New York City 自転車で巡るコンテンポラリーアート

僕はニューヨークに25年ほど住んだことがあったのだが、当時は美術関連の仕事をしていたということもあり、ギャラリーや美術館を見て回るのに自転車ほど有効な移動手段はなかった。周知のとおり、ニューヨークは世界的に有名な美術館や博物館が多い街ということで、今回は自転車でコンテンポラリーアートを巡るお薦めのルートを提案してみたい。

まずは、通称「ミュージアム・マイル(Museum Mile)」と呼ばれているセントラルパーク沿いの5番街と89丁目へ。そこで目にするのが巻貝のような異様な外観が目を引くのが「グッケンハイム美術館(the Guggenheim Museum)」だ。設計はアメリカを代表する建築家フランク・ロイド・ライト。ここは世界遺産にも指定されている凄いところなのだが、その際立った外観から想像できるように螺旋状のスロープを降りながら壁面の作品を鑑賞するという稀有な美術館は必見だろう。

そのまま5番街を南に下りて西47丁目にあるのが、MoMAとして親しまれている「ニューヨーク近代美術館(the Museum of Modern Art)」で、近代と現代アートの世界では最も権威のある美術館であるのは誰もが認めるところだ。コレクションも当然ながら一級品ばかり、ゴッホやピカソやマチスといったヨーロッパの巨匠から、アンディ・ウォーホル、ジャクソン・ポロック、ジャスパー・ジョーンズなど、時代を超えた名作から現代アートの最先端までが一堂に揃うまさにアートの殿堂である。

一方、コンテンポラリーアートのメッカが、空中公園ハイライン(the High Line aerial park)の所在地として知られるチェルシー地区だ。ここには無数のアートギャラリーが点在していてアート界の最前線を体感できる。ギャラリーといってもGagosianやPACE Galleryなど、美術館にも負けず劣らずの広大な空間には圧倒されるはず。さらに、このエリアの南側には「ホイットニー美術館(the Whitney Museum of American Art)」がある。ここを設計したのがガラスのブロックで覆われた銀座のエルメス本店を手がけたことでも有名なレンゾ・ピアノだ。アート鑑賞だけでなくテラスからはマンハッタンの眺めが堪能できるランドマークだ。

🚲🚲🚲Tribeca地区のパブリック・アートを観る🚲🚲🚲

アニッシュ・カプーア(Anish Kapoor)「Untitled」/ 56 Leonard Street
トライベッカにある高級コンドミニアムの一部として制作されたもの。
通称「ニューヨーク・ビーン」、建物の入り口の押しつぶされたシルバーに輝くオーガニックな彫刻。


そして最後に紹介するのが、ダウンタウンにある白い箱を不規則に積み上げたような建物が一際目を引く「ニュー・ミュージアム(the New Museum)」だ。日本人建築家の妹島和世と西島立衛によるSANNAが設計を手がけたのだが、「新しいアート、新しいアイディア」をコンセプトに実験的な作品の展示で知られ、この美術館の周辺は比較的若いアーティストたちの作品を取り扱うギャラリーが点在しているので、自転車で見て回るのにも楽しいエリアである。
*現在、the New Museumは工事のため一時閉館中。リニューアルオープンは2025年初頭予定。

2025年初頭に7階建、60,000㎡に増床される

🚲🚲🚲Financial Dictrict 地区のパブリック・アートを観る🚲🚲🚲

イサ・ゲンツケン(Iza Genzken)「Rose Ⅲ」/ Zuccotti Park
スイスで摘んだ黄色いバラを基にした高さ26 フィート、重さ1,000 ポンドのドイツ人アーティストの作品。
六本木ヒルズにも同じようなバラの彫刻が常設されている。

イサム・ノグチ(Isamu Noguchi)「Red Cube」/ 140 Broadway
周囲のそびえ立つ建物と競合するかのように置かれた赤いキューブ。
中心にある円筒形の穴からは、真後ろにある建物を集中して見ることができる。

🚲🚲🚲ハーレム地区のパブリック・アートを観る(ぐるっと北上します!)🚲🚲🚲

キース・ヘリング(Keith Haring)「Crack Is Wack」/ E 128th Street at 2nd Avenue
マンハッタン東部のハーレムにあり、ニューヨークでまだ見ることができる
ヘリングが直接描いた最後のオリジナルのパブリックアート作品。


Text_ Taka Kawachi


表紙の作品

In every language there is Land / En cada lengua hay una Tierra(Nicholas Galanin)2023

5月5日に開催されるBIKE NEW YORK 2024のコース内のエイドステーションのひとつがブルックリン橋公園(Blooklyn Bridge Park)。2023年、ここに新たな作品が設置されました。作者はアラスカ出身のニコラス・ガラニン。先住民族としてのルーツから土地の文化や移動の自由をテーマとしているアーティストです。英語とスペイン語から成るタイトルにもその思想が反映されており、本作品の素材はメキシコ国境に建設された壁の鋼が使用されているとのこと。マンハッタン名物の「LOVE」(Robert Indiana)に代わる新名所となるでしょうか。
*「LOVE」は保存のため2019年に撤去されています。

Text_編集部


🚲本日のコース  ※実際に走行した順番とは異なります

Profile

河内タカ / Taka Kawachi
アートライター。高校卒業後、サンフランシスコのアートカレッジに留学。NYに拠点を移し展覧会のキュレーションや写真集を数多く手がけ、2011年に30年間に及んだ米国生活を終え帰国。海外での体験をもとにアートや写真のことを書き綴った著書『アートの入り口 』(太田出版)や『芸術家たち』(アカツキプレス)を刊行。ニューヨーク時代から現在にいたるまで自転車が生活の基盤となっている。

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Australia / Queensland Information

世界遺産に登録された100万年の熱帯雨林も見られる、豊かな自然を持つオーストラリア、クイーンズランド州。日本からの時差わずか1時間のこの地域は、地球上の他の場所では決して味わえない体験ができる場所。自然、自分自身、そして大切な人との絆を再発見することができます。もちろん、大自然を駆けるライドイベントも充実しています。 Podcastも放送中のクイーンズランド州政府観光局公式サイトはこちら:https://www.qeensland.com/jp/ja/home 1. ライドイベント2. 航空会社3. ツアー4. レンタサイクル 1. ライドイベント Port Douglus Glan Fondo世界自然遺産に認定された「グレートバリアリーフ」と「クイーンズランドの湿潤熱帯地域 」(世界最古の熱帯雨林)を通るコースを、風を切りながら爽快に走るオーストラリアのライドイベント。2024年は9月8日(日)開催。https://portdouglasgranfondo.com.au/ 2. 航空会社 オーストラリアのゲートウェイであるケアンズと羽田間を毎日運航中ヴァージン・オーストラリア航空 3. ツアー 2つの世界遺産をもつケアンズのツアーを提供HIS 4. レンタサイクル クイーンズランドでのレンタサイクルレンタサイクル Port Douglas Bike Shop & Hire

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BRISBANE CYCLING FESTIVAL 2024
ローカルサイクリストAYAKAの現地レポート【前編】

ブリスベン在住のAyakaが、パートナーのYoshiと共に地元サイクリスト目線で「ブリスベン・サイクリングフェスティバル」と街の魅力をお伝えします。前編ではブリスベンの川沿いサイクリングとサイクル・エキスポの様子をレポートします。 目次 1  太陽の州・ブリスベン2 日本からブリスベンへのアクセス3 リバーウォークで水上サイクリングを味わう4 ブリスベンにサイクル・エキスポがやってきた! 1 太陽の州・ブリスベン シドニー、メルボルンに次ぐオーストラリア第三の都市、ブリスベン。ブリスベンが属するクイーンズランド州は「サンシャイン・ステート」(太陽の州)とも呼ばれるほど、晴天率が高いことで知られています。 そのためか、ケアンズのトライアスロン大会やゴールドコーストのマラソン大会など、スポーツイベントの開催が盛んです。州都でもあるブリスベンでは2019年から3月〜4月にかけ街をあげてのブリスベン・サイクリングフェスティバルが催されます。 2024年は3月15日から4月16日の約1ヶ月間にわたり開催されました。期間中はオーストラリア国内のトラック・チャンピオンシップとロードレースのシリーズ選手権、UCIグランフォンド・ワールドシリーズのほか、サイクル・エキスポ、一般市民も参加可能なライドイベント「ツール・ド・ブリスベン」やファミリーライドなど、自転車関連のイベントが市内各所で催されました。 2  日本からブリスベンへのアクセス 日本の方にとってメルボルンやシドニーはお馴染みでも、ブリスベンという都市は初耳の方もいらっしゃることでしょう。冒頭でもお伝えしたとおり実は大都市で、 […]

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