実は自転車と縁があるナチュラルワイン。連載の2回目は東北・仙台市で20年ほど前からナチュラルワインを追求し続けてこられたセラーワーカー兼「LoveSong by BATONS」店主の板垣卓也さんよりお届けします。 ナチュラルワインに出会って20年。フランスを中心にたくさんの造り手を訪問してきました。私の初回コラムということで、とても印象に残っている訪問先での自転車エピソードと共にワインをご紹介したいと思います。 2011年。収穫のピークも過ぎたタイミングでギリギリ訪問をOKされたのはフランス ローヌ地方の 「ダール エ リボ(Dard et Ribo)」。フランソワ・リボ(Francios Ribo)とルネジャン・ダール(Rene Jean Dard)の2人が担うワイナリーです。日本語しか話せない私が、一人での訪問。不安もありましたがここを訪れるのは3度目でしたし、「日本人のスタジエ(stagiaire)*1もいるよ」とルネジャンから連絡も来ていたので迷いなく訪問させていただきました。 到着後、大きな樽の中に人が入り葡萄を足で潰すピジャージュ(pigeage)*2という作業を手伝いました。そして作業後、ランチまで時間があるからと、フランソワの家に連れて行かれ「はい、これ」とマウンテンバイクを渡されたのです。 「????」 「ランチまでに戻って来いよ」 せっかくだからワイナリーがあるタンエルミタージュ(Tain-l’Hermitage)を探索して来いと。ピジャージュで足の疲れが…な状態でしたが、スタジエに来ていた方と2人で約二時間のツーリングへ。 もちろん街へは行かず […]
ある年齢層にとってヴィム・ベンダース監督は特別な意味を持つ存在だろう。ミニシアターがカルチャーに大きな影響力を持っていた時代、彼の撮る作品はどれも「観るべき映画」だった。『パリ、テキサス』(1985年)『ベルリン・天使の詩』(1987年)が大ヒットを記録した後、ヴェンダースの作品群――『ゴールキーパーの不安』、『都会のアリス』、『さすらい』など――が、何度もリバイバル公開された。熱狂とは言わないが、静かにヴェンダースの映画は受け入れられた。現在活躍する映画監督や映像作家たちに与えた影響は計り知れない(映画を学ぶ学生たちは狭い日本の中でロードムービーばかり撮っていたのだ)。
20世紀を代表する名作曲家、バート・バカラックが亡くなって1年が経ちました。ソフィスティケイトされた切なくも美しいメロディー、まさに“バカラック・マジック”と言うべきコード進行やリズム・チェンジを駆使した鮮やかで洒落たアレンジに、大胆かつエレガントな構成といった、軽妙洒脱で創意に富んだ彼のアート・オブ・ソングライティングは、都会的で胸に沁みる歌詞(特にハル・デイヴィッドの詞作)とのマリアージュも相まって、今なお時代をこえて世界中の人々の心をとらえていると思います。
北野武監督作品はヤクザ映画の印象が強い。『その男、凶暴につき』や『アウトレイジ』の影響だろうか。が、そのラインナップを見てみると、バイオレンス作品に挟まれながら『あの夏、いちばん静かな海。』『菊次郎の夏』『座頭市』などの多様なスタイルの作品を生み出していることがわかる。北野武監督はコメディアンであるビートたけしと共に静と動という両極を描くことのできる監督だ。多様な作品群のなかでもボクシングを題材とした『キッズ・リターン』(1996年)は異色の作品だといえる。スポーツ映画、青春劇、喜劇、悲劇、ヤクザ映画など、観る人や世代、背景によって主となるテーマの捉え方が変わるのだ。