日本のアルプスのふもと、緑の100マイルを爽やかに疾駆!
〜あづみのセンチュリーライド2026~(前編)

去る5月23日、国内でも有数の人気を誇る「アルプスあづみのセンチュリーライド」(以下、AACR)に参加しました。数あるコースのうち、選んだのはサイクルトレインルート(全長約120km、ライドパート約65km)。
イベント名の通り、AACRは実行委員長の鈴木雷太さん(シドニーオリンピックMTB日本代表)がホノルルセンチュリーライドの素晴らしさを体験し、地元・長野でも!という想いで2009年から継続しているライドイベントです。
センチュリー=century=100mile≒160kmの距離以外にも、120kmやその半分ほどの距離も選択でき、初心者も安心。愛車と電車に乗る体験は、初心者からプロまで、全サイクリストにオススメ!
いざ、体験!

Text&Photos_Eigo Shimojo

目次

1. 0km/国営アルプスあづみの公園(堀金・穂高地区)
2. 19km:大町エイド/国営アルプスあづみの公園(大町・松川地区)
3. 42km:鹿島槍エイド@鹿島槍スキー場中綱駐車場


1. 0km/国営アルプスあづみの公園(堀金・穂高地区)

まだうす暗い早朝5時。スタート地点の一つである国営アルプスあづみの公園は、安曇野を象徴する名山、常念岳(じょうねんだけ)の裾野にある。この日は生憎の空模様で、山も今日は雲隠れ。それでも、綿飴みたいな雲をまとった新緑の山々が、晴天とはまた違った表情で期待を誘う。なにより、色とりどりのジャージが集い、列をなして曇天など蹴散らす華やかさ。天気をぼやきながらも、結局楽しむのが自転車乗りの常でもあるし、幸い天気は回復基調だ。定刻5時30分、かのツール・ド・フランスと同じ鮮やかな黄色のマヴィックカーに先導され、スタートした。

屈指の名峰の数々をいただく松本平の盆地から安曇野方面へと、山麓線をアップダウンしながら北上する。道幅十分ながら、交通量は少なく、かつ路面は滑らかで走りやすい。少し雨がぱらつき出したけれど、走り出せばそんなことは関係なくなってしまう。雨粒のシャワーを浴びて、文字通り老若男女入り混じり、笑顔で坂を登る。

木立のアップダウンを抜けると、急に視界が開けて、安曇野の郷の風景が目に飛び込んできた。見晴らしの良い田園地帯が続く。綺麗に区画された田んぼが連なり、ちょうど田植えの季節を迎えている。満々と水を湛えた無数の田んぼが、多面鏡のように景色を反射している。

出発から小一時間、安曇野路を堪能して、最初のエイドもほど近い。街道から山側に切り込んだルートは、国営アルプスあづみの公園の森の中へと続いている。普段は車両通行禁止なのだが、この日は特別解放なのだ。緑濃い国営森を巡る散策道は、マイナスイオンに満たされる森林浴ライドだ。森の中のヒルクライムに気持ちよい汗を流したところで、公園内の大町エイドステーションにたどり着いた。なにやらいい匂いに誘われ、早くも小腹が鳴っている!

全粒粉冷麦(刻みネギ添え)+羊羹 序盤のエイド食ということもあり、メニューは優しめ。全粒粉を使用した冷麦が、朝の胃袋に優しい。刻みネギの程よい刺激もグッド。おやつの羊羹も瑞々しくて美味。この後続くエイドでのおもてなし攻勢に向け、とてもよく計算された最初のエイドメニューだった!

2. 19km:大町エイド/国営アルプスあづみの公園(大町・松川地区)

お蕎麦と羊羹に後ろ髪引かれ、そうは言えどもまだ序の口、エイヤっと出発。安曇野ののどかな田園風景が続く。この区間は幹線道路を逸れ、農道や旧道をうまく繋いで安曇野の里山深くへと導いてくれる。ときおりの路傍に、信州らしい道祖神や石佛が立ち並び、味のある旧家の漆喰壁をかすめ、厳かな鎮守の杜へと抜けてゆく。JR大糸線のノスタルジックな踏切に、思わず立ち止まる。電車はそうそう通過しないのだろう、刻の止まったような田園の風景の数々。こういうのを原風景というのだろう。
結局本降りになった雨に打たれながらも、”濡れちゃいますねー”なんて見知らぬライダーさんとのサドルトークに一花咲かせたり、これまた楽しからずや。

登り基調を頑張っていると、突如視界が開けた。木崎湖だ。地元で仁科三湖と呼ばれる美しい湖水の一つで、水が綺麗なことで知られている。篠突く雨に水煙る、しっとりと美しい湖面を右手に、湖畔の勾配を抜きつ抜かれつ走る。気づけば20kmを超えて走ってきたが、あっという間だ。

さて、高台にエイドらしきポイントが見えている。その高台へ短くもパンチーな坂が続いている。一緒に走っていた小集団から若干名のアタックがかかった。キライじゃないので、ぼくもその動きに乗っかり、ひとモガキ。AACRはレースじゃないけど、要所で自然発生するスポーティーな遊び要素も、また一興。坂を駆け上ると、冬は鹿島槍スキー場の玄関口となる広い駐車場、そこに第2エイドが展開中だ。なにやら口いっぱいに頬張る面々で、すでに大盛況!


3. 42km:鹿島槍エイド@鹿島槍スキー場中綱駐車場

伝説”のねぎ味噌おにぎり+浅漬け やさしくむすばれた白むすびに、手作りのネギ味噌を丁寧にお手盛りしてくれる。美味しさもさることながら、その手間に癒される。また、おかわり自由なので、登り基調の後半ルートに備えて、おかわりがおすすめ。復路のメニューは、信州のソウルフードおやき(粒あん)と、冷奴。

日本人のソウルフード、おにぎりの補給で、ハートもソウルも充電完了!ギア重めの快速運転で、中綱湖から青木湖へと湖をつなぐ湖畔道を抜けてゆく。鹿島槍エイドを含む仁科三湖の一帯は、標高800mほどの高原地帯で、AACRの最高標高区間なのだ。高原の樹林帯に覆われた、値千金の湖畔の景色を抜けて、いよいよAACRの核心部白馬エリアへと続くダウンヒルへ。

白馬は山麓の広大な盆地の平坦部に田園が広がり、その中心部に村の生活圏がある。山岳と人の暮らしが作るコントラストが、この地の魅力でもある。ここでも田んぼが美しい。好天なら田に映る残雪の北アルプスも楽しめるだろう。それは次回の楽しみとして、ここで雨が止んだのでよし!通りかかった高速トレインに相乗りさせていただき、折り返しに向かう馬の群れとなって疾駆する。

雨もすっかり上がり、川向こうに青々と春も盛りの山々が鮮やかに見えてきた。冬は雪に覆われるスキー場も、いまはグリーンの絨毯。このショートクライムをやっつけて、長野五輪の舞台になった白馬ジャンプ競技場が見えたらころ、ちょうどお昼時に。噂の石窯ピザ!の待つ白馬エイドに到着。

石窯ピザ(レモン乗せ)+ホームメイドレモネード 白馬エイドでは定番となっている手作りピザ!もちっとした生地にトマトとベーコン、チーズ、その上に乗ったレモンを、石窯でじっくり焼いたできたて提供してくれるありがたさ。同時提供されるホームメイドレモネードと合わせて、クエン酸豊富な最高のリカバリーランチだ。ピザは一人1カット提供なので、要注意。

後半は噂の「サイクルトレイン」であずみのセンチューライドを折り返します。
どうぞお楽しみに!

Profile

下城 英悟
1974年長野県生まれ
IPU日本写真家ユニオン所属
2000年フリーランスとして独立、幅広く写真・映像制作を扱うグリーンハウススタジオ設立
ライフワークとしてアンダーグラウンドHIPHOP、世界の自転車文化を追いかける

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The Japanese Odyssey Report Season 2
クレイジーな旅が再び〜2025年へ漕ぎ出す〜
#03 “Be prepared”

Global Ride読者にはすでにお馴染みの「The Japanese Odyssey」(以下、TJO)。日本列島をひた走るインディペンデントなウルトラロングディスタンスイベントが、2025年、2年越しに開催されるという。公式インスタによると、今年は北海道が出発点らしい。次はどんな(クレイジーな)旅が待ち受けているのか、編集部が全容はいつまで待てばいいの!?とソワソワしながらお届けするTJO連載第二弾。自身もライダーであるフォトグラファー・下城英悟氏が、2016年の第二回開催時、まさにリアルTJOに出会った瞬間とそのコアに迫ったエッセイをここから。 *前回のエッセイはこちら #03 “Be prepared” ところで、たった2名の主催とはいえ、参加者と共闘すると考えた場合、TJO公式キャッチフレーズ、“Be prepared”は、お題目以上の“生きた言葉”になる。つまり、このチャレンジングな旅が冒険であることを宣言し、同時に準備を怠ってはならぬと警鐘を鳴らす。“そなえよつねに”、ボーイスカウトのモットーとして世界中で用いられ、自然環境下のサバイバルにおける心身の置きどころを指南する短くも強力な呪文だ。いかなる時も備えを要する冒険=TJOにも当然のように浸透し、旅の途上の場面場面で頻出する。レース中、コンビニで偶然再会し互いの健闘を労い合う時、先行者が危険なルート情報をSNS共有する時、“Be prepared”の言葉は、見えないが共に走る仲間たちへの思いやりと、冒険を無事終えて愛する家族のもとへ帰宅すべき自らの責任を鼓舞してくれる。冒険に向かう者みなが、自らを律する“生きた […]

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最年少の26歳フレッシャーズ🇦🇺
装備に釘付け!生粋のニューヨーカーライダー🇺🇸

ついに2025年秋開催の詳細が発表されたThe Japanese Odyssey(以下、TJO)。今年は鹿児島スタート、ゴールは松本市へ。途中、フェリーに乗るなどしながら二十ヶ所のチェックポイントを13日半で巡るルート設定となりました。2300km、獲得標高46,000mの旅路です。*今年の詳細な日程、ルートは公式webサイトでご確認ください 今回のコラムは2016年のTJOに参加した“濃い”3名のバイク&パッキングレポをお届けします。職業柄、お国柄、人柄…が滲み出るその装備をどうそご参考ください。 *前回のエッセイはこちら ヘヴィーロッカーな元建築家/TYLER BOWA (Canada) カナダ出身で、TJOに参加した2016年当時は上海在住だったタイラー。上海拠点のヘヴィーロックバンドのリーダー兼ドラマーとして、ワールドツアーをしたり、高感度なサイクルショップ“Factry5”を営むボスでもありと多才。ウルトラディスタンスのムーブメントにも上海から反応し、2015年トランスコンチネンタルレースに参戦。翌年はTJOを選びました。見た目通り、走りもイカツイ。フレームは、自社Factry5オリジナルクロモリフレームのシクロクロスモデル“CXCUSTOM”。上海でも盛り上がっていたシクロクロスレースを自ら走り、設計したモデルとか。レースでも使用しているトルク重視のギア設定に加え、リアに最大36Tをインストール、大柄な彼が挑むことになる険しいCPに備えています。カンパニョーロ使いなのがオシャレです。前職は大手ゼネコン勤務の有能な建築デザイナー。上海には彼の作品が多く形に […]

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噂のThe Japanese Odysseyとは?#01
ウルトラディスタンスという世界へ

遠くへ。 10年ほど前からロングディスタンスの域を超え、ウルトラロングディスタンスと言われるイベントやレースが世界各地で立ち上がり始めた。その距離、数千キロ。1週間〜半月くらいかけて国々や県境を渡り、峠や河川を越えていく。エイドステーションも警護車もなく、ゴールに辿り着くまでは自分自身でだけが頼り。その界隈のサイクリストにじわじわと注目を集めている、過酷なライドだ。日本では「ブルベ」が名を知られているが、近年、マニアックなサイクリストに熱い視線を注がれているのが「The Japanese Odyssey」。親日家のフランス人2人組が立ち上げた、アブノーマルな道も含む行程で日本国内数千キロを漕ぎ進むというイベント兼レースだ。 本連載では、このイベントに魅せられ、追い続けてきた写真家・下城英悟氏による、The Japanese Odysseyのドキュメンタリー風エッセイをお届けする。 目次 1 プロローグ・オン・ザ・ロード2 道路元標0地点3 “黒船来襲” 1 プロローグ・オン・ザ・ロード 東京日本橋、午前3時。 橋上に立つのは、世界各地から集う名もなきアマチュアサイクリストたち。 やがて夜明けの闇が白む頃、オーガナイザーのエマニュエルが、その刻を告げるべく腕を振り上げた。無言に振り下ろされるその腕をチェッカーフラッグにして、集団は走り始める。2週間後の約束の地を目指して。 折から紅葉に染まりゆく日本列島約3000kmの山河を人知れず深く分け入って、散りぢり駆けていく車輪の群れ。出走の瞬間からゴール到達までは、昼夜もないレースタイムだ。いや、レースと形容するには語弊を伴う、伴走者も […]