TVプロデューサー河瀬大作 Bike New York参戦記!
恋するニューヨーク vol.1
ブロンプトンにひとめぼれ。

それはひとめぼれだった。出会ってすぐに恋におちた。「次はあの子とどこに行こう」って、ふと考えてしまう自分がいる。こんな昂ぶりは、いつぶりだろう。お相手は人ではない。

ブロンプトンだ。そして今、ブロンプトンとの生活を、そして旅を心から楽しんでいる。折りたたみ自転車は、ずっと気になっていた。でもロードバイクに比べたら、小径車なんて物足りないんじゃないかって思っていた。ロードバイクのようなスピードもでないだろうし、長い距離を走るのにも向かないだろう、と。ロードバイクこそ”King of Bicycle”。そんな固定観念を持っていたのだ。

でも、ロードバイクにだって苦手はある。それは、街中を走ることだ。都心の幹線道路を走っていると、信号に頻繁にひっかかり、時にうんざりする。車輪の大きなロードバイクはストップアンドゴーを得意としていない。止まるたびにビンディングシューズを着脱するのも面倒くさい。

だからある時、街乗り用の自転車を探してはじめた。探していたのは、小径車のE-bikeだ。いくつかのショップを巡っていたのだが、なかなかこれ、というバイクには出会えない。そんなある日、棚にずらりと並んでいる自転車が飛び込んできた。

色とりどりの車体が、棚に所狭しと陳列されている。その佇まいの美しさに心が躍った。それがブロンプトンだった。

出会いの場所は、西荻窪の「和田サイクル」。ブロンプトンをはじめ小径自転車を扱うお店としては、東京屈指、いや日本屈指自転車屋だ。

大正6年創業(創業100年以上!)の「和田サイクル」の和田さん。ブロンプトンファンからは知られた人物で専門書の監修を手掛けることも
https://wadacycle.storeinfo.jp/

店員の西久保さんが折りたたみを実演してくれた。その動きの無駄のない美しさ、素早さは芸術的ですらあった。

もちろん、試乗もした。軽く踏んだだけでグングン進む。4速のモデルでも、街乗りであれば十分だ。E-bikeだって悪くない。いや、むしろ街乗りの主流といってもいい。小さいお子さんがいる家庭ではマストアイテムだろう。

でも、ぼくは自転車乗りであり、自転車乗りファンだ。E-bikeはまたいつかトライすればいい。それよりもブロンプトンとの自転車ライフを想像すると胸がときめいた。この気持ち逆らっては自転車乗りの名が廃る。

で、即決で買った。

購入して乗り始めるとますます好きになった。タイヤが小さいので、こぎ出しが圧倒的に軽い。信号で止まっても、ぜんぜん苦にならない。
とにかく楽しい。折りたためば、たいていのお店に持ち込むことができ、盗難に怯えずにご飯が食べられる。地下鉄でも場所を取らないので、きちんと配慮すれば周囲への迷惑は抑えられる。飛行機で旅をするときも航空会社のコンテナにもスポッと入り、飛行機輪行も安心。

しかも、なんとコインロッカーにもスポッと入る。駐輪場に比べれば割高だが、盗難の心配は皆無である。

そして、ある想いがムクムクと大きくなっていった。この愛車でニューヨークの街を走る。

5月5日に開かれる「BIKE NEW YORK」。正規名称は、「FIVE BORO BIKE TOUR」(https://www.bike.nyc/)という。その名の通り、ニューヨークの5つの地域(ブルックリン、マンハッタン、クイーンズ、ブロンクス、スタッテンアイランド)を巡る。あのマンハッタンを交通封鎖して行われる北半球最大の自転車イベントだ。世界中から3万人をこえるライダーが集まる。コースは40マイル、およそ64kmだ。

憧れの街を自分のバイクで走る、しかもブロンプトンで。イベントの数日前に前乗りすれば、セントラルパークやSOHOを颯爽とサイクリングすることもできる。最高すぎる! まだ決まってもいないのにテンションが高まりまくって、気分はもう『摩天楼はバラ色に』*、だ。

この時、実はすでにGlobal Ride編集部(https://globalride.jp/)によるゲストライダーとしてエントリーは決まっていた。もともとは、手ぶらで行って現地でロードバイクを借りることになっていた。しかし、せっかくのニューヨーク。できれば自分のバイクで走りたい…。そんな折に、ぼくはたまたまブロンプトンに出会い、恋に落ちた。そしてニューヨークを一緒に走る。かの文豪・シェイクスピアが残したこんな言葉がある。

「運命は星が決めるのではない、我々自身の思いが決めるのだ」

大袈裟かもしれない。でも、舞台は整った。こうしてぼくは、ブロンプトンとのニューヨークライフを夢見ながら、その輪行をどうするのか、計画を練り始めた。さあ、どんな旅路が待ち受けているのか。


次回に続く。

※『摩天楼はバラ色に』…1987年に公開されたマイケル・J・フォックス主演のニューヨークを舞台にしたアメリカのコメディ映画


Text & Photo_Daisaku Kawase

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Profile

河瀬大作/Daisaku Kawase
フリープロデューサー、(株)Days 代表、GlobalRide コミュニケーションディレクター
愛知県生まれ。ロードバイク歴16年、絶景ライド好き。仕事の合間を縫い、自転車担いで全国へ出かける。愛車はトレック。NHKでプロデューサーとして「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「おやすみ日本 眠いいね」「あさイチ」などを手がけたのち2022年に独立。番組制作の傍ら、行政や企業のプロジェクトのプロデュースを行う。

EVENT
TVプロデューサー河瀬大作 Bike New York参戦記!
恋するニューヨーク vol.6
それは人生最高のライドだった。

誰しも憧れの場所があるだろう。 僕にとってそれはずっとニューヨークだった。アンディ・ウォーホルやルー・リードが暮らし、ジョン・レノンが凶弾に倒れ、ブレイクダンスが生まれ、数えきれない映画の舞台になった街だ。 その街で開かれるロングライドのイベントがある。FIVE BORO BIKE TOUR。通称、バイクニューヨークと呼ばれる。 マンハッタンからブロンクス、クイーンズ、ブルックリン、そしてスタテンアイランドまでの64kmのコース。交通規制により車を締め出して行われる。チケットは発売と同時に瞬殺。参加者は3万人をこえるという北半球最大のライドイベントだ。憧れの街を自分の自転車で走りぬけるなんて、考えただけでもワクワクする。 2024年5月5日の本番当日。朝5時過ぎにホテルを出発。心配された雨は、降らなかったが、かなり寒い。長袖ジャージにジレ、ウインドブレイカーを羽織っていても、冷たい空気が刺すように入り込んでくる。会場に着くと、映画でよく見る蒸気がもうもうと立ち上っている。そうそう、これこれ。こうでなくっちゃ。ここはニューヨーク。その寒さすら僕の心を踊らせるのだ。 会場には、すでに多くのライダーが集まっていた。 スタートラインの近くには、VIPエリアが設置されていた。ソーセージなどのホットミールからフルーツ、そしてグラノーラまで、食べ物が豊富に用意されている。かなりの豪華さだ。ゲストライダーである僕もVIPに混じって、ベーグルとフルーツをいただいく。 朝食を終えて、スタート地点に向かうと、夥しい数のライダーが集まっている。通りのずーっと奥までヘルメットで埋め尽くされていて、胸が熱 […]

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EVENT
2分で分かる!「バイクニューヨーク」

こんにちは。HONOLULU CENTURY RIDE 2023に続き、第二回目の「INFOGRAPHIC GUIDE*」をお届けします。*INFOGRAPHIC_視覚的にわかりやすいイラストやグラフなどを用いて情報を伝える手段 今回は今年の5/5(日)に開催予定の、通称「BIKE NEW YORK」について。このイベントはアメリカ・ニューヨーク市で開催される北半球最大のサイクリングイベントです。5つの区(BORO)を巡ることから大会の正式名称は「TD FIVE BORO BIKE TOUR」と名付けられ(TDはメインスポンサーであるTD Bankの頭文字)、全米のライダーが待ち焦がれる大イベントです。 初開催は1977年。当時は自転車の教育プログラムから端を発したイベントで、参加者は高校生と自転車クラブの会員による約200名でした。5つの区を巡り、距離は50マイルほど。それが翌年のニューヨーク市市長の交代に伴い自転車乗車が促進された影響で、走行距離は家族連れでも走りやすい40マイル(約64km/現在の距離)に制定されたそうです。「FIVE BORO BIKE TOUR」という大会名もこの年から制定されました。 2024年は第46回目の大会となります。現在の主催はニューヨーク市でサイクリングを推進する非営利団体「Bike New York」。コースの一般道や高速道路、橋をカーフリー(自動車通行止め)にするため、初心者や親子でも気軽に参加することができます。コースを見てみましょう。 出発はマンハッタンのダウンタウン、バッテリーパーク。6番街(Avenue of the Ameri […]

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