Breezing Through Setouchi in Ehime
#01 愛媛・潮風と山を堪能できる11のサイクリングロード

サイクリングパラダイスとして知られる愛媛県、行かれたことはありますか。瀬戸内海を望む温和な気候と自然豊かな風土に恵まれ、CNNの「世界7大サイクリングロード」の一つに選ばれた「しまなみ海道」をはじめ、県内には海と山を走り抜けるたくさんのサイクリングロードがあります。

四国の瀬戸内海側、北西部に位置し、四国4県で一番人口が多い愛媛県。瀬戸内海の海風を感じる穏やかな気候によってミネラルたっぷりの土壌で育つ「みかん」の生産地として有名で、海と山に囲まれた自然が広がります。また、宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』のモデルにもなった道後温泉や松山城など歴史を感じる場所も多く残されています。そんな愛媛の魅力的なサイクリングロードを連載でお届けするこの企画。1回目の今回は、県内の11のサイクリングロードを一挙にご紹介します。

目次

 1. 別子・翠波はな輪道
 2. 石鎚山岳輪道
 3. 今治・西条ゆうゆう輪道
 4. 今治・道後はまかぜ海道
 5. 伊予灘・佐田岬せとかぜ海道
 6. 内子・中伊予さとやま輪道
 7. 奥伊予・肱川清流街道
 8. 宇和海しおさいオレンジ輪道
 9. 宇和島・四万十だんだん街道
 10. 愛南さんさん輪道
 11. しまなみ海道サイクリングロード

1. 別子・翠波はな輪道

スタート地点:マイントピア別子(愛媛県新居浜市立川町707-3)
県の東側にある「別子・翠波はな輪道」は、全長87.7kmで、標高1,500~1,700mの山々を囲むように走るコースです。日本三大銅山のひとつである別子銅山跡を利用した道の駅「マイントピア別子」からスタートして、まずは大永山を登ります。

東平歴史資料館

360度以上ぐるっと回る珍しいループ橋を越えると、「東洋のマチュピチュ」と言われる別子銅山の巨大な産業遺跡群を見ることができ、歴史資料館もあります。スタートから大永トンネルまでは一気に上りが続きますが、それを乗り越えれば緩やかなアップダウンで緑豊かな川沿いを走り抜けます。秋は美しい紅葉も見どころ。

2. 石鎚山岳輪道

スタート地点:四国鉄道文化館(愛媛県西条市大町798-1)
西日本最高峰で日本百名山の一つである石鎚山(標高1982m)を望めるこのコースは、穏やかな上り坂が長く続き、急カーブやアップダウンも多いため、持久力と技術力のある上級者向けです。

町道瓶ヶ森線

途中、標高1,300m〜1,700mの尾根沿いを走る町道瓶ヶ森線・通称UFOラインは、さえぎるものが何もない天空の絶景道として知られ、晴れた日には瀬戸内海から太平洋側の土佐湾まで一望できます。全長146.6kmかつ難易度も高いコースですが、高度ごとに違った植生が見られる豊かな森や愛媛の秘境・滑川渓谷、前述のUFOラインと、景観の美しさは格別です。

3. 今治・西条ゆうゆう輪道

スタート地点:道の駅 今治湯ノ浦温泉(愛媛県西条市大町798-1)
全長67.8kmのコース全体でアップダウンが少なく、初心者も楽しめるコースです。なだらかな市街地の国道と穏やかなアップダウンのある山里の県道・市道を巡ります。棚田が広がる田園風景など懐かしくのんびりした景色が広がります。

タオル美術館

コース前半にある「タオル美術館」は、タオルとアートを融合したフォトジェニックな展示がSNSで話題となり、人気の立ち寄りスポットです。また、湯ノ浦温泉、鈍川温泉、本谷温泉という3つの温泉地を経由し、日帰り利用ができる温泉施設も多くあるので、疲れたら温泉でゆっくり休憩ができるのも魅力。

4. 今治・道後はまかぜ海道

スタート地点:サイクリングターミナル サンライズ糸山(愛媛県今治市砂場町2-8-1)
サイクリストの聖地「しまなみ海道」のある今治市と愛媛の中心地・松山市をつなぐ海岸線のサイクリングロードで、美しい瀬戸内海を横目に眺めながら走ることができる気持ちの良いコースです。爽やかな潮風と太陽に輝く青い海、夕方には夕日に染まったオレンジ色の海と、瀬戸内海の美しさを堪能できます。

道後温泉

松山市では世界最古の温泉と言われ、宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」のモデルにもなったと言われる道後温泉で疲れた身体を癒しましょう。全長52.1kmで高低差が少ないので初心者にもおすすめですが、海岸沿いの国道196号線は路肩が狭く、交通量が多い時は注意。

5. 伊予灘・佐田岬せとかぜ海道

スタート地点:伊予市しおさい公園(愛媛県伊予市森甲91-1)
四国最西端にある「日本一細長い」佐田岬半島の先端を目指す全長81.8kmのコース。前半の海岸線は比較的平坦で、穏やかな海域「伊予灘」の青い海と沿道を彩る四季折々の花が楽しめます。

道の駅ふたみ

後半は新長浜大橋を越えると起伏が激しくトンネルも多いので中上級者向けですが、細長い半島の道からは両サイドに海を眺めることができます。南を向けば太平洋、北を向けば瀬戸内海と、他にはない風光明媚なサイクリングロードで、唯一無二のライド体験ができます。

6. 内子・中伊予さとやま輪道

スタート地点:砥部衝上断層(愛媛県砥部町岩谷口450)
伝統工芸品の陶器「砥部焼」の発祥地・砥部町からスタートする全長82.6kmのコースです。国の天然記念物に指定されている珍しい逆断層を見ることができる日本最大の断層「砥部衝上断層」がスタート地点で30kmまでは上りが続き、そこから40kmの内子町までは下りです。

道の駅 内子フレッシュパークからりにある吊り橋

和ろうそくの原料などに使われる木蝋(もくろう)の生産によって栄えた内子町には、当時の面影が残る歴史的な街並みが今も残された八日市・護国地区があり、国の重要伝統建造物群保存地区に指定されています。町家を改築した宿泊施設などもあり、タイムスリップしたような街並みの中でゆっくり滞在するのもおすすめの場所です。内子町を出ると山道を上り、砥部町へ戻るまで大きなアップダウンが繰り返されるので後半は体力勝負。

7. 奥伊予・肱川清流街道

スタート地点:長浜港(愛媛県大洲市長浜)
海から高知県の境目近くへ向かって走る高低差の少ない道で、交通量も少なく初心者にもおすすめの62.3kmコースです。伊予の小京都と呼ばれる大洲市内を経由し、日帰り利用が可能な温泉や道の駅があるので休憩場所には困りません。

長浜の赤橋

この肱川ルートは坂本龍馬が脱藩した時に通った道と言われる街道で、山へ進むほど美しい清流の自然を堪能しながら走ることができます。肱川にかかる赤い色が目を引く「長浜の赤橋」は、現役で動く日本最古の可動橋として有名。

8. 宇和海しおさいオレンジ輪道

スタート地点:八幡浜港(愛媛県八幡浜市沖新田)
八幡浜市から西予市へと続く前半は、ジグザグが楽しいリアス式海岸、南国のような雰囲気のあけはまシーサイドパークなどを走り、宇和海の美しい景観が堪能できる海側コース。後半は、小刻みにアップダウンを繰り返しながら山を上ります。宇和海を一望できる絶景ポイントの法華津峠はおすすめの立ち寄りスポット。

.卯之町の町並み

そして、歴史を感じる卯之町へ。明治時代の小学校舎を教育資料館として解放している開明学校や、美しい白壁の伝統的な建築様式が残る町並みを散策できます。海・山・里を一度に回れて、多様な景色が楽しめる81.4kmのコースです。

9. 宇和島・四万十だんだん街道

スタート地点:蒋渕(愛媛県宇和島市蒋渕)
宇和海に突き出した蒋淵半島の先端部からスタートし、宇和海沿岸を通って最後の清流と言われる高知県の四万十川の源流へと走る全長108.7kmのコース。半島の中ほどにある「遊子水荷浦地区の段畑」は、「日本農村百景」にも選ばれている段々畑で、下から眺めるだけでも圧巻ですが、自転車で上まで登ることができ、急な斜面から見下ろす港の風景は一見の価値あり。

遊子水荷浦地区の段畑

木々が生い茂る山道を登った後は、四万十川に沿って下り坂です。このコースには2つのルートがあり、初心者向けのルートも。蒋渕港を経由する日振~宇和島航路や予土線の一部列車は、自転車をそのまま載せることができる「サイクルトレイン」が試験運転中なので、初心者も安心。電車をうまく活用すれば移動距離も拡大できます。

10. 愛南さんさん輪道

スタート地点:山出憩いの里温泉(愛媛県南宇和郡愛南町緑乙4082)
愛媛県の最南端にある愛南町にあるコース。スタート地点からまずは緑豊かな山間部を走ったあと、海へ向けて美しいリアス式海岸に沿った道を進みます。

高茂岬

海側のコースでは、100mを超える断崖の高茂岬や漁業集落が見どころ。なかでも台風や季節風から家を守るために高い石垣で囲まれた外泊地区の独特な町並みは必見です。全長111.3kmという長さですが、自動車の交通量は少ない地域なので、のんびり海と山を堪能できます。

11. しまなみ海道サイクリングロード

スタート地点:サンライズ糸山(愛媛県今治市砂場町2-8-1)
サイクリストの聖地と言われる「しまなみ海道」は、国内外から多くのサイクリストが訪れる人気サイクリングロード。愛媛県今治市から広島県尾道市まで、7つの島を経由する全長69.9kmのコースです。「しまなみ海道」周辺には自転車走行の道標となるブルーライン(路面表示)があり、主要目的地までの距離や方向の表示もあるので、旅行者でも迷わず進めます。

伯方・大島大橋

島と島をつなぐ雄大な橋の上はコースの中でもいちばんの魅力。360度の瀬戸内海を感じながら進む爽快な絶景ライドです。道中にはレンタサイクルスポットに加え、休憩、給水、トイレや空気入れの貸出など「サイクルオアシス」としてサービスを提供してくれる地元店舗も充実していて、サイクリストが安心して楽しめる環境が整っています。

愛媛県内の魅力的な11のサイクリングロードをご紹介しましたが、いかがでしたか?次回は、四国在住のアメリカ人ライダー、ジェレミーが今回最後にご紹介した、外国人に一番人気の「しまなみ海道」を走ります。お楽しみに。


参考WEBサイト
愛媛マルゴト自転車道 https://ehime-cycling.jp
CYCLING EHIME https://cycling-ehime.com/

🚲Breezing Through Setouchi in Ehime Series
#01 愛媛・潮風と山を堪能できる11のサイクリングロード
#02 アメリカ人のジェレミーがライド!愛媛に行くなら、まずは「しまなみ海道」から



Text_吉村未来/Miku Yoshimura
香川県高松市出身、在住。東京、ハワイ、逗子に住んだ後、1年ほど前に地元へUターン移住。気候の良い四国でのライドの魅力をお届けします。

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