羊蹄山から洞爺湖へ。旅するようにニセコを走る
Niseko Discovery Cycling

2026年8月、UCIグランフォンド世界選手権と同じ時期に開催された北海道のファンライドイベント「ニセコディスカバリーサイクリング(Niseko Discovery Cycling)」のレポートをお届けします。ライダーは自転車大国・オーストラリアでサイクリングライフを過ごしたMeiさん。大自然の北海道で開催されるファンライドは、どのような景色を運んでくれたのでしょうか。


秋の気配を感じるようになった今も、ふと思い出すのがこの夏のニセコです。
2026年8月、私はゲストライダーとして、ファンライド「Niseko Discovery Cycling」の100kmコースを走りました。世界選手権の開催に沸くニセコで過ごした、特別な一日を振り返ります。

Text&Photo_Mei

Niseko Discovery Cycling 2026

開催日2026年8月29日(土)
開催地北海道・ニセコエリア
(スタート&ゴール:北海道虻田郡倶知安町字比羅夫)
コース100km 洞爺湖コース/65km 留寿都コース
走行の目安100km:平均時速20km・4〜5時間
65km:平均時速14km・3〜4時間
参加資格100km:12歳以上/65km:6歳以上
定員各コース300名
参加費100km:14,500円/65km:9,500円(別途システム利用料)
公式サイトhttps://nisekodiscoverycycling.com/

*情報は2026年8月時点

目次
1. ひらふ坂から、世界中のライダーと走り出す
2. 登り多きコースと、集団で走る楽しさ
3. 美しく穏やかな洞爺湖でランチタイムを
4. イヴァン・バッソと走る、今年ならではの体験
5. ユリ根コロッケと、羊蹄山の帰り道
6. 最後のエイドからゴールへ
7. また来年、羊蹄山の麓で

1. ひらふ坂から、世界中のライダーと走り出す

スタート前の会場は、朝から大きな盛り上がりを見せていました。人だかりの中心にいたのは、ジロ・デ・イタリア(Giro d’Italia)で2度の総合優勝を果たしたイヴァン・バッソ(Ivan Basso)さんと、アルベルト・コンタドール(Alberto Contador)さんの兄、フラン・コンタドール(Fran Contador)さんです。お二人は、自転車ブランド「AURUM」を共同で手がけるパートナーでもあります。

今年はアジアで初めて、UCIグランフォンド世界選手権が開かれる年ということもあり、走り出す前から特別さを実感しました。参加者を見渡すと、海外から来たライダーがほぼ。聞こえてくる言語もさまざまで、ここが日本であることを忘れそうなほどでした。

集合場所は、ひらふエリアの「ゴンドラ坂」。世界選手権でもスタート及びゴールとして使われた大きなゲートの下に並ぶと、少しだけUCI選手になったような気分に。正面には羊蹄山が大きくそびえ、走り出す前から心が躍ります。

倶知安町の8月の平均気温は約20℃、最高気温も平年で25℃前後と、東京の8月に比べてぐっと過ごしやすい気候。何より、じめっとした蒸し暑さがなく、カラッとした空気がうれしいところです。この日の朝は羊蹄山に霧がかかっていましたが、スタート時間の9時頃には晴れ、日差しがあっても汗でべたつかず、風が心地よく感じられました。100kmのロングライドにぴったりの一日です。

スタートを待っていると、オーストラリアから来た方に「ニセコを走る君のYouTubeを見て、このイベントに参加することにしたよ!」と声をかけてもらい、うれしい出会いもありました(イベントのルートを走った時の動画はこちら)。

2. 登り多きコースと、集団で走る楽しさ

このイベントのコンセプトは、「旅をするように街と街を繋ぎながら走るサイクリングイベント」。今年は2回目の開催となっており、毎年コースが変わるため、ニセコエリア各地の絶景スポットを巡ることができます。初開催の2025年は積丹コースと余市コース、2026年は洞爺湖コースと留寿都コースとなりました。

走っていると、後ろにはロシアのモスクワから来日された女性とその仲間たちがいました。同じ自転車好きというだけで、自然と会話が弾みます。ニセコに住む地元のサイクリストとも言葉を交わしつつ、大勢の参加者と一緒に、羊蹄山を眺めながらペダルを進めます。

最初のエイドステーションでは、ニセコ名物のみそまんじゅうをいただきながら短めに休憩し、バッソさんと記念撮影。そして羊蹄山を背に進むと、大きな登りが始まります。ニセコはアップダウンの多いエリアのため、走りごたえのあるコースです。

2つ目のエイドでは、「わかさいも本舗」のショコラ味のお菓子をいただきました。スイートポテトのようなしっとりとした食感で、北海道ではよく知られたお菓子だそうです。休憩中も、海外の参加者との会話が続きました。私が走っていた先頭グループでは、休憩が終わると「みんなで行こう」と声をかけ合い、まとまって再スタート。その一体感が、次の登りを頑張るための力となりました。

3. 美しく穏やかな洞爺湖でランチタイムを

しばらく走ると、北海道洞爺湖サミット(2008年)の会場となったホテルが山の上に見えてきます。あれほど高い場所にホテルがあることに驚きながら進むと、洞爺湖に到着です。水面は静かでとても美しく、湖のそのすぐそばまで自転車で行けるのも、このコースの魅力です。

湖岸のカーブに沿って、気持ちよくペダルを回します。湖面を横目に木漏れ日の中を進んでいくと、とても穏やかな気持ちになりました。日本好きの海外の方の中には、木々の間から差し込むこの光を「Komorebi」と呼んで、特別に感じる人もいるそうです。私たちにとっては何気ない光景が、海外の人の目には特別に映る。そのことに、あらためて気づかされます。

洞爺湖畔の広場に着くと、楽しみにしていたランチです。メニューは、おにぎりセット、グリーンカレー、ピリ辛キーマカレー、タコライスなど。迷った末に、「辛いよ」と教えてもらったピリ辛キーマカレーに。夏はなぜか辛いものが食べたくなります。しっかりと辛さがあり、満足感のある一皿でした。

4. イヴァン・バッソと走る、今年ならではの体験

後半は再び登りから始まります。ここからは各自のペースで、私はこの日に仲良くなった女性サイクリストと一緒に登りました。先に登り終えた人が待っていてくれるので、その日に出会ったばかりでもチームのような雰囲気がありました。

そして何より特別だったのが、ジロ・デ・イタリアの覇者の、すぐ後ろを走れたことです。バッソさんとフランさんはとても気さくで、一緒に写真を撮らせてくれたり、スペインやイタリアのサイクリング事情を教わったりしました。ヨーロッパでは女性のサイクリストが増えているそう。日本でも、もっと広がってほしいと感じました。

5. ユリ根コロッケと、羊蹄山の帰り道

羊蹄山が大きく見えてくると、ニセコに戻ってきたことを実感します。一面に広がる畑の中を走るのは、とても気持ちの良い時間でした。

次のエイドでは、ユリ根のコロッケと大粒なプルーンの提供がありました。ユリ根のコロッケは初めて食べましたが、なめらかでもちもちとした食感です。じゃがいものコロッケに似ながら少し違う食感がおもしろく、道の駅でも販売されていると聞いて、帰りに買うことに。

6. 最後のエイドからゴールへ

遮るもののない羊蹄山を眺めながら畑の中の道を進むと、ラストのエイドに到着。さっぱりとしたミニトマトで喉をうるおし、ゴールまであと少し。最後のひと踏ん張りに向けて、気持ちを切り替えます。

締めくくりは、ひらふの坂。最後の力を振り絞って登り切り、ゴールです!
走行距離100km、獲得標高は1,446m。走り切った達成感で、思わず笑顔になりました。
ゴール後には、バッソさんのサインと記念撮影の特典もありました。

バッソさんたちと写真を撮るニセコアンバサダーのちーろんさん

7. また来年、羊蹄山の麓で

ニセコのサイクリングイベントが、ここまで国際的になったことがとても新鮮でした。速さを競うのではなく、それぞれのペースで旅をするように走り、その土地の食や景色、人との出会いを楽しめる。それがこのイベントのいちばんの魅力だと思います。

今年の100kmの洞爺湖コースは平均時速20kmで5〜6時間、65kmの留寿都コースは平均時速14kmで3〜4時間が目安でした。自分に合ったコースを選べば、初めて参加する方でも十分に楽しむことができます。

また、ニセコはもともと世界中から人が集まるリゾートエリア。英語の案内や、英語対応のお店・宿も多く、大会の公式サイトにも英語ページがあります。海外から日本でのサイクリングを考えている方にとっても、滞在しやすく、参加しやすい場所です。

次回の2027年大会は、6月19日(土)、初夏のニセコで開催予定。朝晩冷えることもあるので、薄手のウインドブレーカーがあると安心です。コースはこれまでの経験をもとに新たにするそうで、どんなルートになるのか今から待ち遠しいです。

羊蹄山の麓で、再び多くのライダーと一緒に走れる日を楽しみにしています!

Profile

Mei
サイクリングガイド/コンテンツクリエイター/MAAPアンバサダー。サイクリスト歴10年。オーストラリア・メルボルンでの1年間の滞在を経て、現在は大阪と北海道を拠点に活動。海外から訪れるサイクリストのガイドを務めるほか、ニセコでサイクルツーリズムに関するPRも手がける。YouTube「めいさんのやかた」では、朝活ライドやカフェライドなど、自転車のある暮らしを発信している。

Instagram:https://www.instagram.com/meisan_no_yakata/
YouTube:https://www.youtube.com/@meisan_no_yakata

EVENT
観光都市ニセコと2つのライドイベント①
ライト層も楽しめるニセコ羊蹄ファンライドを体験

7月最初の週末、北海道のニセコエリアで二つのサイクリングイベントが開催されました。一つはUCI公認の市民レースであるニセコクラシック、もう一つは羊蹄山をぐるりと一周するニセコ羊蹄ファンライドです。海外からのエントラントも多く、ニセコらしい国際色豊かな二日間となりました。

#Event #Report
EVENT
自転車で走ればアートが生まれる。
『TOUR DE TSUMARI/ツールド妻有』主催者、建築家・伊藤嘉朗さんインタビュー(後編)

毎年、新潟県で開催されている『TOUR DE TSUMARI/ツールド妻有』(以下、『ツールド妻有』) は最大で走行距離120kmを走るコース。タイムトライアルではないため、風景や地元の人たちのもてなしを楽しむことができる。特筆すべき点は、このイベントが移動すること自体をテーマとしたアート作品という点だ。発起人は建築家・サイクリストの伊藤嘉朗(いとうよしあき)さん。前回に引き続き、伊藤さんに話を聞いた。

#Lifestyle
FEATURE EVENT
橋を越えてつながる世界
〜サイクリングしまなみ2024から〜

「国内で最大規模、そして日本で唯一、高速道路を走るイベントです」愛媛県・中村時広知事の挨拶のあと、スタートのクラクションが鳴った。 尾道市(広島県)に向かう今治市(愛媛県)の高速I C入口から約1750名のライダーたちがWAVEスタートを切った。同時に、尾道市の向島I Cでも同数のライダーが今治市を目指し、走り出していた。10月27日、日曜日。曇天が広がる朝8時08分。「サイクリングしまなみ 2024」の始まりの光景。 二県共催の自転車大会は、両県の自然や観光資源、ボランティア精神に支えられた日本最大のサイクリングイベントとして世界的にも有名だ。 サイクリングしまなみは二年に一度、7,000人規模の大規模大会とその半分ほどの参加者が集う中規模大会が交互に開催となる。2024年大会は後者。とはいえ、愛媛県内外はもとより海外からのライダーも走りに来る国際大会の様相は変わらない。今年は27カ国・地域から550名のライダーがエントリーし、みなさんにはお馴染みの海外ファンライドからも主要メンバーが参加した。ホノルルセンチュリーライドのエグゼクティブ・ディレクターのトラヴィス氏とFIVE BORO BIKE TOUR(BIKE NEW YORK)の主催者、ケン氏のお二人。それぞれ2回目、3回目の参加となる。 参加者は約40km~100kmの8種類のコースを選べ、それぞれが瀬戸内海に浮かぶ島々を堪能できる景色を走るルートとなっている。 そして大会翌日には「サイクリングパラダイス」を掲げる愛媛県がBIKE NEW YORK及び自転車文化の普及促進を図る(株)HM-A と覚書締結式を開催した。内 […]

#Cafe #Ride