観光都市ニセコと2つのライドイベント③
一般公道を封鎖した本格的なコースを体験

100名を超えるキャンセル待ちが出るほどに大人気となったニセコクラシック。140kmコース(獲得標高2,362m)は49歳以下の4カテゴリー、70kmコース(獲得標高1,125m)は50歳以上の5カテゴリーがUCIGFWSの対象で、それ以外はオープン参加となります。興味深いのは、この中で最も多くの参加者を集めたのは70kmコースの19〜49歳、つまりUCIGFWS対象外のオープンカテゴリーということ。参加権に関係なく純粋にロードレースを楽しみたい人が多いことの表れでしょう。

※この記事は2019年7月の記事の再掲載です。

この最も参加人数の多い70kmコースの19〜49歳カテゴリーに、前日のニセコ羊蹄ファンライドで100km走ったばかりの我々スタッフが参加しました。メイン会場およびゴール地点はJR倶知安駅から約8kmの距離にあるグラン・ヒラフで、70kmコースのスタート地点はそこから23km離れた場所にあります。前日のうちに自転車を預けておけばトラックで移送してくれ、参加者は当日の朝にシャトルバスでメイン会場から移動します。中にはウォーミングアップがてら自走する人もいるとのこと。

前日のファンライドと異なり、一般公道を封鎖して行われる本格的なロードレースのため、気分はまるでプロレース! ペースの速い集団走行に飲み込まれ、最初に現れるよしくに補給所には気付かなかったとのこと。連続するアップダウンでバラバラになった参加者は、脚力の合いそうな者同士で小集団を作り、淡々とゴールを目指します。

その後、残り31.9km地点の新見温泉補給所、残り17.6km地点の黄金温泉補給所で、走りながらボトルを受け取ります。プロレースのTV中継で見られるあのシーンの再現に、思わず興奮したとのこと。ちなみに渡されるボトルはニセコクラシックのロゴがプリントされたもので、これもいい記念品になります。

70kmコースで最も速かったのは、50〜54歳カテゴリーに参加した西谷雅史選手(チームオーベスト)で、タイムは1時間58分18秒。アベレージスピードは33.98km/hでした。ちなみに我々スタッフのタイムは2時間41分08秒。平均時速は約25km/hです。カットオフタイムは設けられていますが、残り25.8km地点にある日の出関門でスタートから約3時間後の11時15分なので、よほどのことがない限りは完走できるでしょう。

なお、この大会期間中、メイン会場のグラン・ヒラフではニセコクラシック・サイクルフェスティバルウィークエンドが開催されており、自転車関連ブースや各種飲食店の出店、さまざまなイベントが大会を盛り上げていました。

国際的なリゾート地として発展を続けるニセコ。
そこで行われた二つのサイクリングイベントは、夏のニセコの魅力を海外にアピールできるだけのポテンシャルを秘めていることを実感できました。
特にニセコと強いつながりのあるオーストラリアでは、類似したイベントが開催されていることもあって、彼の地のサイクリストにもさらに注目されるでしょう。また、国内でもここまで特別な魅力を持つイベントは少ないだけに、今後ますます人気が高まることは間違いありません。


関連サイト
Niseko Classic 公式サイト
ニセコ羊蹄ファンライド 公式サイト


EVENT
The Japanese Odyssey Report Season 2
クレイジーな旅が再び〜2025年へ漕ぎ出す〜
#02 波、来たれり

2025年開催のThe Japanese Odyssey(以下、TJO)に向け、Global Ride編集部がお届けするフォトグラファー・下城英悟氏による連載エッセイ第二弾。時は2016年、TJO第二回開催を明日に控えた夕刻。親日家でありながら前回まで来日経験のないフランス人、エマニュエルとギョームにより企画された日本を漕ぐ旅がいよいよ現実となる前日のこと。代官山にて行われたブリーフィングの場のvibes、そこからのウルトラディスタンスとは。 *前回のエッセイはこちら #02 波、来たれり 大会に掲げられたハードなチェックポイントの数々と長大な行程、ここに思い当たるのは、これが冒険以外の何ものでもないということ。完走を目指すなら、用意周到に備え、相当な戦略を立て、そのうえで己の限界を問うような努力が求められるだろう。ハードである。これは運営も同様で、準備には相応の時間を要するだろう。それを、たった2人で取り組むということか?しかも、ここは彼らの故郷からはるか遠くの異国、JAPAN。しかし彼らの答えは“Yes”だった。マジか、と心配されても仕方がない。参加者さえ驚く者もいるのだ。それでも、そのことを本気で心配する者は、参加者にほとんどいなかったと思う。その理由として、参加者の半数がトランスコンチネンタルレースなどのウルトラディスタンスレースの経験者、そうでなくとも皆ウルトラディスタンスのセルフサポーテッドの理念を理解、共感していたからに違いないだろう。 2010年代、急速に広がったウルトラディスタンスのコンセプトとムーブメントは、既存スポーツ、ひいてはツーリズムへのカウンターとし […]

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噂のThe Japanese Odysseyとは?#06
日本贔屓の引き倒し

目次 1 村上春樹、芭蕉2 ロマンチストたち 1 村上春樹、芭蕉 フランス人の日本贔屓といえば知られるところだが、日本と縁が無いと見えた彼ら(The Japanese Odysseyの主催者であるエマニュエルとギョーム)も、じつは日本の文化に魅了された者たちだった。特に二人の心を惹きつけたのは、欧州でも人気の高い村上春樹の小説群や、芭蕉の俳句といった日本的な叙情文学だったという。 2016年のレースのあとに、初めてインタビューした際、安易なツーリズムやエキゾチズムでは説明のつかない彼らの熱意に、驚いたものだった。文学的な情緒が異邦人の心に火を付け、見知らぬ地まで運んだとすれば、言葉のチカラは偉大と言わざるを得ない。この時点で二人は日本を訪問したことさえなかった。 故郷を走りながら日本への憧憬を育み、構想の実現に向けて動き始めたエマニュエルとギョーム。想いが爛熟した2015年の蒸し返す夏、彼らは、数こそ少ないが、企画に共鳴した仲間たちと車輪の上にいて、日本を走っていた。想いは、山をも動かす。 第一回「The Japanese Odyssey」が開催されたのだった。 2 ロマンチストたち サイクリストの多くは叙情的でロマンチストであると思う。孤独なサドルの上、流れる美しい景色に無言のまま身を委ね、おのおのなにやら饒舌な想いを抱えているものだ。 憑かれたように自転車を駆って目に見えない自由を追い、長い峠道に苦悶しながら、同時に得難い幸せを感じている。エマニュエルとギョームの例もそうだが、世界的なウルトラディスタンスレースのトレンドには、複雑な現代を生きるサイクリストたちの個々の想いが […]

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噂のThe Japanese Odysseyとは?#02
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日本で開催される超長距離、超絶コアなライドイベント「The Japanese Odyssey」を追いかけ続ける写真家・下城英悟氏による連載エッセイ。第二弾はウルトラロングディスタンスを支える自助の精神と、初めての参加…?に至るまでの道のりについてお届けする。 目次 1 ウルトラディスタンス(超長距離)とセルフサポーテッド(自助)2 さきがけの「The Transcontinental Race」 1 ウルトラディスタンス(超長距離)とセルフサポーテッド(自助) あらためて「The Japanese Odyssey(以下TJO)」の特徴を端的に表すキーワードは2つ。 文字通りの”ウルトラディスタンス”(超長距離)、そして、”セルフサポーテッド”(自助)の精神だろう。 レースの多くは数百〜数千キロの設定ルートを、1~2週間の制限時間内での自力完走を目指す。 いわゆる耐久レースとはいえ、TJOは距離と所要時間がアマチュアレースの常軌を逸していた。 完走を目指せば、昼夜なく走ること必至という「ウルトラディスタンス」な事実が出走者に迫り、同時にセルフサポーテッドの難易度も距離に比例して高くなる。 およそ一般化しそうもない様式が、しかし瞬く間に世界中で受け入れられ、広まっていった。 のみならず、ややもすれば閉塞がちな業界に力強いトレンドさえ生み出しかねない勢いがあった。 競技団体やメーカー主導のスポンサードレースでは決してないにもかかわらず。 アマチュアサイクリストたちの想いを繋いで生まれ出たカルチャーである、と声高に言いたい。 サイクリングのエッセンシャルな魅力であるロングライドの範疇を […]