Music Cycles Around The World
① New York
3rd Bass “Brooklyn-Queens”

15回にわたって自転車と僕の好きな音楽にまつわるコラムを綴ってきました「CYCLE MUSIC」に代わる新連載第1回。これからは自転車と共に音楽で世界を走ろうというイメージで、“都市と音楽”をテーマに「Music Cycles Around The World」と題してお届けしていきます。

まずは5/4にブルックリンやクイーンズなど5つの区をすべてめぐるライド・イヴェント「Five Boro Bike Tour」が予定されているニューヨーク。タイトルずばりという感じで、3rd Bassの「Brooklyn-Queens」をご紹介しましょう。

3rd Bassは1987年にクイーンズで結成された、MC Serch/Prime Minister Pete Nice/DJ Richie Richからなる、白人黒人混成の3人組ヒップホップ・グループで、1992年に解散するまでに、2枚のフル・アルバムと思い出深い何枚かのシングルを残していて、若き日のMF DoomやNasと交流があったことでも伝説的な存在です。ヒップホップ屈指の名門レーベルDef Jamから1989年に発表されたファースト・アルバム『The Cactus Album』は、いわゆる“ミドル・スクール”の名盤と言われていて、当時“ニュー・スクール”の旗手として僕もそのフレッシュでカラフルな輝きに魅せられていたDe La Soulのファースト・アルバム『3 Feet High And Rising』のプロデューサーとして名を馳せていた、Prince Paulによる色彩豊かなサンプリング・ワークも冴えまくっています。

「Brooklyn-Queens」は翌1990年にC.J. Mackintoshによるリミックスも鮮やかな12インチ・シングルとしてもカットされ、ジャンルをこえて人気を呼んだグルーヴィーなナンバーで、The Emotionsのスウェイ・ビート・クラシック「Best Of My Love」のサンプルが生む軽快なグルーヴにより、Free Soulファンにも絶大な支持を得ているフロア映え抜群のパーティー・チューン。僕はDJでヘヴィー・プレイするのみならず、コンピレイションCD『Ultimate Free Soul 90s』に収録しましたし、Nice & Smoothの「Cake & Eat It Too」とのカップリングで、スプリット・7インチ・シングルとしてもリイシューしました。気持ちよくロードバイクで走りながら聴いても、最高にご機嫌です!

3rd Bass “Brooklyn-Queens”
https://youtu.be/5mJlcW3X4PQ?si=1ScFs8Xd-hpHvdrh

♬Music Cycles Around The World STORAGE♬
#01 3rd Bass “Brooklyn-Queens”

♬CYCLE MUSIC STORAGE♬
#01 The Style Council “My Ever Changing Moods”
#02 Cordelia “Play Pretend”
#03 Corinne Bailey Rae “Put Your Records On”
#04 Georgie Fame ”Happiness”
#05 Alulu Paranhos “Bicicletinha”
#06 Motoharu Sano “Angelina”
#07 B.J. Thomas “Raindrops Keep Fallin’ On My Head”
#08 The Smiths “This Charming Man”
#09 Dominic Miller “Bicycle”
#10 NewJeans “Bubble Gum”
#11 Tank and the Bangas “Smoke.Netflix.Chill.”
#12 Kraftwerk “Tour de France”
#13 Livingston Taylor “Don’t Let Me Lose This Dream”
#14 RM “Bicycle”
#15 Norah Jones “Christmas Calling (Jolly Jones)”


Profile

橋本徹/Toru Hashimoto(SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『Free Soul』『Mellow Beats』『Cafe Apres-midi』『Jazz Supreme』『音楽のある風景』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは350枚を越え世界一。USENでは音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作、1990年代から日本の都市型音楽シーンに多大なる影響力を持つ。近年はメロウ・チルアウトをテーマにした『Good Mellows』シリーズが国内・海外で大好評を博している。

Art Work_ユア

CULTURE
CYCLE MUSIC⑪
Tank and the Bangas 「Smoke.Netflix.Chill.」

先月のこのコラムでも触れました、4/27にカフェ・アプレミディで開かれた、この連載のエディター&アートワーク制作チームとその友人たちに、デザイナー&トランスレイターも含む「Global Ride」運営スタッフまで集まってくれたDJパーティー。様々な素晴らしい音楽が流れ、本当に楽しく盛り上がったのですが、そのときに僕と担当編集者の共通の友人であり、設計事務所imaを主宰するインテリア・デザイナー小林恭がスピンしていて、「あっ、これも自転車ジャケだった!」と思いだした大好きな曲について、今月は紹介しましょう。 それはアメリカで現代最高のライヴ・バンドと絶賛され、ジャズ〜ファンク〜ヒップホップ〜ロック〜ゴスペルのグルーヴも併せもつソウルフルなサウンドで、現行ニューオーリンズ・シーンの存在感あふれる象徴のように輝くグループ、Tank and the Bangas。その中心は紅一点の女性シンガー/ポエトリー・リーダーTarriona “Tank” Ballで、彼女はMoonchild始め数多くのアーティストへの客演でも大活躍していますね。そんなTank and the Bangasが2019年にRobert Glasperらをプロデューサーに迎えリリースしたメジャー・デビュー・アルバム『Green Balloon』は、とても雰囲気のいいモノクロームの写真にグリーンのバルーンをあしらったジャケットも素敵な愛聴盤で、収録曲「Smoke.Netflix.Chill.」はとびきりのマイ・フェイヴァリット・チューンなのです。 曲名からも伝わると思いますが、歌詞も今の時代に相 […]

#Column #Music
CULTURE
CYCLE MUSIC⑩
NewJeans
「Bubble Gum」

4/27にこの連載コラムのエディター&アートワーク制作チームとその友人たち、さらにデザイナー&トランスレイター含む「Global Ride」の運営スタッフが集まって、渋谷にある僕の店カフェ・アプレミディでDJパーティーが開かれ、大変な盛り上がりとなり、とても楽しい時間をすごしました。僕はその日、何をかけようかと楽しみに、朝からいくつものレコードを選んでいたのですが、たまたま友人のおすすめで4/27午前0時リリースだったNewJeansの新曲「Bubble Gum」のMVを観たところ、自転車に乗るシーンが出てきて、その曲の良さも相まって、一日中ときめいてしまっていたのでした。そこで今月は、K-Popをめぐる諸事情には全く疎い自分がNewJeansについて語るのは野暮かとも思いましたが、僕がそのとき彼女たちの音楽とMVから感じたことだけを著そうと思います。 ひとことで言うならば、青春のきらめきとその儚い美しさを彼女たちが自然体で謳歌していることに、胸を疼かされたということに尽きるでしょう。甘酸っぱくて、清涼感があって、瑞々しくて、春から夏へ向かうこの季節、海辺に行きたくなるような音楽。いや、ひと夏の他愛ないけどかけがえのない思い出のような音楽、と言った方がいいでしょうか。そう、自転車に乗って、あの頃のようにどこかへ出かけたくなる音楽。 とりわけ印象的だったのは、「シャボン玉ってピースフルだな」と、あらためて感じさせてくれたこと。僕は2年前の初夏、DJ仲間とアウトドア・キャンプに出かけたときに、美しい夕陽の逆光の中で女性たちがシャボン玉を吹いていた光景がフラッシュバックして、思わず写 […]

#NewJeans