物の持込みについて」
   →リンク

●その他の注意が必要なもの
油圧ディスクブレーキ搭載の自転車の場合
注意点はオイルのエア噛みとロータの歪み及び、ブレーキホースの変形です(詳細については別記事でご紹介予定)。
また、オイルの種類をしっかりと把握しておきましょう。基本的には飛行機に持ち込むことは問題ないですが、稀に空港職員に尋ねられるケースもあるようです。心配な場合は製品安全データシートを印刷しておくと尋ねられた場合に製品の説明がスムーズに進む場合もあります。

参考_シマノwebサイト
https://si.shimano.com/pdfs/compliance/sds/hydraulic%20mineral%20oil-202008-JPN.pdf

4 飛行機輪行時の梱包方法

次に、飛行機輪行における梱包方法を4種類紹介します。はじめの頃は高価な自転車を預ける不安だけでなく、梱包時にボトルケージが歪んでしまうなど失敗もありました。しかし、慣れるうちに15分程度で完結できるようになりました。回数をこなしていきましょう。

このパートでは「布製輪行袋」「自転車用段ボール」「飛行機用輪行袋」「航空会社が提供する貸出輪行箱」を使用する方法をご紹介します。「布製輪行袋」に関しては縦型の輪行袋(オーストリッチSL-100)で記載しています。ちなみに私は海外輪行は自転車用ダンボール、国内線で乗り継ぎがない場合は布製輪行袋を用いることが多いです。

4-1 輪行袋ごとのリスクについて

飛行機輪行を行う際に下記の順で破損のリスクが少ないと私は考えています。

自転車用段ボール>飛行機用輪行袋>布製輪行袋

段ボールと飛行機用輪行袋は強度のある素材で保護が可能なため、破損リスクは低いと考えています。 布製輪行袋については「コクーン型輪行」「縦型輪行」「横型輪行」の大きく3種類に分けられます。 コクーン型輪行袋に関しては梱包サイズが大きくなるというデメリットはありますが、後輪を外さないということもあり、リアディレイラー が地面に設置することはないという点で破損リスクは低いと考えています。縦型輪行袋に関しては巾着型の場合、上下がしっかりとわかるという点。そしてエンド金具をつけているためしっかりとリアディレイラーを保護できるという観点から横型よりはリスクが少ないと判断しました。

エンド金具でリアディレイラーをしっかりと保護!

横型については航空会社の方が運ぶ際にどこを持てばよいかわかりにくく、意図しない向きで運搬・設置された際に破損のリスクがあると考えています。航空会社の方々は自転車の知識を持っているとは限らないので、わかるようにシールや向きを書いた紙を貼るのも有効な手段になります。

4-2 自転車用段ボール

自転車を梱包する自転車用段ボールは購入するか、自転車屋さんからいただくかの二種類の方法があります。私は海外に行く際はいつも自転車用の段ボールを手に入れて、現地の空港に捨てます。そして帰りの空港でも現地の自転車屋さんから廃棄用の自転車用段ボールをいただき、再び梱包します。

ランドナーを梱包する様子

具体的に梱包する方法としては輪行される方のリスク許容度と整備力にもよりますが、私は限界までパーツを外し、パーツごとにプチプチなどで梱包を行います。そして段ボールに隙間ができるだけできないよう(揺れたときに動くと傷になるため)梱包を行います。タイヤの空気は抜いておくことを忘れずに!!

隙間ができないようにぎちぎちに詰める。出っ張りがないように注意

自分で考えながら梱包を行うのである意味楽しいかもしれないです。空港によっては自転車用の段ボールを廃棄・置いておくことができる場所があったりもします。

広島空港の例
→リンク

仙台空港の例
→リンク

4-3 飛行機用輪行袋

OS-500(OSTRICHウェブサイトより)
https://ostrich-az.com/

飛行機輪行で有名な専用輪行袋はOSTRICHの「OS-500 」です。ただ、自転車用の段ボールとは異なり、捨てるには高価なものであるため、予め到着した空港やホテルで預かってもらう算段を考えておく必要があります。海外でのイベントに参加する場合はホテルの部屋においておくことができるのでそこまで問題にならないかもしれません。

4-4 布製輪行袋

大前提として普通の輪行袋で輪行をするのは国際線で使用する場合や乗り継ぎが必要な場合はおすすめしません。

乗り継ぎや国際線では壊れるリスクが高いので、なるべくなら段ボール等に入れるなど、上記でご紹介した方法で輪行することを強くおすすめします。国内線で乗り継ぎがない場合、私は布製の縦型輪行袋で飛行機輪行を行うことが多いです。

縦型輪行袋を利用しての飛行機輪行

輪行の方法については基本的には電車で輪行する場合と同じです。
電車での輪行と異なるまたは、注意をする点は
● ペダルを外す 
● ハンドルをしっかり固定する
● タイヤの空気を抜いておく
● ホイールのハブやスプロケット、リアディレイラー などにプチプチなどで厚めに梱包しておく。
当然ながら一番、気を遣う必要があるのはやはり前後リアディレイラーです。余裕がある場合はもちろん外すなどした方が良いです。

横型輪行袋を使用する際は特に注意が必要

縦型輪行、横型輪行のどちらの方法でも以下の写真のように輪行袋で印をつけておくと空港の係員の方もわかりやすく、破損のリスクを低減できます。破損が起きる多くの場合は「意図しない向きに設置されてしまう」「意図しない箇所を持ち手として運ばれる」のどちらかになると考えますので、説明書きを貼るなどして対策をしっかりとしましょう。

事前に扱いについて記載した紙を貼っておくほうが良

受付の方が書いてくれました。
輪行の際からどちらの面を下にしてもらうか考えながら輪行袋に収納するのがコツです。

4-5 貸出輪行箱

航空会社によっては事前に申請することで輪行用の箱を貸し出している場合もあります。利用する際、航空会社に輪行箱の貸出サービスがあるか確認してみましょう。過去にはJALでも取り組みがあったようですが、断念した模様です。コスト面など課題はあるのは事実ですが、積載時にも形が均一になり、我々としても破損のリスクが減ると思うのでなんとか実現してほしいですね。

4-6 メリット・デメリットまとめ

ポイント/
輪行方法
自転車用段ボール飛行機用輪行袋布製輪行袋貸出輪行箱
値段無料or有料¥20,000~¥3,000~無料
使いやすさ
入手性
対応可能な航空会社が
少ない
破損リスク
空港までの移動
空港まで運ぶ際に工夫が必要
旅先での維持
ホテル等で預けるもしくは処分可

ホテル等で預かって貰う必要がある
その他手に入れる際に自転車屋さんに相談する等工夫が必要InとOutの空港が
異なる場合は
少し使いづらい
破損リスクが
高いため工夫が必要
使用後は返却をするだけなので使いやすい

4-7 その他:スーツケース

折りたたみ自転車など、サイズが小型の場合はスーツケースという選択肢もあります。
(※メーカーによっては専用のケースがある場合も)


参考:折りたたみ自転車、ブロンプトンの専用スーツケースでニューヨークに輪行した記事↓
https://globalride.jp/event/kawase_02_jp/

5 空港までの運搬方法

 次に、自転車を空港まで持っていく際の運搬方法について考察します。ご自身と使用する空港にあった方法で運搬しましょう。

5-1 自転車で自走

秋田空港へは最寄り駅から離れているため自走で移動

地方空港などでは空港の入口まで自転車で行ける場合も多いです。一般的な布製の輪行袋を利用する場合は自走でも良いかもしれません。

5-2 自家用車、タクシーなど

事前に梱包を済ませておいた状態で、空港まで運搬します。空港の駐車場は料金が高めなので、知人に送り迎えの協力を依頼するのも良いかもしれません。地方空港の場合は駐車場の料金が安い場合もあります。 タクシーについては事前に自転車を乗せることが可能かをしっかりと確認しましょう。

5-3 電車

電車で乗り入れ可能な空港には電車で移動するのが便利です。電車に乗る前に飛行機に乗せることを前提とした輪行状態に準備をしておきましょう

5-4 空港連絡バスなど

空港が街から離れていると空港アクセスバスが運行している場合も多いです。一方で自転車を乗せることができるかはバスの運行会社に確認が必要です。空港アクセスバスの多くは複数のバス会社で共同運行を行っている場合も多く、バス会社毎に異なる場合もあるので特に注意が必要です。乗せてしまえば便利なのですが、少し制限が多いように思います。

5-5 宅急便など

市販の段ボールを組み合わせて自転車を梱包

料金がかかってしまいますが、自転車を段ボールなどで梱包したあとに空港まで郵送を行うのも手段の一つです。ヤマト運輸や佐川急便でも家財便やラージ便として発送を行うこともできます。

ヤマト運輸「よくあるご質問 自転車や三輪車は、送れますか?」
→リンク

佐川急便「飛脚ラージサイズ宅配便」
→リンク

6 飛行機輪行お役立ちグッズ

ここで飛行機輪行において役に立つ物や工具についてまとめておきます。

● ペダルレンチ
● 養生テープ
● プチプチ
養生テープとプチプチについては100円ショップで手に入るものでOK。プチプチ等梱包材については現地の空港に到着後、捨てずに取っておくと再度購入する手間が省けます。

7 まとめ

慣れれば難しいことはないのですが、リスクがあるのも事実です。コツは航空会社の規定を把握して、しっかりと梱包すること。さらには飛行機に積み込まれる際に自転車を運んでくださる係員の方が扱い方について、わかりやすいようにしておくことがポイントだと思います。コロナ禍以降、海外のサイクリングイベントに参加する方や国内線を利用する方も増えていると感じており、航空会社の方々の対応もスムーズで非常に便利になったと感じています。しっかりと準備をして安全に海外サイクリングイベントを楽しみましょう!

ナイスライド!



🚲参考文献
● JAL 「自転車を預けることはできますか。」
● JAL「国際線で手荷物として自転車は運べますか。」
● JAL「制限のあるお手荷物」
● 国土交通省「航空機への危険物の持込みについて」
● 広島空港「その他の施設」
● 仙台空港「サービス・施設」
● Cycle Sports「JAL専用飛行機輪行箱が登場! 8月からサービス開始」
● ヤマト運輸「よくあるご質問 自転車や三輪車は、送れますか?」
● 佐川急便「飛脚ラージサイズ宅配便」

*本記事は筆者によりこちらの記事をGlobal Rideへ向け加筆・再構築しています
● 自転車旅行研究会「【飛行機輪行(空輪)】自転車を預ける方法と梱包の仕方」

🚲輪行プロフェッショナルがお届けする輪行ガイドシリーズ
● 海外編
● 国内編01
● 国内編02


Text_Negitoro Ontama

Profile

温玉ねぎとろ
大阪府堺市出身。会社員・ライター・ブログ「自転車旅行研究会」管理人。幼少期から自転車に旅の荷物を載せたキャンプツーリングを行っており、国内のほとんどの都道府県を走破。また、大学在学中は自転車サークルに所属しており、ソロで10カ国以上を自転車で来訪。輪行経験豊富。2023年には厳冬期北海道を自転車で縦走するなど、エクストリームなキャンプツーリングを行う。近年はロングライドにも力を入れており、2023年にはブルベでSRを取得。2024年のGWには1900kmのブルベも完走している。今後はPBPやLELの完走を目指しつつ、海外キャンプツーリングも積極的に行っていく予定。

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