日本のアルプスのふもと、緑の100マイルを爽やかに疾駆!
〜あづみのセンチュリーライド2026~(後編)

前編に続き、5月に開催された「アルプスあずみのセンチュリーライド 2026」の模様をお届けします。白馬からの折り返しは人気のサイクル・トレインに乗って! 電車好きにもたまらないコースです。

Text&Photos_Eigo Shimojo

目次

4. 65 km →111km:サイクルトレイン/JR白馬駅→信濃追分駅
5. 120 km:ゴール 国営アルプスあづみの公園(金・穂高地区)


4. 65 km →111km:サイクルトレイン/JR白馬駅→信濃追分駅

ここまでスタートから実走65kmほどの道のりながら、ライドもフードも充実の内容に、大満足。このまま復路を走る余力さえありそうだけれど、あえて電車の旅も楽しむのが、今回のミッションなのだ。白馬エイドから駅までのショートライドを楽しんで、白馬駅前へ。駅を通り過ぎて復路を進む参加者の背中を遠目に、いくばくかの背徳感、または優越感、笑。

駅では、スタッフさんのガイドで各自自転車の汚れを落とすと、自転車をばらすこともなくそのまま改札を通過できる。ホームまで進むと、かなりの参加者の方がいて、背徳感など一気に昇華!そうするうちに専用列車が到着し、自転車ごと乗車を開始した。自転車はスタッフさんが丁寧に固定してくれるので有難く、心強い。出発までは時間に余裕もあり、みなさん思い思いに過ごしている。

人員、自転車とも積載完了し、定刻に白馬駅を出発すると、終着駅安曇追分まで1時間ほどの列車の旅。白馬から安曇野へと、往路を逆再生するような景色が車窓を流れてゆく。揺れが心地よく、まどろむひとちらほら。流れる新緑と山々の遠景をぼんやり眺めながら、あっという間に安曇野に帰還。味のある駅舎で、正装で出迎えてくれた駅長さんにお礼をすると、駅近のAACR最終エイドへ移動する。

赤飯まんじゅう+信州あずみのりんごジュース+信州エナジー(ジェル)+信州わさび入りチーズ 最終エイドでいただいたのは、安曇野産りんごジュース、わさびチーズ、信州りんごのエナジージェル、そしてメインディッシュは、地元老舗和菓子屋さんがAACRのために特別に蒸かした赤飯まんじゅう。4品目と品数多めなのがうれしい。エイドの芝生に車座になって、100マイルの終わりを惜しむようにおしゃべりしながら、1品づつ大切そうに楽しむ参加者が印象的だった

5. 120 km:ゴール 国営アルプスあづみの公園(金・穂高地区)

ゴールも間近となった最終エイドステーションの、広々と芝生が敷き詰められた中庭に、車座になったり寝転んだり、100マイルの終わりを惜しむように長居する参加者で賑わっている。

ゴールまで残る8kmほどの道程を、締めくくりはガッチリ走りきろうと決め、エイドを出発。常念岳麓の高台までの、地味に脚に来る登り道を踏み込んで疾る。途中、鬼引きする外国人サイクリストパックをキャッチして、背後付き位置に取り付くと、ひたすら耐えて踏切りながら、ゴール!

信州名物 からし稲荷(3個入) AACRのおもてなし攻勢は、ゴール後も続く!最後のご褒美は、信州名物からし稲荷、ボリューム満点の3個入!信州でも特に松本地方で古くから親しまれてきた地元の味。甘いお揚げ包まれた酢飯には、しっかりと和からしの乗り、かなりキく!しかしクセになる一品。辛いと辛い(ツライ)は紙一重、お父さんとガッツポーズでゴールにたどり着いた小学生キッズが、目に涙を浮かべ頬張っている。その涙、完走の喜びからだけではないはず

こうしてAACRを余すことなく堪能し、1日が無事終了。
松本平、安曇野、白馬という、国内でも有数のサイクリングエリアを一気通貫に贅沢に楽しんだのに、終始ゆったりと、焦ることなくライドを楽しむことができたのが不思議だった。AACRのよく練られたルート、エイド、制限時間等が、自由なライドプランを可能にしてくれていたに違いない。運営の妙に感謝である。実際、本格派な走り系ガチ勢から、友人家族でのファンライド参加、ビギナー勢まで、あらゆるレベルのサイクリストが、それぞれの走り方、遊び方で楽しんでいた。

また参加自転車もロード、グラベル、小径、MTB、シティバイクからピストバイクと、じつに多様だったのも印象的だ。その多様性を受け入れる懐の深さが、AACRにはあった。100マイルイベントで、サイクルトレインが利用できるのも、AACRが掲げる自転車遊びの自由度、多様性を担保してくれているだろう。なにより、フードは、美味しすぎた!
攻めてよし、遊んでよし、食べてよし!この3拍子そろう100マイルイベントは、なかなかない。まず参加すべきセンチュリーライドで、間違い無いだろう。

Profile

下城 英悟
1974年長野県生まれ
IPU日本写真家ユニオン所属
2000年フリーランスとして独立、幅広く写真・映像制作を扱うグリーンハウススタジオ設立
ライフワークとしてアンダーグラウンドHIPHOP、世界の自転車文化を追いかける

EVENT
観光都市ニセコと2つのライドイベント③
一般公道を封鎖した本格的なコースを体験

100名を超えるキャンセル待ちが出るほどに大人気となったニセコクラシック。140kmコース(獲得標高2,362m)は49歳以下の4カテゴリー、70kmコース(獲得標高1,125m)は50歳以上の5カテゴリーがUCIGFWSの対象で、それ以外はオープン参加となります。興味深いのは、この中で最も多くの参加者を集めたのは70kmコースの19〜49歳、つまりUCIGFWS対象外のオープンカテゴリーということ。参加権に関係なく純粋にロードレースを楽しみたい人が多いことの表れでしょう。

#Japan
EVENT
サイクリングがアート作品の一部になる!?
『TOUR DE TSUMARI/ツールド妻有』主催者、建築家・伊藤嘉朗さんインタビュー(前編)

ロングライドはサイクリストの楽しみのひとつだろう。毎年、新潟県で開催されている『TOUR DE TSUMARI/ツールド妻有』(以下、『ツールド妻有』) は最大で走行距離120kmを走るコース。タイムトライアルではないため、風景や地元の人たちのもてなしを楽しむことができる。さらに特筆すべき点は、このイベントが移動すること自体をテーマとしたアート作品という点だ。発起人は建築家・サイクリストの伊藤嘉朗(いとうよしあき)さん。2回にわたって『ツールド妻有』の成り立ちについて伊藤さんに話を聞いた。

#Art #Niigata
EVENT
噂のThe Japanese Odysseyとは?#06
日本贔屓の引き倒し

目次 1 村上春樹、芭蕉2 ロマンチストたち 1 村上春樹、芭蕉 フランス人の日本贔屓といえば知られるところだが、日本と縁が無いと見えた彼ら(The Japanese Odysseyの主催者であるエマニュエルとギョーム)も、じつは日本の文化に魅了された者たちだった。特に二人の心を惹きつけたのは、欧州でも人気の高い村上春樹の小説群や、芭蕉の俳句といった日本的な叙情文学だったという。 2016年のレースのあとに、初めてインタビューした際、安易なツーリズムやエキゾチズムでは説明のつかない彼らの熱意に、驚いたものだった。文学的な情緒が異邦人の心に火を付け、見知らぬ地まで運んだとすれば、言葉のチカラは偉大と言わざるを得ない。この時点で二人は日本を訪問したことさえなかった。 故郷を走りながら日本への憧憬を育み、構想の実現に向けて動き始めたエマニュエルとギョーム。想いが爛熟した2015年の蒸し返す夏、彼らは、数こそ少ないが、企画に共鳴した仲間たちと車輪の上にいて、日本を走っていた。想いは、山をも動かす。 第一回「The Japanese Odyssey」が開催されたのだった。 2 ロマンチストたち サイクリストの多くは叙情的でロマンチストであると思う。孤独なサドルの上、流れる美しい景色に無言のまま身を委ね、おのおのなにやら饒舌な想いを抱えているものだ。 憑かれたように自転車を駆って目に見えない自由を追い、長い峠道に苦悶しながら、同時に得難い幸せを感じている。エマニュエルとギョームの例もそうだが、世界的なウルトラディスタンスレースのトレンドには、複雑な現代を生きるサイクリストたちの個々の想いが […]