TVプロデューサー河瀬大作 Bike New York参戦記!
恋するニューヨーク vol.5
NY自転車生活・上級編 SOHOへ自転車で買い物へ

前回、セントラルパークをサイクリングしたことで、にわかニューヨーカーとなったぼくらには、次なる計画があった。

SOHOへ自転車で買い物へ出かける。

知らない街を旅する時には、地下鉄やバス、そしてUberなどに頼ることになる。しかしそうなると「ちょっと寄り道」みたいなことができないし、街全体を把握するのも難しい。だから今回は、自転車でマンハッタンを移動しようと考えた。ぼくは日本から持ってきた、ブロンプトンで。仲間たちはciti bikeという街中にポートがあるシェアサイクルを借りることにしたのだ。
それはそれとして、にわかニューヨーカーにはやるべきことがあった。

朝ごはんにベーグルを食べる。自転車には関係ないですね笑

ニューヨーカーって、ベーグルのイメージありますよね。これは通らねばならない道だ。早起きし、歩いてホテル近くにある、人気のベーグル屋さん「ブルックリン ベーグル & コーヒー カンパニー」へ。僕が食べたのは、サーモンとクリームチーズの挟んである”BKBAGEL CLASSIC”というやつ。カリッと焼き上がっていて中はモッチモチ、サーモンもチーズも惜しげもなくたっぷり。素晴らしくおいしかった。ひとつ15.95ドル。ひええええ。日本円にして軽く2000円をこえる。円安とアメリカのインフレのダブルパンチでニューヨークは何もかもが高い。まあでも本当においしかったから、よしとする。

ブルックリン ベーグル & コーヒー カンパニー
BK BAGEL CLASSIC 15.59ドル

集合時間は午前10時。
まずはニューヨークで一番有名な本屋さん「ストランドブックストア」を目指す。

出発してまもなく、思いがけない出会いがあった。チェルシーのフリーマケットを通りがかった時のことだった。ウォーホルの電気椅子のプリントされたTシャツが目に飛び込んできた。あわてて自転車を停めて、売っている人に値段を聞くと20ドル。見ればとても程度が良いし、カルバンクライン製で生地も厚手で、おそらく新品で買えば1万円は下らないだろう。即決で買った。そうそう、こういうのが自転車旅の良さなんだよ。

NYのいたるところで借りられるciti bikeとカレンちゃん
手に入れたTシャツを手に記念撮影(撮影:カレンちゃん)

マンハッタンは、本当に走りやすい。bike path(自転車レーン)がしっかりと整備され、道路の上で、自転車が完全に市民権を得ている。そして意外にコンパクトな街で、自転車で30分も走れば、だいたいの場所に行ける。ホテルのあるチェルシーから、最初の目的地・ストランドブックストアのあるグリニッチビレッジまでは1.5キロ、自転車ならものの5分だ。しかも坂道は全くなくどこまでもフラットで道が続く。渋滞の多いこの街で、自転車カルチャーが発達した理由がよくわかる。

大通りにはだいたいbike pathが整備されている
ストランドブックストア

このあたりは面白い路面店がたくさんある。「ストランドブックストア」は世界で最も有名な本屋さんのひとつだろう。新書も古書も扱い、オリジナルのトートバックやポーチ、トレーナーなどのグッズが大人気だ。
次に向かったのは、ニューヨーク女子御用達の雑貨屋さんの「グリニッジ・レタープレス」。もともとはお店の名前にもなっておるレタープレス=活版印刷のグリーティングカードなどを扱っていたのだそう。今ではおもしろそうな雑貨が所狭しとならぶ。

可愛い雑貨が揃う雑貨屋さん「グリニッチレタープレス」
文房具から蝋燭、キーホルダーまで雑貨がぎっしり
グリーティングカード
My Brompton in NYC

この日のランチは、NY在住のNHKの先輩・宮本さんと待ち合わせ。イーストビレッジのコージーなイタリアンを予約してくれていた。お店を探していると偶然、ブロンプトンのショップが! 思わず飛び込んだ。店員さんは、僕の自転車を見てニコリ。

「あなたのブロンプトンはP-LINEね。素敵な色ね。」
「明日のバイクニューヨークに出場するために日本からきました」
「そうなの!私たちブロンプトンもブースを出しているから遊びにきてね」

まるで旧知の仲のように迎え入れてくれる。ブロンプトンって世界中にショップはもちろん、そして愛好家のコミュニティがある。NYを走っていても何度か声をかけられた。歴史に刻まれるほど革新的な自転車だといわれているブロンプトン、世界中で変わることなく愛され続け、人々をも繋いでいく。そんな自転車、他にはない。

イーストビレッジ
BROMPTON JUNCTION(撮影:カレンちゃん)
スタッフと記念写真(撮影:カレンちゃん)

宮本先輩が連れてってくれたイタリアンレストラン「Contenna」はこじんまりとしたお店。地元の人たちで賑わっていた。僕らは前菜とパスタ、そして肉料理をいくつかとってシェアした。どれも美味だった。

魚介のフェットチーネ ミントがいい仕事してました
向かって右が宮本先輩

ランチの後は、さらに南に下り、ずっと気になっていた場所を訪れることにした。グラウンドゼロのあとに作られた9/11メモリアルプールだ。2棟が並んで建っていたワールドトレードセンターのそれぞれの跡地に、タワーサウスプールとノースプールが作られた。プールの縁には犠牲者の名前が刻まれている。かなりの大きさだ。
あの日の映像は今も鮮明に覚えている。スパイ映画のワンシーンみたい出来事が現実であることに愕然とした。いつもと同じ日常を過ごしていた大勢の人々がここで命を絶たれた。今も世界では紛争が絶えない。どうすれば人類は諍いを止めることができるのだろうか。
プールの前で手を合わせながら、そんなことを考えた。

車輪があるので、折りたたんで引くことができる
ワンワールドトレードセンター
メモリアル・サウスプール
誰もが言葉少なだった
白い薔薇が一輪捧げられていた

最後に訪れたのはSOHO。最先端のショップやギャラリーがひしめき合う地区だ。お目当ての店があった。紅茶を扱うニューヨーク発のプレミアムティーブランド「ハーニー&サンズ」だ。日本にも支店もある紅茶専門店の本店。フレーバーティーとバターブレッドなどをお土産を買い込む。

街のあちこちにグラフティアートが
ハーニー&サンズ
ショーウインドウのディスプレイもアートのよう
紅茶の種類が豊富
さまざまな国の観光客が詰めかける
citi bikeのE bikeはかなりのスピードが出る

citi bikeを一旦返却して、SOHOをブラブラ。ギャラリーに入ると、誰でも知っているようなアート作品が売られていた。ピカソ、ダリのオリジナルもあった。値段を知りたかったが気になったものはすべてSOLD。ボブ・ディランのスケッチも売られていた。値段を見ると30万円ぐらい。オリジナルなら欲しいと思ったが、プリントだった。そりゃオリジナルはその値段では買えないよね。

「日本からですか?」

店員さんのひとりが日本語で話しかけてきた。聞けば、少し前まで神奈川県に留学していたらしい。とても流暢な日本語を話す。娘とカレンちゃんは意気投合してかなり話し込んでいた。

たまたま見つけた雑貨屋さんでは、とても履き心地の良さそうなルームシューズを発見。日本では売ってないみたい。ぼくのはサイズがなくて買えなかったけれど、妻の土産にと、ひとつ買った。

ピカソ!
美術館とは違うおもしろさ
SOHOで見つけた雑貨屋さん
KOLOというブランドのHOUSE SHOES

午前10時にホテルを出発し、結局16時ぐらいまでニューヨークのダウンタウンを旅ライドした。一言でいえば、これは最高だった。観光地をバスやタクシーで巡っていては出会えない面白さに満ちていた。

知らない街を自転車で巡ると、その街がもっと好きになる。

今は、世界中の大きな都市ならシェアバイクが整備されている。みなさんも、旅ライド、挑戦してみてはどうだろうか。旅の道なる面白さに出会えることうけあいだ。

そしていよいよ次回は、バイクニューヨーク本番。恋するニューヨーク完結編、乞うご期待。


🚴‍♂️本日のコース🚴‍♂️



Text & Photo_Daisaku Kawase

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Profile

河瀬大作/Daisaku Kawase
フリープロデューサー、(株)Days 代表、GlobalRide コミュニケーションディレクター
愛知県生まれ。ロードバイク歴16年、絶景ライド好き。仕事の合間を縫い、自転車担いで全国へ出かける。愛車はトレック。NHKでプロデューサーとして「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」「おやすみ日本 眠いいね」「あさイチ」などを手がけたのち2022年に独立。番組制作の傍ら、行政や企業のプロジェクトのプロデュースを行う。

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誰しも憧れの場所があるだろう。 僕にとってそれはずっとニューヨークだった。アンディ・ウォーホルやルー・リードが暮らし、ジョン・レノンが凶弾に倒れ、ブレイクダンスが生まれ、数えきれない映画の舞台になった街だ。 その街で開かれるロングライドのイベントがある。FIVE BORO BIKE TOUR。通称、バイクニューヨークと呼ばれる。 マンハッタンからブロンクス、クイーンズ、ブルックリン、そしてスタテンアイランドまでの64kmのコース。交通規制により車を締め出して行われる。チケットは発売と同時に瞬殺。参加者は3万人をこえるという北半球最大のライドイベントだ。憧れの街を自分の自転車で走りぬけるなんて、考えただけでもワクワクする。 2024年5月5日の本番当日。朝5時過ぎにホテルを出発。心配された雨は、降らなかったが、かなり寒い。長袖ジャージにジレ、ウインドブレイカーを羽織っていても、冷たい空気が刺すように入り込んでくる。会場に着くと、映画でよく見る蒸気がもうもうと立ち上っている。そうそう、これこれ。こうでなくっちゃ。ここはニューヨーク。その寒さすら僕の心を踊らせるのだ。 会場には、すでに多くのライダーが集まっていた。 スタートラインの近くには、VIPエリアが設置されていた。ソーセージなどのホットミールからフルーツ、そしてグラノーラまで、食べ物が豊富に用意されている。かなりの豪華さだ。ゲストライダーである僕もVIPに混じって、ベーグルとフルーツをいただいく。 朝食を終えて、スタート地点に向かうと、夥しい数のライダーが集まっている。通りのずーっと奥までヘルメットで埋め尽くされていて、胸が熱 […]

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