CYCLE MUSIC⑥
佐野元春 「アンジェリーナ」

あけましておめでとうございます。2024年最初の「CYCLE MUSIC」、新しい年の幕開けに相応しい、音楽好きとしての自分の人生の原点のひとつにもなった、日本人アーティストの楽曲を紹介しましょう。1980年代の、そして僕の青春時代の幕開けを告げた曲でもある、佐野元春の「アンジェリーナ」です。

彼のデビュー・シングルとして1980年春にリリースされたこの曲は、連載開始当初から、すぐに自転車ジャケットとして思い浮かべていましたが、最高のタイミングで筆の雫とできることを嬉しく思います。学生時代には、聖地巡礼という感じで、このジャケット写真が撮られた(ファースト・アルバム『BACK TO THE STREET』も)横浜の「赤い靴」という店を訪ねたりしたのも、懐かしい思い出です。

佐野元春はポール・ウェラーらと並んで、自分がミドルティーンの頃に最も影響を受けたアーティストのひとりで、僕は毎週月曜夜に、NHK-FMで放送されていた彼がディスクジョッキーを務める番組「Sound Street」を聴くことで、様々な素晴らしい音楽と出会い、レコードに夢中になっていったのでした。高校2年生のときの文化祭のテーマソングが、彼のキャリア初期を代表する名曲「SOMEDAY」で、仲間と夜の講堂で大合唱したのも印象深く、40年の時をこえて忘れられない青春のワン・シーンです。

この「アンジェリーナ」は、佐野元春の作品でもっと好きな曲はいくつもありますが、やはりデビュー・シングルとしてはこれがベストと思わずにいられない、いま聴いても胸をつかまれ、心震わされずにはいられない会心の一曲。“Born To Run”な疾走感に、ほとばしるような言葉のセンス、歌詞とビートとメロディーが織りなすスピーディーな一体感に、若き日の僕は感電するようにしびれたのでした。余談ですが、個人的に昔から苦手な場だったカラオケにおける、バラードやテンポの遅い曲が恥ずかしくて歌えない自分には貴重なレパートリーでもあったりします。

佐野元春「アンジェリーナ」



♬CYCLE MUSIC STORAGE♬
#01 The Style Council “My Ever Changing Moods”
#02 Cordelia “Play Pretend”
#03 Corinne Bailey Rae “Put Your Records On”
#04 Georgie Fame ”Happiness”
#05 Alulu Paranhos “Bicicletinha”
#06 Motoharu Sano “Angelina”
#07 B.J. Thomas “Raindrops Keep Fallin’ On My Head”
#08 The Smiths “This Charming Man”
#09 Dominic Miller “Bicycle”
#10 NewJeans “Bubble Gum”
#11 Tank and the Bangas “Smoke.Netflix.Chill.”
#12 Kraftwerk “Tour de France”


Profile

橋本徹/Toru Hashimoto(SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『Free Soul』『Mellow Beats』『Cafe Apres-midi』『Jazz Supreme』『音楽のある風景』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは350枚を越え世界一。USENでは音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作、1990年代から日本の都市型音楽シーンに多大なる影響力を持つ。近年はメロウ・チルアウトをテーマにした『Good Mellows』シリーズが国内・海外で大好評を博している。

Art Work_spoken words project

CULTURE
CYCLE MUSIC④
Georgie Fame「Happiness」

この連載コラムが始まってから、音楽を聴くときは何となく、自転車のジャケットやMV、自転車にまつわるタイトルや歌詞を意識してしまうのですが、この曲を思いついたときは嬉しかったですね。Georgie Fameの大好きなグルーヴィー・チューン「Happiness」。この曲が収録された1971年の知る人ぞ知る名盤『Going Home』の裏ジャケットには、ボア付きのレザー・ブルゾンに身を包んで自転車に乗って走るGeorgie Fameの姿が映しだされているんですね。

#Happiness
CULTURE
CYCLE MUSIC⑪
Tank and the Bangas 「Smoke.Netflix.Chill.」

先月のこのコラムでも触れました、4/27にカフェ・アプレミディで開かれた、この連載のエディター&アートワーク制作チームとその友人たちに、デザイナー&トランスレイターも含む「Global Ride」運営スタッフまで集まってくれたDJパーティー。様々な素晴らしい音楽が流れ、本当に楽しく盛り上がったのですが、そのときに僕と担当編集者の共通の友人であり、設計事務所imaを主宰するインテリア・デザイナー小林恭がスピンしていて、「あっ、これも自転車ジャケだった!」と思いだした大好きな曲について、今月は紹介しましょう。 それはアメリカで現代最高のライヴ・バンドと絶賛され、ジャズ〜ファンク〜ヒップホップ〜ロック〜ゴスペルのグルーヴも併せもつソウルフルなサウンドで、現行ニューオーリンズ・シーンの存在感あふれる象徴のように輝くグループ、Tank and the Bangas。その中心は紅一点の女性シンガー/ポエトリー・リーダーTarriona “Tank” Ballで、彼女はMoonchild始め数多くのアーティストへの客演でも大活躍していますね。そんなTank and the Bangasが2019年にRobert Glasperらをプロデューサーに迎えリリースしたメジャー・デビュー・アルバム『Green Balloon』は、とても雰囲気のいいモノクロームの写真にグリーンのバルーンをあしらったジャケットも素敵な愛聴盤で、収録曲「Smoke.Netflix.Chill.」はとびきりのマイ・フェイヴァリット・チューンなのです。 曲名からも伝わると思いますが、歌詞も今の時代に相 […]

#Column #Music
CULTURE
CYCLE MUSIC⑦
B.J. Thomas「Raindrops Keep Fallin’ On My Head」

20世紀を代表する名作曲家、バート・バカラックが亡くなって1年が経ちました。ソフィスティケイトされた切なくも美しいメロディー、まさに“バカラック・マジック”と言うべきコード進行やリズム・チェンジを駆使した鮮やかで洒落たアレンジに、大胆かつエレガントな構成といった、軽妙洒脱で創意に富んだ彼のアート・オブ・ソングライティングは、都会的で胸に沁みる歌詞(特にハル・デイヴィッドの詞作)とのマリアージュも相まって、今なお時代をこえて世界中の人々の心をとらえていると思います。

#Column #Music