四国一周1000kmをライドする
〜グラベルオタクが行くウルトラディスタンス〜

皆さんが今まで自転車で行った一番遠い場所はどこですか。
駅を2つ越えた先にあるコーヒー屋、電車で1時間の会社、はたまた県境を越えたあたりまで。
おそらくこの記事を読んでいる読者の方々はきっとこう考えていることでしょう。
「いやいや、そんなの近すぎる。もっと走れるぜ。」
ロードバイクなどのスポーツバイクを手に入れると、ついつい遠くまで走りたくなります。気がつくと、50km、100km、200kmと壁を越えて走れるようになり、これまでの世界が拡張されることに満たされていくのではないでしょうか。

では、1000kmはどうでしょう。
途方もない距離でしょうか。東京から1000kmあれば北海道や九州までも射程距離に入ります。
「そんなの遠すぎるよ」って? 大丈夫です。これから私が数日間で4桁の距離を走る世界をお見せします。

目次

1.「BRM1012近畿1000km徳島 四国一周」とは?
2. 温玉ねぎとろの走行スケジュール
3. いよいよ、1000kmへの旅立ち
4 . 最も辛かった場所
5. 飛び抜けて最高だった瞬間
6. この世のものとは思えないほど美味しかったもの
7. 自転車で1000km走るということ

1.「BRM1012近畿1000km徳島 四国一周」とは?

「シコイチ」の愛称で知られる四国一周。コースどりの微妙な差はありますが、香川、徳島、高知、愛媛を周ってほぼ1000kmになる、距離的にも達成感を得やすいコースです。

今回のルートはこちら

今回は世界一ブルベの開催数が多いオダックス近畿が主催する「BRM1012近畿1000km徳島 四国一周」にエントリー。同コースは七年に一度の周期で開催されており、今回は3回目となります。

ルートは至ってシンプル。徳島県をスタートして反時計回りに四国を一周するコース。
これを制限時間75時間以内で走りきります。
もちろんノーサポートのため、エイドステーションや救援車などは基本的にはありません。時々、ご厚意で主催者の方からご当地のお菓子等をいただくことはあります。

2. 温玉ねぎとろの走行スケジュール

1000kmを走行するにあたり、私のスケジュールを一例としてご紹介します。
初日にスタートしてから宿泊は500km地点の宿毛市と780km地点の高知市の2回のみ。2泊4日のスケジュールで走行しました。

宿毛の宿

「2泊4日ってなに?」という声が聞こえてきそうですが、追い風を最大限に活かすため、初日にスタートをしてからは28時間ほど連続して走行。宿で眠らずに500kmを移動したため、結果として2泊4日での走行となりました。
宿で宿泊した際の休憩時間は一回あたり5時間程度でそのうちの3時間が睡眠時間です。残りの2時間はシャワーや食事、準備など諸々の時間とし、今後はこの2時間をいかに削減するかが課題と感じています。

もちろん上記の私のスケジュールは一例で、参加者によって千差万別。

私が出会ったほかの参加者は全く宿を取らず、仮眠だけで走行する方や、3泊4日で走行される方もいらっしゃいました。睡眠時間・宿泊については自身の走力や環境、体調などの変数によって変化するため、一概に正解というものはないと思います。とはいえ、いかに長く睡眠時間を確保するか、一回の休憩で疲れを取ることができるかが勝負の分かれ目となってきます。

チェックポイントを通過した際の記念メダル

今回の四国一周1000kmでは厳しい出走条件があります。
2023/11/1~2024/10/1の期間中に200km(以上)/300km(以上)/400km(以上)/600km(以上)の4つの認定取得が必要というもの。
この厳しい出走条件を満たした猛者だけがスタート地点に立つことが許されます。

3. いよいよ、1000kmへの旅立ち

徳島市に開設されたスタート受付。
全国から厳しい参加要件をクリアした約100名の猛者たちが集いました。各々選りすぐりの自転車と装備を準備し、スタート時間が来るのを待ちます。さながらお祭りのような雰囲気。今から始まる壮大な物語に心が高鳴ります。

4 . 最も辛かった場所

東西に延びる稜線。急激なアップダウンを繰り返す

この段階から辛かったいう報告であれですが笑。
もちろんただ楽しいで走りきれるほど1000kmは甘くありません。
今回の1000kmを走るに当たって最も辛かった場所はと聞かれたら、私は佐多岬半島と答えます。佐多岬半島は愛媛県の西端にある東西50kmほどに伸びる半島です。
急なアップダウンが永遠と続き、四国を一周する際は往復をする必要があります。
今回私が走行をした際は300km以上夜通し走り、朝方に佐多岬半島へと挑んだため、登りでは暑さに。下りでは寒さに苦しめられることになりました。

5. 飛び抜けて最高だった瞬間

気温の上下に苦しみながら挑んだ佐田岬半島で、朝日を迎えた瞬間は「救われた。」と感じましたね。
汗で濡れた体が冷え切り、眠気と疲れで憔悴していた私にとって、背後から太陽の明かりが見えた瞬間は生きていることへの感謝を感じずにはいられませんでした。

6. この世のものとは思えないほど美味しかったもの

自転車旅・ロングライドの楽しみといえば食事です。中には食事のために走っているという人もちらほら。
1000kmのブルベは、終盤の950km地点で食べた「あめご寿司」が絶品でした。
主催者の方々が開設している通過チェックポイントでいただき、タンパク質と柚子酢の効いたあめご*は疲れきった身体に沁みこみました。
思い切り顔から勢いよく食べてしまったので、周りの方からは少し笑われてしまいました。
*アメゴ_西日本に分布する日本特有の淡水魚。四国(特に高知、徳島)の名産の一つとして挙げられる

7. 自転車で1000km走るということ

1000kmもの道を自転車で走る…
それは自己との対話を繰り返す旅なのかもしれません。

闇に包まれた深夜の山間部、霧と雨に包まれた静かな田舎道。
孤独な世界でふと話しかけてくる声が聞こえたら、きっとそれは自分自身の心の声だと思います。
普段の生活では雑音に掻き消されている小さな声が、困難な挑戦をする上で背中を押してくれます。

それは出会いと別れの旅なのかもしれません。

ゴールまでの道のりは気が遠くなるほど遠いです。自分自身との対話を進めながら足を回しても、時には自転車から降りてしまうこともあります。
そんな時、同じゴールを目指す走者と出会うと、無意識に一緒にペダルを回して前進しています。普段の生活では交わることがない仲間とお互いに励まし合いながら進む共闘。
旅が終わりそれぞれの生活へと戻っていくまでの短い共同戦線です。
「早く行きたければ、一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」という声が聞こえてきます。

ゴール後の会場前にて。次回は6年後、2030に!

参考文献
https://audax-kinki.com/24brm1012_1000/

Text_Negitoro Ontama


愛媛県、香川県、徳島県、高知県の四国4県は「CHALLENGE 1,000kmプロジェクト」を開催中。エントリーから3年以内に四国一周を達成すると、愛媛県自転車新文化推進協会から「完走証」と「記念メダル(バックル式)」がプレゼントされます。詳しくは公式webサイトをご覧ください。

四国一周サイクリング
https://cycling-island-shikoku.com/index.html

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Profile

温玉ねぎとろ
大阪府堺市出身。会社員・ライター・ブログ「自転車旅行研究会」管理人。幼少期から自転車に旅の荷物を載せたキャンプツーリングを行っており、国内のほとんどの都道府県を走破。また、大学在学中は自転車サークルに所属しており、ソロで10カ国以上を自転車で来訪。輪行経験豊富。2023年には厳冬期北海道を自転車で縦走するなど、エクストリームなキャンプツーリングを行う。近年はロングライドにも力を入れており、2023年にはブルベでSRを取得。2024年のGWには1900kmのブルベも完走している。今後はPBPやLELの完走を目指しつつ、海外キャンプツーリングも積極的に行っていく予定。

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