環境大国オーストラリア発
インディペンデントなサイクルアパレル&グッズブランド
Muze Women / snacket

環境も、サイクルアイテムも、思想から。
1980年代の国際会議で生まれた「持続可能な開発」という言葉から端を発し、「SDGs」が国連で採択されたのは2015年。そこからの10年、遅れをとっていた日本ですら「環境に優しい」は当たり前すぎて死語になりつつあり、キーワードも「Sustainable(持続可能な)」から「Regenerative(再生できる)」へとより踏み込んだものへ変化しています。
この地球環境、あふれる商品、目にする廃棄物の量、まだまだ取り組むべきことがある時代の中で「でも、人生を楽しみたい」「サイクリングを楽しみたい!」、そんな想いが伝わるアイテムを、今年の4月にオーストラリアのクイーンズランド州で開催された「Tour de Brisbane」会場にて見つけました。さすがは環境大国・オーストラリア。
どちらのブランドもファウンダーはサイクリストの女性。ライド中の悩みや経験から研究に研究を重ねて商品開発し、小さくローンチしながら着実なコミュニティをつくっていました。

目次
1、性差を気にせずサイクリングを楽しみたい女性へ
2、イライラが救ったおやつタイム

1、性差を気にせずサイクリングを楽しみたい女性へ

ブランド名をパターン化したグラフィックが印象的な「Muze Women」

Nicole Stanners(ニコール・スタナーズ)による「Muze Women(ミューズ・ウィメン)」はシドニーに本社があるオーストラリア初の女性向けサイクルアパレルブランド。しなやかな曲線と明快なグラフィックがポジティブなアイテムに惹かれてポップアップショップに立ち寄ったところ、接客してくれたのはファウンダーご自身のニコールさんでした。

Tour de Brisbaneの会場にて目をひいたポップアップショップ

サイクリストであり、トライアスリート、ジェンダー平等の推進者でもある彼女は、世界選手権を含んだアイアンマンを4回も完走している本格的なアスリートであり経営者。自身の経験から、体型やレベルを問わずすべての女性がサイクリングを楽しみ、かつ、自転車競技を「敷居が高くて、ルールだらけのエリート主義」な世界から、女性を歓迎し、誰もが上を目指せるスポーツにしたいというビジョンを持っています。

ファウンダーのニコールさん

だからこそ大切なのがサイクルウェア。ボディフィットなサイクリングウエアは、性別問わず自分の体型に合わせたいもの。女性がヘアスタイルや生理、ブラの摩擦などを気にしながらロングライドをするのはナンセンスという考えのもと、研究を重ねた末にMuze Womenはデザインされています。

心拍計ベルトのホールドがついたブラトップ

そして、当然ながらウエアの素材にも配慮をしています。
なるべく環境へのダメージを減らすことを前提にリサイクル糸の使用や長持ちする高品質なアイテムを生み出したり、環境への影響が少ない生地や素材を使い、責任ある取り組みを行うパートナーと組むなどにも力をいれているそう。

持続可能性の配慮が盛り込まれたタグやパッケージ

また、タグやパッケージにも生分解性やリサイクル可能な素材を使用。サイクリングチェーンのようにスムーズに回る「5R」(Reduce / Repair / Reuse / Repurpose / Recycle)の実践も行っています。

2、イライラが救ったおやつタイム

なにげない商品ということもあって見過ごしてしまったけれど…

次に出会ったのは、snacket(スナケット)というジャージポケットにぴったり収まる蓋付きポケットのPRブース。
ライド中に口にするスナックを入れるのに便利ということでしたが、「小袋のまま直接ポケットに入れれば?」と思い素通りしかかってしまいました。
なんて鈍感な自分!
ここは環境大国オーストラリア。そして細やかな配慮がされた包装は日本ならではということを忘れていました。

分別し損ねることがないサインが貼られた大きなごみ箱

Snacketの創業者の一人であり、エンデュランスポーツを愛してやまないさんKarla Chaffeyさん曰く、開発のきっかけは「ジャージのポケットに押し込んだジップロック袋から、毎回苦労してスナックを取り出したり、
ジェルがベトベトになったり、もっといい方法があるはず」というイライラから。
そして「ライド中にゴミを出したくない」という意識の高さからでした。

Tour de Brisbaneのゴール会場にて配布されていた棒状のグミ(スタッフの右手)。ライド後にグミ〜〜?と思いながら口にしたらことのほか美味しくて驚く

そう、ライド中でも片手で開けやすい包装技術は日本ならでは。海外のお菓子はそんな素敵なことにはなっていません。また、オーストラリアを問わず、世界のトライアスロン大会ではペットボトルはもちろん、サプリメントなどの包装紙も含むゴミの投げ捨ては禁止でペナルティが課されます。
小袋のお菓子を食べた後の包み紙の行方…を考えてしまいますよね。

ライド中は片手で取り出したいスナック類

30歳でトライアスロンを始めたことがきっかけでロードバイクに夢中になったカローラさんは、スナックがきっかけで快適なライドグッズの開発に励みました。
長年の研究を経て、アスリートのために設計された世界初のフードポーチがこの「Snacket」です。特許出願中の独自のマグネットホールドシステムは、かさばったり重量を増やさずに、スナックを安全かつ簡単に取り出し、清潔に保てる仕様。
蓋付きなので、ビスケットも雨で湿ることなく楽しめそうです(紙幣にもよいですね)。

ものづくりは、心構えから。
ジェンダー平等の視点や個人の意識から端を発して仲間から共感を得る商品づくりに、今後の展開の期待が高まります。
以上、快適なライドを応援するオーストラリア発のNEWアイテムのご紹介でした。
Thank you for wonderful assistance and philosophy!

Text_ Mayumi Kamura


環境大国オーストラリアといえば…

オーストラリア・クーンズランド州の大自然が楽しめるライドイベントの申し込みが始まりました。日本ではあまり馴染みのない「Port Douglas Gran Fond(ポートダグラスグランフォンド」は9月開催、世界自然遺産を走るコースです!詳細はこちらより
https://globalride.jp/news/news250526/

Profile

Mayumi Kamura
Global Ride編集者。得意分野はデザイン、アート、ファッションなどの視覚表現系。コロナ禍をきっかけに心身の健康に意識が向き、テニスをスタートしコンテンポラリーダンスのレッスンを再開した。自転車関係のグッズはデザイン性が高いので今回を機にハマる予感がしている。

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#Cycle wear