TVプロデューサー・河瀬大作のライドノート
博多絶品グルメをブロンプトンで巡る旅

目次

 1. 憧れの愛車・ブロンプトン
 2. 意外にも簡単で安心な輪行体験
 3. いよいよブロンプトンで博多巡り
 4. 「サザエさん通り」の磯野くん
 5. 自転車フレンドリーな福岡
 6. 博多の名店「うどん平」へ
 7. 旅ライドって最高!

1. 憧れの愛車・ブロンプトン

旅ライド、最近その楽しさに目覚めてしまった。

ロードバイクで大自然のなかを駆けるのはワクワクする。しかし旅先で街を巡るのは別の愉悦がある。名建築を眺めたり、カフェで一服したり、公園やお店巡るのも楽しい。

街乗りには車輪の大きなロードバイクは向いていない。ストップアンドゴーが気軽にできる小径車がいい。しかも旅ライドをするには輪行がしやすいほうがいいだろう。
 
そんなわけで…、アレを買った。

ブロンプトン・・・イギリスのバイクブランド。小径輪車の折りたたみ自転車でありながら高い走行性能を備えてる。自社工場のハンドメイドでサイズが一規格に統一されており、パーツ仕様も80年代から変わらないため一生の街乗りバイクとして最適。もちろん旅に同伴させれば、旅行の概念が変わること間違いなし

https://jp.brompton.com/


ブロンプトンである。

折り畳むのに慣れれば10秒。展開も10秒という簡単さ。畳んでしまえば、小型スーツケースほどの大きさになる。ざっくりと60㎝×60㎝×30㎝。駐輪するのが怖ければ、お店に持ち込んでもほぼほぼ嫌な顔をされない。しかも僕のはPラインで4速ギア。スピードもかなりでる。

 つまり、街乗り無敵。

買ってすぐにあることを考えた。 
ブロンプトンで旅ライドしたい。
旅慣れた場所でも、ブロンプトンとなら別の風景が見えてくるはずだ。最初に選んだのは、博多だった。

飛行機にのっての輪行を試してみたいし、美味しいモノめぐりもできる。街のサイズがちょうど良くて、少し足を伸ばせば海を望むことができる。そんなわけで博多へと向かった。

2. 意外にも簡単で安心な輪行体験

 ロードバイク乗りにとってリーマン予想ともフェルマーの定理ともいわれる、永遠の難題、それが輪行。車輪を外し、輪行バックにいれるのもそれなりに手間だし、ペラペラの輪行袋で安全に運んでもらえるのか、不安を抱える人も少なくないだろう。

 ブロンプトンは、その難題をいとも容易く突破した。
ブロンプトンの飛行機輪行のコツをあらかじめググッておいた。すると手荷物カウンターでお願いすれば、ブロンプトンがちょうどスポッと収まるケースにいれてもらえるという。

今回のフライトはJAL。

「これ自転車なんですが、ケースにいれてもらうことはできますか?」

手荷物カウンターで尋ねると、スタッフはにっこり笑って、プラケースを用意してくれた。確かにスポッと収まる。しかし、ちょっと隙間があり、グラグラとうごくので、動かないようにプチプチをいれてくれた。これは安心だ。倒されることもないし、上にずんと何かが乗っかる恐れもない。

さらに、今回は従価料金制度を使った。

 これは15万円を超えるものに関して適応される保険みたいなものである。1万円超過ごとに10円。例えば30万円の自転車の場合は、30万-15万=15万円、つまり150円を支払えばいい。

 こうすればより丁寧に運んでもらえることが期待できる。

JALのWebメディア「On Trip JAL」にも輪行についての記事が・・・
https://ontrip.jal.co.jp/chugoku-shikoku/17427923

 そんなこんなでいつにない安心感とともに福岡空港に到着。そこからホテルまでは地下鉄での移動だ。ロードバイクだと、どれほどコンパクトにまとめても、少し混み合った車両ではとても気を使う。しかし今回は、ドアの横のスペースにピタッと収まった。

 ブロンプトンの輪行は、本当に楽だった。
ちなみにこの輪行バックはサイドに取っ手がついていて、肩からかけて、その取っ手を掴めば、楽々と持ち上げることができる。こうした専用のグッズが多いのもブロンプトンの魅力のひとつだ。

 というわけで、ホテルに荷物をおき、ブロンプトン初輪行を祝うために、繁華街へと繰り出す。祝杯をあげたかったので、歩いてでかけた。お目当ては博多名物のひとつ、鉄鍋餃子。あらかじめお店にも目星をつけてあった。その名も「鉄なべ 中洲本店」。
 あっつあつを、特製のタレと柚子ごしょうでいただく。カリッカリの皮をかじると、肉汁がジワッと口いっぱいに広がる。好物のポテサラもこの店の名物らしく、たっぷりと量があってとても美味しい。

 この日は、ブロンプトン初輪行、そして絶品餃子のおかげで、満足感いっぱいで就寝した。

3. いよいよブロンプトンで博多巡り

 朝、Stravaを使って、あらかじめ30キロぐらいのコースをひいておいた。名所あり、グルメありの博多満喫ライドだ。

 朝9時前にホテルを出発。今回は中洲を起点にしたコース。最初に目指すのは、大濠公園。そこで朝ごはんを食べる。朝ごはんは旅ライドの楽しみのひとつ。ホテルでの朝ごはんも悪くないが、自転車に乗ってその街の朝ごはんを食べに行くのは格別だ。

 大濠公園は、その名の通り、かつては福岡城のお堀の一部だった。その名残か、広大な池があり、そこをぐるりと取り囲むように公園が整備されている。福岡市美術館があり、スワンボートがあり、ランニングコースがある。ちなみに福岡市美術館は、建築家・前川國男の設計によるもの。すっきりとした外観に、たっぷりとした空間の名建築。中にはいるだけなら無料なので、カフェでコーヒーを飲むのもおすすめだ。

 街が動き出す朝の喧騒のなかで、大濠公園はゆったりとした時が流れる。

福岡市立美術館

 朝ごはんに選んだのは、地元の食材にこだわったお店「アンド ローカルズ」。大きな窓が池の方に向いている開放的な店内には、お米やお味噌、お茶など地元の食材などを売っている。イートインスペースがあり、多彩ないなりずしが楽しめる。

 今回は「旅するおいなりセット」。

 おいなりがふたつ選べて、八女茶が付いてくる。
 ぼくが選んだのは、「福岡県 奥八女(おくやめ)椎茸柚子胡椒おいなり」と「鹿児島県 喜界島(きかいじま)在来種白ごまおいなり」。どちらも丁寧に作られたほっこりとする味わい。しかも朝は、あおさのりが入ったお味噌汁がサービスでつく。
 ランチ時にはかなり混雑するが、朝9時のオープン直後はわりと空いている。早起きは三文の徳だ。

「アンド ローカルズ」https://andlocals.jp/

 もち麦のぷちぷちした食感がうれしい。白ごまは香り豊か。柚子胡椒はしっかりピリリ。一口サイズなんだけど、お味噌汁もあるし、満足感はしっかりある。ランチには大人気だという、だし巻き卵のセットもある。めちゃくちゃおすすめ。

 お腹も満たされ、街ライドの次の目的地は、福岡市の西新地区に広がる元寇防塁(げんこうぼうるい)。その昔、チンギスハーンが攻めてきた時に、その侵入を防ぐために数キロにわたって築かれた壁だ。大濠公園から西陣地区を目指す。

 西南学院大学があるあたりに差し掛かると、みなれぬ看板が目に飛び込んでくる。

4.「サザエさん通り」の磯野くん

 なんだなんだ。どういうことなんだと、説明書きを見ると、どうやら近くに「長谷川町子先生が、サザエさんを着想した公園」があるらしい。大学の図書館の前には、長谷川町子先生とサザエさんが並び立つ銅像がどーんと立っている。

 せっかくだから、ブロンプトンと一緒にぱちり。

 再び元寇防塁を目指す。
 
 実はこのあたりには、防塁がかなりの長さで築かれており、その防塁跡が至る所にある。ぼくが訪ねた防塁跡は、松林のなかにあった。隣には元寇神社もあった。去年、対馬にいったときに、元寇が攻めてきて激戦地になったという小茂田浜を訪ねたこともあり、当時元寇というものが人々に与えた衝撃に思いを馳せた。あなたがもし歴史マニアであれば、ぜひ巡ってみて欲しい。 

 そこから海の方に向かう。百道浜とよばれる場所だ。道すがら、またサザエさんがらみのモニュメントがある。ひとりの若者が写真を撮っている。思いがけず、シャッターを押してもらえないか、と声をかけられる。もちろん!とアングルを思案していると、若者が突然こういった。

「ぼく、磯野っていいます」
「えええええ、磯野くん!」

 聞けば、福岡に遊びにきたのだが、サザエさん通りがあると知り、いてもたってもいられなくなったのだという。
 それにしても、これはすごいレアな体験だ。たまたま通りがかったサザエさん通りで、たまたま来ていた磯野くんがいて、その彼が声をかけてくれて、さらに名乗ってくれて、初めて成立する。

 こんな奇跡がおこるのも、旅ライドの面白さだ。

5. 自転車フレンドリーな福岡

 福岡の街はとても走りやすい。車道のはじっこに「ここは自転車が走るとこ」という表示が多くの道路に整備されていた。ドライバーも自転車に優しい。東京と違って道が広いのもいい。

 百道は、村上龍の小説「半島を出よ」の主な舞台になった場所だ。上下巻でとても読み応えのある小説だが、ある意味で村上龍の頂点だと勝手に思っている。緻密な考証によって、描写がとてもリアルなのだ。
 北朝鮮が日本を侵略するべく、特殊部隊を送り込んでくるのだが、海から上陸するのがこの百道だ。兵士たちはシーホークホテルに軍の本部を構える。対する日本の部隊との戦闘が行われるのだが、PayPayドーム(当時は福岡ドーム)と国立病院機構九州医療センターもその舞台となる。
 そんなことを思い返しながら、ペダルを回して行く。

 百道を抜けると、再び東へと向かう。

 目的地は、博多ポートタワー。福岡の都市高速から見えるあれである。ずっと上ってみたいと思っていた。ポートタワーというだけあって、博多の海の玄関である博多港に、それはある。博多と韓国の釜山(ぷさん)を6時間で結ぶ大型フェリー、『ニューかめりあ』が停泊していた。

 博多ポートタワーは意外と知られていないが入場は無料だ。エレベーターで展望台に上がると博多港、そして博多の街が一望できる。
 設計者は、戦後に活躍した建築家・内藤多仲(たちゅう)。内藤は、「塔博士」と呼ばれていて、東京タワー、通天閣、名古屋と札幌のテレビ塔、別府タワーなど有名な塔の設計を軒並み手掛けている。博多ポートタワーは、「タワー6兄弟の末っ子」と呼ばれているらしい。

 市内に戻った僕は、住吉神社へ。全国で最も古い住吉神社なのだという。福岡の繁華街から近いせいか、インバウンドのお客さんが多かった。パワースポットだというので、おみくじを引いてみたら中吉だった。

6. 博多の名店「うどん平」へ

 午後14時少し前。
 最後の目的地である「うどん平」へ。いつも並んでいる行列店だ。しかしこの日は時間が遅かったこともあり、休日にも関わらず並ばずにお店にはいることができた。ネット情報だが、タモリさんが通ったお店らしい。
 お店の前でブロンプトンをたたみ、のれんをくぐる。お店の方がさっと気づいて、お荷物はこちらにどうぞー、と壁の前のスペースを指差す。座席に着く前に、ささっとブロンプトンを置かせてもらう。その姿が、愛くるしくて、思わず写真をとった。まるで、まるまった猫みたいだ。

 いただいたのは、一番人気だという「肉ごぼううどん」。サックサクのごぼてん、あまじょっぱい牛肉、そこにゆず胡椒をたっぷりといれて、うどんをずるずると啜る。タモリさんには「うどんは飲み物」という名言があるが、うどんとツユが渾然一体となって、身体に沁みていく。

7. 旅ライドって最高!

 博多にはみるべき建築は多い。そのひとつが天神中央公園に面したアクロス福岡。ここは全面緑化をすることで、まるで街の真ん中に、こんもりと山があるように見える。この日はイベントが行われ、大勢の人で賑わっていた。

 ホテルに戻る道すがら、櫛田神社(くしだじんじゃ)に立ち寄った。
博多祇園山笠の飾り山笠をみるためだ。山笠祭りは毎年7月に行われるのだが、この神社では、実際に使われたかざり山笠が通年を通してみられる。こうした山笠は、昔から博多人形師の手によって作られてきた。同じ飾りでも上に行けばいくほど小さくなっていく。そうすることで実際よりも大きく見えるのだという。

 今回のライドは、およそ30キロ。ロードバイクでノンストップで走れば、1時間あまりで駆け抜けることのできる距離だ。それを今回の旅ライドでは、6時間ぐらいかけてゆっくりと回った。心に止まった風景があれば立ち止まって写真を撮り、気になる場所があれば立ち寄る。ブロンプトンのような小径車だからこそ楽しめるライドだ。

その街を堪能するには、自転車で街をめぐる”旅ライド”が最高である。


Text & Photo_Daisaku Kawase

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Profile

河瀬大作/Daisaku Kawase
フリープロデューサー、(株)Days 代表
愛知県生まれ。ロードバイク歴16年、絶景ライド好き。仕事の合間を縫い、自転車担いで全国へ出かける。愛車はトレック。NHKでプロデューサーとして「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「おやすみ日本 眠いいね」「あさイチ」などを手がけたのち2022年に独立。番組制作の傍ら、行政や企業のプロジェクトのプロデュースを行う。

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