CYCLE MUSIC⑤
Alulu Paranhos 「Bicicletinha」

僕が青春時代に夢中になったネオ・アコースティックと言われる音楽(1980年代のイギリスでポスト・パンク〜ニュー・ウェイヴを礎に新たに生まれた、ジャズやソウルやボサノヴァやラテンの影響を受けた繊細な感性のアコースティック・ポップス)には、自転車をモティーフにしたレコード・ジャケットが多いという印象がありますが、実は自転車にまつわる曲が多いような気がしているのがブラジル音楽。今月はそんな中から、ネオ・アコースティック好きにも薦めたいようなAlulu Paranhosの「Bicicletinha」を紹介しましょう。

今年23歳のAlulu Paranhosは、Ana Frango Elétricoらの登場以降、大きな話題を呼んでいる“リオ新世代”のブライテスト・ホープ的存在の女性シンガー・ソングライター。Caetano VelosoやCeuといったブラジル音楽の偉人たちにも賞賛され注目を集めた、2021年に発表されたファースト・ミニ・アルバム『Alulu』に収録されたこの曲は、彼女の優しい語り口に好感を抱かずにはいられない、アコースティック・フレイヴァーの名作です。「Bicicletinha」は小さな自転車という意味ですが、語尾が愛称風になっているところもブラジルらしいですね。

そして何と言っても、とびきりチャーミングな彼女が、そんな“小さな自転車ちゃん”に乗ってリオの街から郊外をめぐる、ちょっとヤンチャな姿が映しだされたMVも、とても魅力的です。Alulu Paranhosは新作EP『Compacto de Verão Deluxe』もリリースされたばかりで、その幕開きを飾る「Quando a Gente Brinca」という曲も、最高に心地よく伸びやかな気分になれる清涼感あふれるブラジリアン・ナンバーで、さっそく僕のフェイヴァリット・チューンになっていますので、彼女の名はぜひ憶えておいてください。

https://youtu.be/QA7JR6AiNMo?si=129bQWdjqCMMA9Fy



♬CYCLE MUSIC STORAGE♬
#01 The Style Council “My Ever Changing Moods”
#02 Cordelia “Play Pretend”
#03 Corinne Bailey Rae “Put Your Records On”
#04 Georgie Fame ”Happiness”
#05 Alulu Paranhos “Bicicletinha”
#06 Motoharu Sano “Angelina”
#07 B.J. Thomas “Raindrops Keep Fallin’ On My Head”
#08 The Smiths “This Charming Man”
#09 Dominic Miller “Bicycle”
#10 NewJeans “Bubble Gum”
#11 Tank and the Bangas “Smoke.Netflix.Chill.”
#12 Kraftwerk “Tour de France”


Profile

橋本徹/Toru Hashimoto(SUBURBIA)
編集者/選曲家/DJ/プロデューサー。サバービア・ファクトリー主宰。渋谷の「カフェ・アプレミディ」「アプレミディ・セレソン」店主。『Free Soul』『Mellow Beats』『Cafe Apres-midi』『Jazz Supreme』『音楽のある風景』シリーズなど、選曲を手がけたコンピCDは350枚を越え世界一。USENでは音楽放送チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」「usen for Free Soul」を監修・制作、1990年代から日本の都市型音楽シーンに多大なる影響力を持つ。近年はメロウ・チルアウトをテーマにした『Good Mellows』シリーズが国内・海外で大好評を博している。

Art Work_spoken words project

CULTURE
CYCLE MUSIC②
Cordelia 「Play Pretend」

先月から始まりましたこの連載コラム、初回は自己紹介も兼ねて、「自転車で世界はもっと楽しくなった」僕の青春の一曲、The Style Councilの「My Ever Changing Moods」について綴りましたが、第2回はこの夏デビュー曲がリリースされたばかりのブライテスト・ホープ、胸を疼かせる美しい歌声に惹かれるイギリスの若き女性シンガー・ソングライターCordeliaを紹介しましょう。

#Music
CULTURE
CYCLE MUSIC⑦
B.J. Thomas「Raindrops Keep Fallin’ On My Head」

20世紀を代表する名作曲家、バート・バカラックが亡くなって1年が経ちました。ソフィスティケイトされた切なくも美しいメロディー、まさに“バカラック・マジック”と言うべきコード進行やリズム・チェンジを駆使した鮮やかで洒落たアレンジに、大胆かつエレガントな構成といった、軽妙洒脱で創意に富んだ彼のアート・オブ・ソングライティングは、都会的で胸に沁みる歌詞(特にハル・デイヴィッドの詞作)とのマリアージュも相まって、今なお時代をこえて世界中の人々の心をとらえていると思います。

#Column #Music