海外でもロードバイクに乗ってみたい
Honolulu Century Ride 2023 参戦記
#2 輪行、それはいつも悩ましい(後編)

ひょんなことからハワイへ行くことになり、人生初の海外輪行をすることになった。サイクリストにとって輪行はいつも悩ましいものだ。前編では、ロードバイクを何でカバーして輪行するのか、その決断と、最強の輪行アイテムのひとつである、シーコンの堅牢さをお伝えした。

しかしここから次の悩みが始まった。

それは空港までのアクセスである。

通常であれば、公共交通機関を使ってアクセスするのであるが、シーコンのサイズでは、かなりの困難が予想される。まず家から駅までタクシーで運び、そこから乗り継いで羽田を目指すのであるが、リュックを背負い、スーツケースをひっぱり、そしてシーコンをひっぱり、という手荷物大移動みたいなことになる。しかもエレベーターを探しての移動になりそうだし、電車が混雑でもしたら、かなりひんしゅくだろう。輪行をしたことのある人ならわかると思うが、電車が混んでくると、それはそれは針のむしろでグルグル撒きにされているような、申し訳ない気持ちになるのだ。しかも今回は夜のフライトで、日中ギリギリまで仕事があり、出発にあまり余裕を持たせることができない。これはかなりリスクが高いだろう。

考えていたら、あることを思い出した。

前の打ち合わせで、センチュリーライド百戦錬磨のプロデューサー渡辺さんは空港まで送る人もいるんですよ、と言っていた。なるほど、自宅から事前に送っておけば、たしかに安心だ。その手があったか!とJALのホノルルセンチュリーライドの特設サイトをくまなくみると、あった、これだ、自転車の空港宅配(自宅から日本の空港)】、いける、としっかり説明を読んでいくと、これもうまくいかないことがわかる。自宅から空港に運ぶ場合の荷物の大きさが、シーコンの場合は微妙に超えてしまうのだ。帰路は大丈夫なのだが、行きは使えない。そうかダメなのか…また振り出しに戻る。

ググってみると、サイクリストたちはシーコンの運搬に苦労しているようで、いろんな情報が出てくる。どの運送会社だと運んでもらえるとか、車だとどのサイズなら乗るとか、これまでの挑戦記録が綴られている。これはサイクリストの集合知だ。いつもサイクリストたちは、こうやって情報をシェアしあって、迷惑をかけないように、移動をしているのだ。あるブログをみつけた。それによると、どうやらジャパンタクシーという、少し背の高い例のタクシーならすぽっと乗るらしい。それならいっそ空港までタクシーで向かうか。それはそれで結構高くつく。まあでもロードバイクを運ぶためなら仕方がないか。

いやまてよ。うちの車はスモールなので乗らないが、ジャパンタクシーに乗るなら、大きめの車であれば良いのではないか。だったらレンタカーを借りて、杉並の自宅から空港まで運び、手荷物預かり所にバイクを預け、レンタカーを返しに杉並に戻り、もう一度、公共交通機関で空港を目指せばいい。妙案だが、かなり面倒だ。これだと半日がかりだ。

そこで大学生の弊息子にドライバーをしてくれないか、頼み込む。
するとあっさりオッケーが出た。

というわけで出発当日。レンタカーのTOYOTAノアを借りた。

後部座席にシーコンを詰め込むとすんなり入る。当たり前だが、スーツケースも、リュックもあっさり入る。おお、これぞ最適解だ。

空港に着いてさえしまえば、そこから先はシーコンは無敵だ。キャリーがついているので、実にサクサクと移動できる。

少し早く着いたので、事前に調べておいた空港の一時預かり所にシーコンとスーツケースを預ける。こんな窓口があるなんて、知らなかった。ちなみにシーコンの一時預かりが1000円、スーツケースが400円だった。お礼に弊息子にお寿司をごちそうする。タクシーで来たと思えばお釣りがくる。

JALのカウンターでのやりとりも思ったよりスムースだった。センチュリーライドへの参加者は、事前にサイトから申し込んでおけば、無料でハワイまで自転車を運んでくれる。普通の手荷物となんら変わらず、預けることができた。
かくして、初の海外輪行となるハワイへの旅は、無事に幕をあけたのであった。

ちなみに、JALのカウンターでは、同じくセンチュリーライドに参加する人たちを数組見かけたが、専用ダンボール、またはプラスチック製のケースが多かった。これだと空港に事前に送っておくことができるのだろうし、大きな車に乗せてくることも可能だ。空港まで運べさえすれば、キャリーで運ぶことができる。海外への輪行をそれほどしないのであれば、それもありだろう。

そんなこんなで、8時間ほどのフライトを経て、ハワイ到着。

ぼくのロードバイクは、初めて海を渡った。ハワイの空港でバイクを受け取った時は、感無量だった。

シーコンという新しいギアを手に入れたぼくは、これから国内外の輪行で積極的に使うだろう。休日での移動なら、次は公共交通機関での移動にもチャレンジしてみたい。国内であれば、宿泊先に直接送っておくことも可能だ。

何度も飛行機による輪行をするのであれば、かなりおすすめのギアだ。

というわけで、この次は、ホノルル・センチュリー・ライド初参戦の記録をお届けする。

Text & Photo_Daisaku Kawase

🚴‍♂️Honolulu Century Ride 2023 参戦記🚴‍♂️

#01 輪行、それはいつも悩ましい(前編)
#02 輪行、それはいつも悩ましい(後編)
#03 ハワイは、ものすごくハワイだった
#04 初めてハワイでのライド 試走編

#05 ライド!ホノルル・センチュリー・ライド!

Profile

河瀬大作/Daisaku Kawase
フリープロデューサー、(株)Days 代表
愛知県生まれ。ロードバイク歴16年、絶景ライド好き。仕事の合間を縫い、自転車担いで全国へ出かける。愛車はトレック。NHKでプロデューサーとして「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「おやすみ日本 眠いいね」「あさイチ」などを手がけたのち2022年に独立。番組制作の傍ら、行政や企業のプロジェクトのプロデュースを行う。

FEATURE EVENT
HONOLULU CENTURY RIDE 2025
PHOTO ALBUM 🌈 【前編】

9月28日(日)、6:15。気温は約25℃。 今年も日の出と同時にスタートが切られたホノルルセンチュリーライド。終始夏を感じる晴天のライド日和となった今年は、ことさらに輝く海と空の色が最高のギフトに。ペダルを止めて何度も何枚も撮影してしまうライダーの姿が印象的でした。久しぶりに新ルートとして加わったハナウマベイルートから見下ろす海岸ぎわの景色も「ザ・ハワイの大自然」を感じさせる圧巻の眺め。 ライダーたちの晴れやかな笑顔と共に、歓声とため息が入り混じったナイスビュー連続のホノルルセンチュリーライド2025全景をフォトアルバムでお届けします。 まずは往路80kmの半分、40km地点までの「Ike nani /イケ・ナニ」(ハワイ語で「良い眺め」)を詰め込んだ【前編】をごらんください。*HONOLULU CENTURY RIDE 2025 PHOTO ALBUM 🌈 【後編】はこちらから Text_Global Ride Editorial TeamPhoto_HONOLULU CENTURY RIDE / HM-A 01 Start Point スタートはワイキキビーチ沿いにあるカピオラニ公園。朝5時過ぎから続々とライダーが集まり始め、太陽が昇るにつれ徐々に熱気を帯びていく。 02_Diamond Head ダイヤモンドヘッドは一つ目のルックアウト(展望台)。ちょうどここへ差し掛かる頃に水平線から太陽が顔を出しきる。何度来ても写真をとってしまう瞬間。 03_Kahala 高級住宅街が広がる静かな海辺のリゾートエリア。南国の花が咲き乱れる白い塀やチューダー様式の歴史的邸宅間を潜り抜け […]

#Hawaii
FEATURE EVENT
速報 ホノルルセンチュリーライド2025
ペダルを踏めば、あなたの知らなかったハワイに包まれる!

9月28日午前5時45分。ここはホノルルのワイキキビーチ沿いにあるカピオラニ公園。開幕まで30分を切ったスタートゾーンでは、「一年ぶり!元気でした?」「今年も無理せずがんばろうね!」など、まるで旧友との再会を喜ぶような挨拶、「彼、今年やっと初参加なのよ」といった新しい出会いが誕生する会話で溢れていました。 まだ暗く、お互いの顔も会場に取り付けられたライトで見えているくらいの時刻。しかし、スタートゾーンの雰囲気は極めて明るい。これからそれぞれが「ホノルルをライド」という年に一度のご褒美を享受しに出かけることを、称え合うような、祝い合うような、そんな明るさです。 とくに、今年は天気にも恵まれました。日中の気温は約34度、湿度は52%。例年より少し暑く湿気が多いものの、イベント中はまったく雨が降りませんでした。雨であっても、ハワイを感じる喜びに変えられるホノルルセンチュリーライドですが、今年、晴れであったことには大きな意味がありました。 それは、新設されたハナウマ湾ルート。過去に一度だけ州警察から許可が降りたことがあったのですが、曲がりくねった下り坂のうえ、道幅が狭く、交通量が多いということもあり、その翌年から解放されることはありませんでした。 ところが、今年はイベントを主催するハワイバイシクリングリーグの懸命な働きかけがあって、車両を通行止めにしたうえで開放されました。そのルートの美しさといったら……。 とにかく、2025年のホノルル・センチュリーライドも、スタート前とスタート直後から「来てよかったー!」と叫びたくなるような(実際に言葉にならない感嘆の声をあげている人が続出)、最高 […]

#Brompton
FEATURE EVENT
海外でもロードバイクに乗ってみたい
Honolulu Century Ride 2023 参戦記
#5 ライド!ホノルル・センチュリー・ライド!

人生でこんな日がくるなんて、思いもしなかった。 40年の歴史を誇るホノルル・センリュリー・ライド(以下HCR)にゲストライダーとして招かれることになるなんて。しかもそのライドが番組のためにプロの制作チームに記録されるなんて。

#Japan #Hawaii